3/14満月【ワームムーン】日本の一部地域では月出帯食! 見られるチャンスはたった1分間!? 超貴重な月食どこで見れるか科学博物館学芸員が詳しく解説
3月14日は満月。
アメリカ先住民の風習に由来する言葉では、3月の満月を「Worm Moon(ワームムーン)」と呼び、地面からミミズなどが顔を出すころという意味なんだそう。日本の二十四節気でいうところの「啓蟄(けいちつ)」といったところでしょうか。
2025年のワームムーンは、ハワイや南北アメリカでは皆既月食、日本では一部の地域では月出帯食を見ることができます。
・・・って、“月出帯食”ってそもそも聞いたことありますか?
どんな現象でどこで見られるのか、富山市科学博物館 天文担当学芸員に詳しい話を聞きました。
月食が起きるのは満月のころ
“月出帯食”は聞いたことがなくても、“月食”なら聞いたことがありますよね?
月食は、地球の影に入って月が欠けて見えることで、月出帯食もそのひとつです。
月食は、太陽と地球、月が一直線に並ぶとき、つまり、満月のころだけに起きるのですが……あれ、でも三日月とか半月のように、月が欠けて見えることってあんまり珍しくないですよね?
月食と三日月って、何が違うのでしょうか?
まずは、月食のお話の前に「月の満ち欠け」についておさらいしてみましょう。
どうして月は満ち欠けを繰り返すの?
月は地上から見るととっても明るいですが、自ら光っているわけではありません。
月も地球も、太陽の光を反射して輝いている天体です。
そして、月は地球の周りをぐるぐると回っています。
そのため、上の図のように、月が太陽と同じ方向にあるときは、地球から月が見えない状態、つまり「新月」となります。この新月のときを月齢0日と数え、月の満ち欠けがリセットされると考えましょう。月は地球の周りを約29.5日かけて回っているため、日が経つにつれて「新月→上弦(半月)→満月→下弦(半月)→新月」といった満ち欠けを繰り返していきます。
図を見るとわかる通り、太陽と月が180度離れたとき、つまり一直線に並んだときが満月のころです。29.5日に1度、つまり約1か月に1回の頻度で満月が見られるのはこのためです。
月食ってなに?
では、月食とはどういう状態なんでしょうか?
太陽の光は地球にも当たっていて、その光による影が太陽とは反対の方向に伸びています。この地球の影の中を月が通過することによって、月が暗くなったり、欠けたように見えたりします。これが「月食」です。
そのため、月食が起きるのは必ず地球を挟んで太陽と月が反対側にあるとき、つまり太陽と地球、月が一直線に並ぶ満月のころとなるのです。
それでは、満月のたびに月食が起こるのかというと、そうではありません。
地球の周りをまわる月の軌道は、傾いています。
ふだんの満月は地球の影の北側や南側にそれたところを通っています。そのため、月の表側全面が輝いて見え、丸い満月として見ることができます。逆に、地球の中心に近いところを通るときは影の中を通ることになり、月食が起きることになります。
2025年3月14日の月食はいつどこで見られる?
2025年の月食は、3月14日と9月8日に起きます。
日本では3月14日、「月出帯食(げつしゅつたいしょく)」が見られる地域があります。
月出帯食とは、月が欠けたまま地平線から上ってくる現象のことです。富山では残念ながら月食が終わったあとに月がのぼってくるので見ることはできません。
3月14日に日本で月出帯食が見られる地域は、一般に北海道・東北地方(一部を除く)・関東地方東部・小笠原諸島です。
東京では1分、札幌では10分のチャンス
それぞれの地方で見られる時間は異なりますが、東京の場合、月が上る“月の出”は14日の17時47.7分。月食が終わるのは、17時48.2分。つまり、17時47分過ぎから48分過ぎまでの1分弱だけ、月出帯食が見られることになります。
一方、北海道の札幌では“月の出”が17時39.0分で、食の終わりは変わらず17時48.2分。10分近くも見るチャンスがあります。
9月8日は皆既月食を長い時間楽しめる!
半年後の9月8日は、日本各地で皆既月食が見られそうです。
富山の場合、8日の午前1時26.8分に食が始まり(月が地球の影に完全に入り込む)、食の終わり(月が地球の影から抜け出すとき)が8日午前4時56.9分。
真夜中ではありますが、3時間以上にわたって、皆既月食を楽しめます。
皆既食中の月が「赤銅(しゃくどう)色」に見えるのはどうして?
皆既月食を見たことがある人なら、「月がまったく見えなくなるわけじゃなく、赤黒く見えるんだ」と思った人も多いのでは?
これは、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理由です。
地球の周りには大気(空気の層)がありますが、これが大きなレンズのような役目を果たしています。
虹が七色に見えるように、太陽の光にはいろいろな色の光が混ざっています。この光が大気の中を通過する際、波長(電磁波の波の長さ)の長い赤い光は散乱されにくく、大気を通過することができます。このかすかな赤い光が宇宙空間まで残って皆既食中の月面を照らし、月が赤黒くより遠くまで見えるのです。
ただし、地球の大気中のチリが少ないときには、大気を通り抜けられる光の量が多くなるため、オレンジ色のような明るい色の月が見られます。
一方、大気中にチリが多いと、大気を通り抜けられる光の量が少なくなるため、影は暗くなり、灰色に見えたり、あるいは本当に真っ暗で月が見えなくなったりするそうです。
3月の満月“ワームムーン”とは?
古くから月は、満ち欠けに応じて世界中でさまざまな呼ばれ方をしていました。
日本では…
たとえば、陰暦15日の月を「十五夜」と呼ぶのもそのひとつ。
陰暦16日の月は「十六夜」と書き、「いざよい」と読みます。「いざよう」はためらう・躊躇するの意で、十五夜よりも少し遅い時間に、ためらいがちに出てくる月という意から名づけらました。
十七夜は、月の出を待ちわびて、月を立って待っていたことから「立待月(たちまちづき)」と言います。日本人が月の出を待ちわびている様子や感性がうかがえますね。
アメリカの農事暦による月の名称
最近は“ストロベリームーン”や“ハーベストムーン”などという呼び名を耳にしますが、これは、アメリカ先住民が満月に名前をつけて季節を捉えていたことにちなんでいます。
3月は「Worm Moon(ワームムーン)」で、土からミミズなどが顔を出すころという意味。
3月14日の満月”ワームムーン”。気温が高くなれば、霧や靄(もや)などで霞む”朧月夜”になるかもしれません。月を愛でて、もうそこまで来ている春の訪れを楽しみたいものです。
(Farmer's Almanac )
1月/Wolf Moon/オオカミが空腹で遠吠えをする頃
2月/Snow MoonWorm Moon/雪で狩猟が困難になる頃
3月/Worm Moon/土からミミズなどが顔を出す頃
4月/Pink Moon/フロックス(Phlox)というピンクの花が咲く頃
5月/Flower Moon/花が咲く頃
6月/Strawberry Moon/イチゴが熟す頃
7月/Buck Moon/雄鹿の新しい枝角が出てくる頃
8月/Sturgeon Moon/チョウザメが成熟し、漁を始める頃
9月/Corn Moon/とうもろこしを収穫する頃
10月/Harvest Moon/収穫時期
11月/Beaver Moon/毛皮にするビーバーを捕獲するための罠を仕掛ける頃
12月/Cold Moon/冬の寒さが強まり、夜が長くなる
【富山市科学博物館】
住所 富山県富山市西中野町1丁目8-31
営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)