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「ジブリパークとジブリ展」最速レポート、天王洲・寺田倉庫で開催で9月23日まで開催

タイムアウト東京

「ジブリパークとジブリ展」最速レポート、天王洲・寺田倉庫で開催で9月23日まで開催

2024年6月28日(金)から9月23日(月・祝)まで、天王洲「寺田倉庫B&C HALL/E HALL」で「ジブリパークとジブリ展」が開催。愛知県に位置するスタジオジブリの世界観を表現した公園施設「ジブリパーク」の現場制作を指揮した映画監督、宮崎吾朗のこれまでの仕事と作品を振り返るとともに、同ヴェニューがどのように生み出されたか、その舞台裏を貴重な制作資料や試作品なども併せて紹介する展覧会だ。

Photo: Kisa Toyoshima名作のポスターが一堂に会する(Ⓒ Studio Ghibli)

エントランスでは、ジブリの名作のポスターが集結。キャッチコピーとともに切り取られたワンシーンは、いつまでも色あせない魅力がある。ポスターの下には原画もあり、入ったばかりにもかかわらず足を止めてじっくりと眺めてしまった。

宮崎駿のイメージを具現化した「三鷹の森ジブリ美術館」

Photo: Kisa Toyoshima「ネコバス」と「トトロ」(Ⓒ Studio Ghibli)

展示は、第1章「はじまりは三鷹の森ジブリ美術館」からスタート。まず目を引くのは、「ネコバス」と「トトロ」だ。ネコバスの中は入ることができ、腰をかけると映画『となりのトトロ』の作中で、サツキとメイの姉妹が見ていたであろう風景を鑑賞できるというしゃれた仕掛けが用意されていた。

Photo: Kisa Toyoshima「ネコバス」の内部(Ⓒ Studio Ghibli)

宮崎駿は映画を作る際に、こんな映画を作りたいという思いを込めて、何枚もの「イメージボード」と呼ばれる絵を描く。美術館の構想も同じく絵に描き上げていて、巨匠の頭の中で次々に沸いたであろうイメージを本展では見ることができる。

Photo: Kisa Toyoshima宮崎駿による「イメージボード」(Ⓒ Studio Ghibli Ⓒ Museo d'Arte Ghibli)
Photo: Kisa Toyoshima宮崎吾朗のメモ(Ⓒ Studio Ghibli Ⓒ Museo d'Arte Ghibli)

宮崎駿のイメージを具現化するために、宮崎吾朗が試行錯誤したであろう様子は、展示されているメモからうかがえる。「サービス業である。だからこそ誠実でなければならない」「基本理念 誰のために なんのために」といった走り書きからは、クリエーティブな空想の絵を現実に落とし込む際の、生々しいまでの苦労や悩みが伝わってきた。

宮崎吾朗のアニメーション映画監督としての歩み

次のフロアは、第2章「アニメーションの世界をつくる」。過去に建設コンサルタントとして公園緑地などの計画に携わっていた宮崎吾朗は、ジブリ美術館の初代館長を約4年間務めた後に、アニメーション映画監督としての道を歩み始めた。

その初監督作品『ゲド戦記』から、アニメーター・近藤勝也とのコンビネーションが生まれた第2作『コクリコ坂から』、そしてスタジオジブリ初のフル3DCGアニメーション『アーヤと魔女』のベースとなったイメージボードやデザイン画、背景美術などを展示している。

Photo: Kisa Toyoshima企画展示「アーヤと魔女展」への階段(Ⓒ Studio Ghibli)
Photo: Kisa Toyoshima企画展示「アーヤと魔女展」(Ⓒ Studio Ghibli)

『アーヤと魔女』の公開を記念して、「三鷹の森ジブリ美術館」で2021年6月から2022年5月まで開催されていた企画展示「アーヤと魔女展」が本企画に再登場。階段を上った先のスペースなのだが、その階段から世界観に没入できるよう作り込まれていた。

展示の企画監修は宮崎吾朗。2Dセルアニメーションと3DCGアニメーション両方の監督を務めた本人だからこそ分かる、それぞれの制作工程の違いなどを知ることができる内容になっている。

Photo: Kisa Toyoshima制作スペース(Ⓒ Studio Ghibli)

制作スペースも再現されており、デスクの上には缶入りのカレーとカップラーメンが置いてあった。制作の合間に手軽な食事をとっているのだろうか。

このフロアを鑑賞すると、普段観ているアニメーションがいかにさまざまな工程を経て、光の加減や小道具など細部まで作り込み、いろいろな苦労を重ねたクリエーターの結晶であるかが伝わってくる。ものづくりの神髄に触れた気がした。

新たな挑戦の始まり、「サツキとメイの家」建築プロジェクト

Photo: Kisa Toyoshima「サツキとメイの家」の模型(Ⓒ Studio Ghibli)

