「東京コミコン」杉山すぴ豊Pに聞く運営のウラ事情 ─ 「マッツさんのイベントで当日券の売上変わる」「SNSで頂くご意見は見ています」
日本最大のポップカルチャーの祭典である「東京コミックコンベンション」(以下「東京コミコン」)は、2024年開催で早8回目となる(大阪コミコンと通算すると10回目)。来場者数は増加を続け、2023年開催は3日間合計で85,682人以上が訪れた。
2024年東京開催からは、アメコミ系ライターとしてステージMCを務めていた杉山すぴ豊氏がプロデューサーとして新たに参画。これまで通り豊富な知識と軽妙なトークでセレブとのステージイベントを盛り上げるほか、東京コミコンの企画立案も担当することとなる。
2015年のキックオフ記者会見の頃から毎年欠かさず取材を重ねたTHE RIVERでは、プロデューサーに就任した杉山氏に取材を行い、東京コミコンの気になるポイントをズバリ聞いた。見どころやセレブたちの裏側、運営の裏事情など、ここだけの話が存分に語られている。
「東京コミコン2024」杉山すぴ豊氏 インタビュー
──すぴさんはこれまでも、東京コミコンでセレブが登壇するステージでMCをされていましたね。
はい。これまではステージのいち演者として関わらせていただいていましたが、それが縁となって、今年(2024)から運営に本格的に入るようになりました。
東京コミコンのステージイベントは当初、どのセレブが登壇するのか事前に分からなかったんです。サイン会や撮影会の合間を縫って、空いているセレブが空いている時間に来るというオペレーションでした。つまり、ハリー・ポッターかスター・ウォーズかマーベルか、誰が登場するのか分からなかったので、映画全般のことがわかるMCが求められ、僕がステージの補佐として立つようになったというのが発端です。
現在では、ステージイベントのスケジュールを組んでいます。それは、ステージを目当てに来られるお客さまが増えてきたから。特にマッツ・ミケルセンさんなんて、彼のステージがいつになるのかで当日券の売り上げが変わります。
──確かに、マッツ・ミケルセンへの熱狂は凄まじいものがありますね。やはりマッツは大きな存在ですか?
僕の意見ですが、マッツさんはリピーターさん、ヘビーユーザーさんが多いですね。セレブの中には、「一生に一度でいいから会いたい」という方もいます。でもマッツさんの場合、「年に一回会う!」と決めてらっしゃる方がいる。
撮影会チケットの買われ方も、セレブによって傾向が異なります。例えば、5人分の撮影券をそれぞれ1枚ずつ買う方もいれば、1人のセレブに対して5枚購入し、5回撮影に行く人もいる。マッツさんの場合は後者が多いです。リピーターさんがとても多いですね。
特に海外ドラマの俳優さんには、リピーターさんが多いのだと思います。イアン・サマーホルダーさん(ドラマ「ヴァンパイア・ダイアリーズ」主演俳優で「東京コミコン2019」に登場)もそうでした。イアンさんのファンは、一人で何回も行くんです。
──海外ドラマの俳優にはエンゲージメントが高いというのは、なぜだと思いますか?
今は配信ドラマもありますが、ドラマの俳優って、毎週決まった時間に家のリビングに必ず現れるから、生活の一部になってくる。だから、映画よりもエンゲージメントが深いのかもしれません。これはノーマン・リーダスさんも仰っていたことです。ちなみにノーマンさんといえば「ウォーキング・デッド」ですが、映画『処刑人』ファンもたくさんいらっしゃいますね。
──マッツ・ミケルセンはドラマ「ハンニバル」だけでなく、映画でも活躍しているのがすごいですね。マーベルにもスター・ウォーズにも、ハリー・ポッター魔法ワールドにも出ている。
まだ出ていないのは『ワイルド・スピード』と『ジュラシック・パーク』くらいかなって、ご本人も言っていました。でもマッツさんのファンは、特に「ハンニバル」が多い。今回ヒュー・ダンシーと来られるので、マッツ界隈は大変なことになりますね。
そして今年は、ベネディクト・カンバーバッチさんも昨年に引き続き来られます。ジェイソン・モモアさんもそうですけど、日本のコミコンにまた来たいと言ってくださるセレブがすごく多いんです。それは日本のファンの熱量によるものも大きいですが、運営側でもホスピタリティに最大限、力を注いでいるということもあります。
──セレブの皆さんは、日本のコミコンのどのようなところを気に入っているのですか?
まず、何よりも日本のファンです。失礼な方がいない。写真撮影の時も礼儀正しい。それから、コスプレのクオリティの高さも驚かれることが多いです。「大阪コミコン2024」で「ロキ」シルヴィ役のソフィア・ディ・マルティーノさんが来られた時に、シルヴィのコスプレをするファンが多かったのですが、ソフィアさんはすごく驚いて喜んでいました。
セレブのホスピタリティの部分では、控室でお寿司を振る舞ったり(笑)、万全の体制を心がけています。はるばる日本までお越しいただいているのですから、おもてなしには最大限気を配っています。例えば、ジェイソン・モモアさんがラーメン好きだと聞きつければ、いろいろな名店からラーメンを取り寄せたり。実は、裏でそういったおもてなしをしています。
──誰を招致するか、来日セレブはどうやって選んでいるのですか?
