『“永遠に生きる”を極めし男』は実在した!「もはや狂気」「金持ちの酔狂?」Netflix『DON’T DIE』
「人生100年時代」と言われて久しいが、少ない賃金で日々を忙しく生き延び、帰省するたびに両親の老いを実感するる私たち庶民が、それを実感することは難しい。しかし、Netflixオリジナルドキュメンタリー『DON’T DIE:“永遠に生きる”を極めし男』は、100年どころか永遠に生きることを大マジメに追求している男、ブライアン・ジョンソン(47歳)の姿を追うドキュメンタリーだ。
リアル『ベンジャミン・バトン』を目指す男
ブライアンは、映画『ベンジャミン・バトン』(2008年)でブラピが演じた主人公のような“歳を取るごとに若返る”ことを本気で目指している。Paypalに並ぶオンライン決済システムの開発で巨万の富を得た彼は、いまや年間数億円を費やして“若返り”を目指す。つらく厳しい毎日をなんとか生き抜いている私たちには完全に他人事のように見えるが、これがはちゃめちゃに面白い。
莫大な資産を費やし「自分自身を守るためのアルゴリズムを構築した」と豪語するブライアン。日々の食生活やエクササイズなど単にストイックなライフスタイルだけでは叶わない領域に踏み込み、ついに遺伝子治療にも手を出す。主治医に「最高のモルモット」と言わしめる、目指す健康体への忠誠心。ストイックな彼が「日々を健康に生きる」を極めようとして行き着いた先が、「死なないこと」だった。
メンタルヘルスの改善のために始めた健康ルーティンだったそうだが、ブライアンは毎日決まったフィジカルなルーティンをこなし、100錠以上のサプリを接種し続けることで、すでに肉体年齢は数年若返り老化速度を抑制することにも成功している。そんな彼のライフスタイルをメディアがこぞって(否定的に)取り上げたことで大バズリ(※大炎上)。
SNSでは「神になったつもりか?」「バスに轢かれて死んだらウケる」「金持ちが永遠の命を得ようとしている」といった批判が相次いだ。彼の試みをグロテスクと感じるのは理解できるが、「アンチエイジング」は大真面目な研究分野なのに個人が自分のカネで行えば批判されるというのもおかしな話ではある。
健康カルトか、非老化を目指す有意な研究か
ただし、ブライアンは実践メニューや自身に表れた変化を無料で公開しているが、あくまで個人の結果でしかなく、臨床試験体として貢献しているとは言えない。そして「ブループリント」と称したプログラムのオリジナル製品を販売していて、これが健康詐欺とバッシングされる主な要因になっている。自身のメンタルヘルスのために始めた健康ルーティンが、承認欲求モンスターによる若返りカルトビジネスになってはいないか?
一方で、患者の金をむしり取る医療~保険、製薬業界にとって、病後の処置ではなく自己免疫の向上による予防を推奨するブライアンは邪魔者でしかないだろう。かつては極度のメンタル障害に陥りながら、会社を売却し築き上げた社会的信用も信仰も捨て、“間違った生活によって心が導き出した解答”を信じない、という閃きによって自死すら回避したブライアンは、政府にすら影響力を持つToxic Billionaireよりもよっぽど崇高な思想の持ち主に見えもするだろう。
最後には息子との交流から不特定多数の他者とのつながりを求めるようになり、自らカルトネタで笑いを取ってみせるブライアン。彼のプロジェクトそのものには賛同できないとしても、彼のルーティンの中には誰でも今すぐ実践できる、老化を遅らせるであろう健康メソッドが隠されている、かもしれない。
Netflixオリジナルドキュメンタリー『DON’T DIE:“永遠に生きる”を極めし男』独占配信中