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有楽町高架下のレトロなもつ焼き店『居酒屋 登運とん』の串焼き&もつ煮でゆるりと一杯

さんたつ

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有楽町の高架下にあるトンネル内で1953年から営業している、もつ焼き店『居酒屋 登運とん(とんとん)』。各種串焼きは、その日に提供する分を毎朝仕込んでおり、炭火で丁寧に焼き上げる。味噌ベースの味付けがたまらない牛もつ煮込みも、お酒が進む看板メニューだ。仕事終わりの一杯には、酎ハイの元祖と呼ばれるホイスサワーを。

登運とん(とんとん)

ガード下にある、外国人観光客にも大ウケのもつ焼き店

JR有楽町駅から新橋駅まで続く赤レンガ造りの高架橋は、明治43年(1910)に開業して以来、いまなお現役。その高架下には、昔懐かしい空気が漂う飲み屋街がある。いまも昔も、そこは有楽町周辺に勤める人々にとっての憩いの場だ。

有楽町の高架沿いを新橋駅方面へ進み、日比谷側から銀座側へとつながる高架下のトンネルに入る。頭上を通過する電車のリズミカルな走行音が鳴り響く、昼間でもほの暗い空間。そこに1953年の創業当時からこの場所で営業している、もつ焼き店『居酒屋 登運とん』はある。

大衆酒場を象徴する赤提灯が目印。営業中は、歩道に面した焼き台から串焼きの香りが漂ってくる。

今回お話を伺ったのは、店長を任されている岩本有司さん。15歳のときから居酒屋で働き始め、自身のお店を経営していた経験もある、この道一筋のベテランだ。この店の店長となった当時は、コロナ禍の影響がまだまだ残っていた頃。それでも「心さえつかんでおけば、お客さんは来てくれますから」と、苦境を乗り越えてきた。

強面ながら心やさしい、店長の岩本有司さん。お祭りを愛し、ねじり鉢巻きがよく似合うアツい男だ。

コロナ禍以前のお客さんは、近隣に勤めるビジネスパーソンが多かったという。ところが近年は、若い女性や海外からの観光客が急増している。それは昭和の面影が残るノスタルジックな雰囲気ゆえだろうか。

ガード下のトンネル内にあるため、壁と天井がアーチ状になっている。この構造は、創業当時から変わらない。

「とくに外国の方は喜びますよ。店の外からも中からも、写真を撮って帰る人がいっぱいいますね」と岩本さん。たしかに、店内のレトロなポスターといい、屋根裏部屋のように傾斜した天井といい、なかなか他にはない空間だ。

お酒をおかわりしたくなる、串焼きと牛もつ煮を堪能

『居酒屋 登運とん』に来たからには、もつ焼きをはじめとした串焼きと、もつ煮込みは外せない。ということで、串焼きはカシラ(ハラミ)、豚バラ串、名物つくねの3つ。さらに牛もつ煮込みを注文した。さっそく焼き台の真横で、串焼きの調理を見せてもらう。

鮮度抜群の各種串焼き。左から豚バラ串350円、つくね190円、カシラ190円(串焼きの注文は、各種2本~)。

「生の状態から焼くので、しばらく時間かかりますよ」と岩本さん。聞けば、仕込みは朝の7時半から、その日に提供する分を串打ちしているそう。

「焼きすぎると硬くなっちゃうから、火を通しすぎないギリギリの加減で焼きます。うちでは備長炭を使っているので、遠赤外線の効果で中がふっくら柔らかくなるんですよ」

遠赤外線が多く出る備長炭を使い、約10分かけて絶妙な火加減で焼き上げていく。

串焼きの味付けは、塩とタレから選べるため、今回のカシラは塩、つくねはタレでいただくことに。豚バラ串には塩コショウを振り、仕上げに特製のニンニク味噌を塗れば出来上がり。

つくねをはじめとした焼き物のタレは、創業当初からずっと注ぎ足している秘伝のもの。

串焼きが焼き上がったら実食へ。カシラは本来こめかみの部分だが、登運とんでは横隔膜(ハラミ)を使用しており、弾力のある食感が特徴。歯応えのよさを楽しんでいるうちに肉の旨味がどんどん出てくる、お酒にぴったりの一品だ。

カシラ(ハラミ)の塩。おつまみに適した程よい歯応えがあり、かむほどに旨味が感じられる。

続いて、豚バラ串をひと口ほおばる。とろけるような口当たりの脂身は、旨味たっぷり。そこにニンニク味噌のコクのある甘さが加わって、濃厚かつ奥深い、パンチの効いた味わいが生み出される。

