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知る人ぞ知る短命プラレール「205系量産先行車」その後の動きとは

鉄道ホビダス

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は銀メッキの205系プラレールのうち、最初期に存在した二段窓の量産先行車仕様のものをご紹介します。この量産先行車仕様は短命に終わりましたが、その後はどうなっていったのでしょうか?(編集部)

 国鉄の分割民営化を2年後に控えた1985年、この年に登場した新型車両である新幹線の100系と、通勤電車の205系。今回はこのうち205系について紹介していきます。プラレールとしては動力車の動力ユニットが更新される直前に発売された最後の世代であり、発売時の姿は後年のものとは異なっていました。

【写真】知る人ぞ知る二段窓の205系プラレール!その全貌はこちら!

▲1985年7月に発売された「EC21 通勤電車」

 205系は1985年3月25日から山手線にて営業運転が始まりました。この時に投入された4本は201系や203系の流れを汲む二段窓を装備してデビューしています。同年7月から営業が開始された量産車では一段下降窓となり、外見が少々変わりました。
 プラレールの205系は量産車と時を同じくした1985年7月に発売されましたが、モデルは先に営業を開始していた先行量産車となっています。そのため、しっかりと二段窓が再現されています。
 車体は「ニューでんしゃ」「ちかてつシルバーでんしゃ」で前例がある、ステンレス車をイメージした銀メッキです。前面の帯は前照灯を描き込んだステッカー表現ですが、側面帯は塗装とされました。
 屋根にはアンテナとベンチレーター、クーラーも表現され、側面のビードはもちろん、初期車の小さいドア窓もバランスよく、上手くデフォルメがまとまっている印象です。

▲1987年の動力更新と同時に一段下降窓の量産車仕様に更新されている

 このように国鉄の新型車両を製品化したプラレール「通勤電車」でしたが、先述したように量産車では設計が変更されています。国鉄分割民営化が行われた1987年、プラレールでは動力更新が行われ、動力車のスイッチが前面から屋根上に移動しました。
 これに伴いプラレールでも設計変更が行われましたが、他の車種は以前の姿を維持したのに対して、「通勤電車」の205系では量産車の仕様に合わせて二段窓の横サッシを撤去し、一段下降窓の形状へ変更する改修が実施されました。これにより二段窓の「通勤電車」の生産は2年間の短命に終わり、現在では旧動力時代末期の珍しい製品としてプラレールのファンに知られる存在になりました。

 1987年以降も引き続き「通勤電車」としてラインナップに乗り続けた205系ですが、特徴的な二段窓を廃止したことにより、図らずとも1960年代から徐々に採用例が増え、1980年代から90年代にかけて私鉄でも一般的になってきていた「一段下降窓・ステンレス車」という汎用性の高い車体を手に入れることになります。
 同年、一段下降窓ボディに新規設計の前面パーツを取り付けて211系とした「近郊電車(オレンジライン)」が発売され、続けて翌1988年には415系とした「近郊電車(ブルーライン)」が登場。後年、この前面の違いによって205系の系譜は「通勤電車金型」、211系の系譜は「近郊電車金型」とファンから呼び分けられるようにもなりました。

 1990年になると211系へのダブルデッカー組み込みを反映し、「オレンジライン」は新設計の中間車を組み込んだ「近郊電車ダブルデッカー」に更新されました。更に展開は続き、中間車をドア開閉仕様とした中央線201系がモデルの「ドア開閉通勤電車」にまで発展します。
 「通勤電車」の登場から5年、設計変更から3年でJRの主な通勤型・近郊型を揃えたこのボディですが、1994年に一旦「通勤電車」が絶版となります。
 そして5年後の1999年に更なる仕様変更の上で再販され、今までの山手線「ウグイス」に加え、京阪神緩行線の「スカイブルー」、初回限定生産となった中央・総武線「カナリア」、埼京線「エメラルドグリーン」が製品化されたのは過去当連載で取り上げた記事の通りです。
 「近郊電車」タイプも2000年代に入ると更に発展を遂げ、事業者限定品に採用されるようになります。京王、小田急、西武、東武、東急、都営、営団が近郊電車タイプを採用。変わったところでは京急が205系のブラックフェイスを生かし、600形を表現するために通勤電車タイプを採用しました。プラレール博限定品においても、近郊電車タイプを使って前面を取り替えた「209系通勤型電車」が、ボディを黄色成型にして中央・総武線の201系に仕立てた「ドア開閉通勤電車(カナリア)」が登場しています。
 また、天賞堂が舞浜駅前にショップを開店したことを記念し、前面の塗り分けを変更してメルヘン顔仕様にした「京葉線」を発売しています。「ウグイス」「カナリア」はスペシャルセットで再登場し、セット品の「僕の街の電車セット 東日本」では横浜線が製品化され、2007年には鉄道博物館開館に合わせて館内ショップ限定品の「205系埼京線」が登場しました。全て同時に発売されていたことはありませんが、実車同様多くのカラーが出揃っています。

 こうして設計変更の結果様々な姿になった「通勤電車」車体ですが、事業者限定品は各社独自の車体を設計するようになり金型流用が終了。実車の205系も活躍の場を狭めたことを受け、全国流通品でラインナップに乗り続けていた「ウグイス」が2007年に、「スカイブルー」が2010年に絶版となり、205系のプラレールとしては最後まで残っていた鉄道博物館の限定品が2010年代前半に、通常ラインナップの211系が2015年に絶版となったのをもって、30年間に渡る「通勤電車」金型の歴史が終わりました。

 実車においても、1996年から2005年にかけて京浜東北線・総武線・山手線から撤退したのをはじめとして、2010年代以降は続々と首都圏の路線から引退が相次ぎ、近年では八高線・相模線・日光線・宇都宮線・鶴見線を走っていた車両も引退してしまいました。譲渡車として、富士山麓鉄道とインドネシアに譲渡にされた車両はまだ現役ですが、以前のように広範囲で見られる車両ではなくなりました。
 2024年6月現在、仙石線のほか南武支線に予備編成として1本が残るほか、JR西日本の奈良線でスカイブルーの帯をまとった車両が活躍しています。実車はもちろん、プラレールにおいても一時代を築いた205系通勤電車。デビュー40周年を来年に控え、今一度改めて注目されてほしい電車の一つです。

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