恐ろしい「クリスマス猫」の伝説が、まじめに働き、助けあう社会を築いた アイスランド
巨大な猫が、服を買えない人々を食べる!
「ユールキャット」イメージ
アイスランドで有名な「クリスマス猫」をご存じですか?別名「ユールキャット(Yule Cat/「Yule」は「クリスマスシーズン」を指す言葉)」ともいい、国民のだれもがその存在を知っていて、毎年クリスマスの時期になると人々の話題にのぼります。
詩人兼作家で、元政治家のJóhannes úr Kötlumが1932年に出版した本に「クリスマス猫」と題する詩が掲載されていて、これがユールキャットが印刷物に登場した最初だといわれています。しかし、それよりはるか以前から、ユールキャットは人々の間で語り継がれてきました。
伝説では、街をうろつく巨大なユールキャットが「クリスマスに新しくてきちんとした服を着ていない人々」を食べてしまうといいます。裕福ならば問題ありませんが、貧しくて服が買えない人にとっては大変な恐怖です。
このため、お金をかせいで猫に食べられないよう、人々は一生懸命に働き、助け合いました。そうした家庭の子どもたちも、大人が仕事に集中できるようにお行儀よくふるまったのです。
さもないと、親だけでなく子どもや友人、隣人などを含めてみんな巨大猫に食べられてしまうからです。
温かい地域社会づくりに貢献
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ユールキャットの存在が、人々に勤勉に働くよう動機づけてくれたのは間違いありません。そして貧しい家庭は周囲の人々から援助を受けられるようになり、温かい地域社会づくりにも貢献したのです。
同時にこの猫の存在は、人々の健康を守ることにもなりました。冬のアイスランドは気温がマイナス10度まで下がることもあります。巨大猫に襲われなくても、凍えるような寒さで命が危険にさらされるのです。だからクリスマス猫は「暖かく着込むように」と警告を発しているとも考えられます。
洞窟に住む飼い主と息子たちの伝説も
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13世紀以来、クリスマス猫に関する伝説は時代によって少しずつ変化してきました。
現在知られているものでは、残酷で恐ろしい巨人「グリーラ」とその夫で怠け者の「レッパルージ」が、ユールキャットの飼い主です。夫婦の間には「ユールラッズ」とよばれる13人の息子たちもいて、全員が洞窟で暮らしています。
グリーラは、いたずらな人間の子どもたちを食べてしまうことで有名です。しかし13人のユールラッズは、クリスマス前の13日間に、行儀のよかった子供たちにキャンディと贈りものを配ってくれるといわれています。まるでサンタクロースのようですね。
確実に言えるのは、長い歴史を通じてアイスランドの人々がまじめに働き助けあうことで、巨大猫に飲み込まれるのを防いできたということでしょう。
毎年クリスマスになると国民はユールキャットを思い出し、温かい地域社会の存在をあらためて感謝するそうです。
出典:
・A festive feline: Iceland's terrifying Christmas Yule Cat
・The Christmas Cat