豚バラ串は、甘みとコクのあるニンニク味噌で味付け。ほんのり香るコショウもいいアクセント。

鶏串焼きを代表するメニュー・名物つくねも、豚串に勝るとも劣らない存在感あり。表面の焦げ目はカリッと仕上がっている一方、中はふんわり柔らかい食感。醬油が豊かに香るタレからは、品のある甘みや、まろやかな塩味が感じられる。これが長年の注ぎ足しによる円熟味なのかもしれない。

鶏串焼きの1つ、名物つくねは、タレがおすすめ。ジューシーな鶏肉と醤油ベースのタレがマッチする。

そして忘れてはならないのが、牛もつ煮込みだ。同店独自の配合による味噌ベースの味付けは、五臓六腑に染み渡るかのような滋味深さ。ゆえに汁まで飲み干したくなる。ところで、関東のもつといえば豚のイメージがあるけれど、なぜあえて牛なのか。

「以前は豚だったみたいなんですけど、ぼくの2代前の店長が牛に変えたみたいで」と岩本さんは言う。「もつ焼き屋なのにあえて牛もつを使用して、『登運とん』ならではの色を作ったんでしょう。今では看板商品になっていますよ」。

味噌ベースの奥深い風味にハマる、牛もつ煮込み630円。プリッとした牛もつの食感も魅力的だ。

ドリンクの紹介が最後になってしまったが、岩本さんにイチオシを伺ったところ、ホイスサワーが挙がった。ホイスとは、昭和30年代に流行したという焼酎の割りもののことで、焼酎をホイスと炭酸で割ったのが、このホイスサワー。そんな知る人ぞ知る「幻のドリンク」で乾杯するのも一興だ。

酎ハイの元祖とも言われるホイスサワー500円。ホッピーとハイボールを掛け合わせたような、クセのない味わい。

戦後のお酒の味を追体験できるホイスサワーは、昭和レトロな同店にうってつけ。串焼きや牛もつ煮込みとともに杯を傾ければ、すぐにおかわりがほしくなる。

一期一会の交流が生まれる場所

取材は平日のお昼からだったにもかかわらず、気が付けば客席が徐々に埋まり始めていた。男性の1人客から若い女性の2人組、家族連れの訪日旅行者まで、客層は幅広い。あらためて『居酒屋 登運とん』とはどんなお店なのか、岩本さんに聞いてみた。

各種串焼きと牛もつ煮込みは、ビールや酎ハイはもちろん、ホイスサワーとも相性抜群。

「古き良き昭和の名残を残しつつ、元気で楽しい店づくりをしていきたいな、と思っています。それこそコスパだ、何だ、って言われる時代だけど、あえてそうじゃない、っていう。いまだにウチは現金払いのみですし。まあ、そこはそろそろ変えてもいいんですけどね(笑)」

たまたま居合わせたお客さん同士で会話が始まり、酒をたしなむひとときを共有する。そんなコミュニケーションが生まれることも多々あるそうだ。岩本さんは「そういう店の雰囲気を大事にしていきたい」と締め括った。

電車の走行音が心地よく時を刻む、活気に満ちた店内(写真提供=居酒屋 登運とん)。

そして取材後、ホイスサワーを飲みながらもつ煮込みをつついていたら、隣のテーブルから声をかけられた。30分ほど前から1人で飲んでいた男性客だ。物腰が柔らかく、にこやかな方で、1泊2日のサウナ旅行中だという。筆者が取材で来たことを伝えると「記事がアップされたら必ず読む」と言ってくれた。こういう酒場の出会いって、やっぱりいいものだなあ。

登運とん(とんとん)
住所:東京都千代田区有楽町2-1-10/営業時間:13:30~22:15頃LO(土は12:00~22:00頃LO、日・祝は12:00~21:00頃LO)/定休日:無/アクセス:地下鉄日比谷駅から徒歩2分、地下鉄銀座駅から徒歩2分、JR・地下鉄有楽町駅から徒歩4分

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=上原純

アート・サプライ
編集プロダクション
1971年創業の編プロ。「旅&食&散策」ジャンルに強く、情報誌では子供向けから鉄道やドライブでの大人旅まで。さらにグルメ系ではラーメンや唐揚げ専門情報誌をはじめ、日本全国うまいもの紹介なども手掛けている。

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