まずは、日本で人気があるか。THE RIVERさんのような媒体でも人気があるかどうかを見ています。やはり、マーベル、スター・ウォーズ、DC、ハリー・ポッターといったフランチャイズに出ている方は自然と候補になりやすいです。
面白いことに、『スター・ウォーズ』関係のセレブはお客さんの中で男性比率が上がるし、『ハリー・ポッター』だと女性比率が上がるという傾向があります。フランチャイズによって様々な客層があります。
中でも、どの世代に対しても圧倒的な人気があるのが、クリストファー・ロイドさんをはじめとする『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のみなさんですね。
あと、これは私見ですが、たとえばアル・パチーノさんは、アル・パチーノという役者としての人気がある。でも、さんが来る時は「ロキが来る!」というような感覚がありますよね。いわゆるジャンル映画に出ている大スターは、コミコンとの相性がいいのだと思います。
それから、コミコンのようなイベントに来てくれそうかどうか。俳優さんによっては、こういうイベントに出ない方もいらっしゃいます。海外のコミコンで実績がある人は、条件さえ合えば来てくれるはずだと、アプローチをかけます。
そもそも「東京コミコン」を12月に開催している一番の理由は、ハリウッドで撮影が少ないからです。クリスマスが近いから。ハリウッドのセレブたちは、サンクスギビングデーを家族で過ごし、クリスマスまで休暇にされる方が多い。だからコミコン参加の交渉が行いやすいタイミングなんです。
でも、同時期にブラジルコミコンもあるんですね。新情報をブラジルコミコンで出すのか、東京コミコンで出すのかどうか、そういうせめぎ合いもあります。今の所、ブラジルコミコンは東京コミコンのライバルと言えるかもしれないですね(笑)。
──新情報で言うと、東京コミコン内で新作の情報解禁がもっと出来るようになればと願っています。今後、初解禁ステージを増やす考えは?
あります。例えばサンディエゴ・コミコンでは、情報解禁を伴うパネルイベントはクローズドな空間でやるんです。東京コミコンはオープンな会場ですからね。今後は、少なくともステージエリアを外部から見えないようにして、初情報解禁イベントができないか、そういったことを検討しています。
──いつも来日セレブが豪華で驚かされますが、女性セレブの数ももっと増やして欲しいです。
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──いつも来日セレブが豪華で驚かされますが、女性セレブの数ももっと増やして欲しいです。
そちらも考えています。コミコン自体には女性ファンが多い。男女ともに人気のある女優さんだといいなと思うんです。たとえば、マーベルならエリザベス・オルセンさんのように。
──女性セレブについて、アプローチはしているのですか?
しています。今後も積極的に行っていきたいです。
──コミコンがきっかけで興味や関心が広がることもありますから、どのセレブを招致するかはとても重要ですね。
こんな話があるんです。ハリウッド映画に関心が薄く、ハリウッド俳優もほとんど知らないという女性が、お姉さんの付き合いで東京コミコンに来られた。その時、たまたま一緒に見たステージイベントで、とんでもなくカッコいい方を初めて見て、即ファンになってしまったそうです。それは誰かというと、ジュード・ロウさん。
©THE RIVER
僕は、俳優のカッコ良さや綺麗さがきっかけで映画が好きになるというのもアリだと思います。コミコンがそういう出会いの場になれば嬉しい。例えば、若い方は『ロボコップ』を知らないことも多いと思いますが、ピーター・ウェラーさんが来日したステージのおかげで、『ロボコップ』や『バカルー・バンザイの8次元ギャラクシー』を初めて観たという方もいましたから。そういう広がりを起こすのが、コミコンの一つの醍醐味だと思います。映画会社からも、コミコンの場で何かできませんかという問い合わせが増えましたね。
──東京コミコンや大阪コミコンは、ポップカルチャーにとっての大きなコミュニティとして必要不可欠だと思います。洋画ファン、海ドラファンがこれだけの規模で集まれる機会というのは、今、日本にはコミコンしかない。SNSを見ていても、コミコンを通じて仲間たちと会うことを楽しみにしている方が本当にたくさんいます。別に友達じゃなくても、あの場所に行けば、自分と同じコンテンツを愛する人たちが大勢集まっている。自分はここにいていいんだということがわかるんです。ポップカルチャーの喜びを年に一度再確認できる貴重な場所。だからコミコンは発展しなければならないんです。
その通りですね。そのことに気付かされたのが、2020年開催でした。コロナ禍でリアル開催ができなくなり、オンラインでやりましたが、やはりリアルで会えないというのは、コミコンとしての楽しさが失われてしまう。「会える」というのは、セレブと会えるというだけじゃない。おっしゃる通り、仲間たちと会えるか会えないか、というのは大きいんです。そういう場を提供できるというのは、すごく大切なことだと思います。
それから、コミコンをこうしていきたいというビジョンもあるんですが、コミコンはプラットフォームであると考えています。「コミコンはこうあるべき」みたいな個性を出さない方がいいのかな、と。
我々のコンテンツがアメコミ関係だけになることもなければ、ハリウッドものだけになることもありません。日本のものも当然あって良い。もっと広くても良いんです。たとえば、昔はJAXAさん(宇宙航空研究開発機構)に出展いただくこともありました。SF映画や宇宙ものが好きな人は宇宙も好きなはず、といった繋がりです。
それから、声優さんのステージも人気です。声優さんは日本のIPであるアニメもやっているし、海外ドラマもやっている。声優さんというのは、実は日本と海外のIPをつなぐ架け橋のような存在でもある。コミコンにとって声優さんはとても大事です。
──ステージの裏で、セレブたちはどのように過ごしているのですか?