次の展示は、第3章「アニメーションの世界を本物に」。三鷹の森ジブリ美術館の次の挑戦は、2005年に開催された愛知万博のパビリオンとして映画『となりのトトロ』に登場するサツキとメイの家を建築するプロジェクトだった。

Photo: Kisa Toyoshima「サツキとメイの家」の模型(Ⓒ Studio Ghibli)

サツキとメイの家は、宮崎駿が幼年期を過ごした家がモチーフの一つになっている。映画には家の全てが登場するわけではなく、実際に建設する際は描かれていない部分まで考える必要がある。画面に映らない場所を含めて、その時代の家がどのような素材や建築方法を使って建てられたのか調査と検証を重ねて、優秀な大工や職人とともに「本当に住める家」を作り上げたのだ。

Photo: Kisa Toyoshima実際に使用されていた初代パーゴラ(Ⓒ Studio Ghibli)

サツキとメイの家は、2022年11月からはジブリパークの施設の一つとして引き続き展示されている。映画の中で一家は古家に引っ越してきたという設定のため、経年劣化で削れてグラグラしているパーゴラの柱なども忠実に再現されており、本当に使われていた初代のパーゴラが本展では展示されている。宮崎駿の絵コンテをもとに美術監督の男鹿和雄が書いた家の見取り図や、サツキとメイの家の模型も見逃せない。

全5エリアで構成される「ジブリパーク」ができるまで

Photo: Kisa Toyoshima20分の1スケールの「ハウルの城」の模型(Ⓒ Studio Ghibli)

最後は、第4章「ジブリパークのつくりかた」。ジブリパークは「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「もののけの里」、そして2024年3月にオープンした「魔女の谷」の全5エリアで構成されており、その制作過程と裏側を知ることができる。

Photo: Kisa Toyoshima「乙事主」の模型(Ⓒ Studio Ghibli)
Photo: Kisa Toyoshima「ハウルの城」の煙突の原寸大サンプル(Ⓒ Studio Ghibli)
Photo: Kisa Toyoshima『ハウルの動く城』に登場するバスタブ(Ⓒ Studio Ghibli)

どのエリアもアニメーションの世界に浸ることができるのだが、「もののけの里」にある『もののけ姫』のキャラクターである「乙事主(おっことぬし)」の滑り台ができる過程を図面と20分の1スケールの模型で解説した展示や、「魔女の里」における『ハウルの動く城』のハウルの城の煙突の原寸大サンプル、作中でも印象的な浴室は一見の価値がある。すでにジブリパークを訪れた人もそうでない人も、本展示を鑑賞して、その細部にまでこだわった背景を知れば、きっと足を運びたくなるはずだ。

「メリーゴーランド」の展示は東京会場で初登場

Photo: Kisa Toyoshima「カオナシ」と記念撮影ができる(Ⓒ Studio Ghibli)
Photo: Kisa Toyoshima仕事に没頭する「湯婆婆」(Ⓒ Studio Ghibli)

ジブリの大倉庫で開催されている企画展示「ジブリのなりきり名場面展」では、『千と千尋の神隠し』のキャラクター「カオナシ」とともに電車に乗る名シーンが再現されており、主人公・千尋の気分が味わえるだろう。仕事に没頭する『湯婆婆』も見ることができ、机に乗った契約書など、細部まで見どころが多い。

Photo: Kisa Toyoshima「ヤックル」と「山犬」(Ⓒ Studio Ghibli)

また、魔女の谷の「メリーゴーランド」に関する展示は、東京会場で初登場。『もののけ姫』に登場する、主人公のアシタカの相棒「ヤックル」と「山犬」に乗って記念撮影できる。

Photo: Kisa Toyoshimaオリジナルショッパー(Ⓒ Studio Ghibli)
Photo: Kisa Toyoshima過去作のパンフレット(Ⓒ Studio Ghibli)

物販では、東京会場限定のピンバッジや同展限定のオフィシャルグッズ、過去作のポスターやパンフレットなどがラインアップ。ついつい買い込んでしまいそうなアイテムが揃っている。

Photo: Kisa ToyoshimaⒸ Studio Ghibli

本展示の開催は9時30分〜20時(最終入場19時)で、チケットは1900円(以下全て税込み)、中・高校生1600円、小学生1200円、未就学児は無料。特典付きチケットが2900円、中・高校生2600円、小学生2200円で、日時指定の予約制となっているため注意してほしい。

Photo: Kisa ToyoshimaⒸ Studio Ghibli

同展を通じて、スタジオジブリのコンテンツを作り上げるクリエーターたちの、作品や世界観を作り込むために注ぎ込んだ情熱と努力、そして圧巻の情報量に圧倒されてほしい。ものづくりに対してのひたむきさに誰もが胸を打たれるはずだ。チケットを早めに確保して、天王洲に足を運ぼう。

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