ステージ裏はすごく活気がありますよ。そのセレブの日本語吹替声優さんがバックステージに来られて、本人と対面を果たすということも時々あります。セレブの方も「君が僕か!」と喜ばれますね。和気藹々としています。
コスプレステージの時は、セレブがステージに向けて待機するコスプレイヤーさんたちを裏で見ていて、その完成度や愛の深さに大感激しています。コスプレファンの写真を撮るセレブもいますね。
──ステージ裏で、セレブ同士が仲良くなることは?
あります。よくありますね。談笑していたり、お互いに写真を撮りあっていたり。実はピーター・ウェラーさんが参加したのは、仲良しのクリストファー・ロイドさんが直接誘ったから、という裏話もあります。セレブの皆さん、お祭り感覚でご機嫌なことが多いです。
──ズバリお聞きしますが、SNSでは運営に対する意見や要望が毎年たくさん書き込まれていますよね。見ていますか?
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──ズバリお聞きしますが、SNSでは運営に対する意見や要望が毎年たくさん書き込まれていますよね。見ていますか?
まず、これは本当に申し訳ないんですが、日によって状況が変わるので、現場のスタッフさんへの情報伝達がどうしても行き届かない時があるのは事実です。ディズニーランドのようなテーマパークなどと違って、コミコンは3日間だけのスタッフ。セレブの撮影会・サイン会だけをやっているプロというのはいないわけです。どうしても、その年だけのアルバイトさんになってしまう。気が利くアルバイトさんもいるだろうし、そうでないこともある。
写真撮影会の時に、目を瞑ってしまった際にスタッフからあまりにも冷たい対応をされた、というお声も拝見します。気持ちは非常によくわかるのですが、実はファンの中に、わざと目を瞑って何度も撮り直して、セレブとの滞留時間を伸ばそうとする方もいるんです。全ての方に平等にしなければならないということもあって、難しいところです。
それから、何か嫌なことが起こってしまった時に、セレブのせいにする方は絶対にいない。必ず運営が悪いのです。セレブも人間なので、最初の頃はニコニコしているんだけど、だんだん疲れてきて……、ということもあります。もしもセレブの顔が不機嫌そうだったとしたら、それはセレブが悪いのではなく、セレブの機嫌を損ねさせた運営の不手際、という責めを我々が負うのは当然だと思います。
ただお伝えしたいのは、我々は、SNSでお寄せいただく意見をきちんと見ていますということ。できるところから一つ一つ、一生懸命、改善させていただいております。
──今年も、会場ステージですぴさんのご活躍を見られることを楽しみにしています。ステージMCをやる上で、心がけていることはありますか?
ステージでMCをする際、あえてセレブの方を見ないようにしています。なぜなら、僕がセレブの方を向いて話してしまうと、セレブもこちらを向いてしまうから。なるべく皆さんに顔を見せていただくように心がけています。
それから、「日本のファンについてどう思いますか」という質問をすることがよくあるのですが、実はセレブの方から、日本のファンについて感謝を語りたい、という要望を受けてお聞きしているんですよ。一人でも多くのお客さまに楽しんでいただいて、セレブの方にも楽しんでいただくために、出来る限りのことをしたいと考えています。
東京コミコン2024 開催概要
©2024 Tokyo comic con All rights reserved.会期2024 年 12 月 6 日(金)11:00~19:00
7 日(土)10:00~19:00
8 日(日)10:00~18:00 ※開催時間は変更となる可能性があります。会場幕張メッセ(〒261-0023 千葉県千葉市美浜区中瀬 2-1)1 ホール~5 ホール
※ホールは変更となる可能性があります主催株式会社東京コミックコンベンション、東京コミックコンベンション実行委員会イベント内容・国内外映画、コミックなどの最新情報公開
・企業出展(限定・先行商品の販売、グッズの展示など)
・実際に映画で使用されたプロップ(小道具)や、レアグッズの展示
・最新技術を使った様々なコンテンツの体験
・海外セレブ俳優との交流
・ステージでのライブやパフォーマンス
・コスプレイヤーとの交流、コンテスト
・漫画家やイラストレーターの作品展示や販売、「アーティストアレイ」お問い合わせ先東京コミックコンベンション事務局 info@tokyocomiccon.jp