楽天の配送ロボットによる「無人配送」サービスを使ってみた! 未来を感じるものの、やや厳しい現実も…
昨年末、私(佐藤)はイタリアンファミレス「オリーブの丘」で近未来の光景を見た。そのお店には配膳ロボットが多数導入されており、文字通りにお店を回している状況だった。しかしながら、まだ人間の代わりを務めるには不十分で、店内通路ではにわかにロボット渋滞が発生する事態に……。
飲食店だけでなく、実は物流の分野でもロボットが活用されている。楽天グループは都内の一部で自動配送ロボットによる無人配送を開始していたのである。活用してみたところ、未来を感じるけど、やや厳しい現実を目にすることになった……。
・楽天の自動配送ロボット
オリーブの丘のロボット事情について、記事でお伝えしたところ、ある読者の方から2024年11月から晴海で楽天の自動配送が始まっていることをお教え頂いた。楽天のニュースリリースを確認してみると、東京都中央区晴海全域、月島と勝どきの一部で利用可能とのこと。
昨年8月より試験的に運用を開始していたそうだ。楽天初の取り組みで、「自動配送ロボットは人が随行せずに自動走行および遠隔操作で運行します」としている。こりゃ、マジで未来が来てた!
届ける場所を指定できるってことなので、とにかく現地へゴー! 大江戸線の勝どき駅を出て、晴海ふ頭公園に行こうと思ったら、いきなりいた!! こいつだな、配送ロボットは。
すげえ、交差点で信号待ちしてる~! 信号が青に変わったら、ちゃんと横断してる~!!
大したもんだ! おじさんビックリしちゃったよ。
自動配送を使ってみたい! 晴海ふ頭公園までスタバのコーヒーを届けてもらうぞ。配送元のお店はここ、トリトンスクエアのスタバらしい。
自分で買って持っていってもいいけどスルー。ロボットが運んでくれたコーヒーを飲みたいんだもの!
ってことで勝どき駅から約20分歩いて、公園まで来ました。あの向こうに見えているのはレインボーブリッジかな。
「Site of the Tokyo 2020」、そうだったね。ここは東京五輪の選手村だったんだっけな。もう遠い昔のことみたいだ。
それにしても寒いなあ……。昨日は季節外れの陽気に恵まれて、3月下旬並みの気温だったのに、今日は一転して、5~6度も気温が下がってる。風が冷てえ。あったかいコーヒー、飲みてえな~……。
そうだ! ロボットに配送してもらえばいいじゃないか!! 思い切って、楽天無人配送を使っちゃうよ~!
専用サイトを開くと、スターバックス晴海トリトンスクエア店で注文可能だ。こいつは便利だ~。
商品の数は少ないけど、とりあえずコーヒーを飲めればOK! トールサイズが税込412円、配送料は100円! 配送料安いな、Uberよりも安いじゃないの。
商品を選択したら、連絡先と受け取り場所・時間を入力する。ちなみに利用には楽天会員の登録が必要になるので、その点に注意して頂きたい。
で、晴海ふ頭公園で受け取るつもりだったけど、ここまで届けてくれない。場所はあらかじめ決まった場所から選択する仕組みだったのね。せっかく20分歩いてきたのに、受け取りのできる場所まで戻んないと。
あの小さなタイヤのロボットじゃ、起伏の激しい路面や階段は超えられないから、おのずとお届け範囲は決まってくるのかもね。
「ベイシティ晴海スカイリンクタワー」が受け取りにちょうど良さそうだ。ここにしよう。場所を選択すると、受け取り時間が表示されるので、そのなかから都合の良い時間帯を選ぶ。
まだ11時半なんだけどな。最短で12時15~30分なのか。早ければ45分後、遅ければ1時間後になっちゃうなあ。仕方ない、待つしかないな。
とにかく注文完了。画面下の「暗唱番号」はボックス型ロボットのフタをあけるのに必要になる。
この内容はショートメッセージでも送られてきた。
ステータスは「受付完了」、配送されるまでに受け取り場所まで行かないとな。とはいえ時間は十分すぎるほどあるのだが。
1杯のコーヒーを飲むのに、45分待ちはツラい。とりあえずコーヒーでも飲んでコーヒーを待つとしよう。
超ゆっくり歩いて何とか20分くらい時間を潰したけど、それでもまだ20分以上ある。もう受け取り場所に来てしまったなあ。どうしよ……。
ステータスを確認すると「配送準備中」になった。ささやかな前進だ。
早くコーヒー飲みたいな~。待ちきれないから、もう1本缶コーヒー、飲んじゃおうかな~。
ヒマだから改めて配送状況を確認すると……、お! ついに動き出した!! 「配送中」になってる~~ッ!
とてもゆっくりな進行だけど、着実にこっちに向かってきてる。お~い! こっちだ~!!
進んでる、着実に前に進んでいる。その様子は健気でいじらしいとさえ思えてしまう。もう、迎えに行ってやりたいくらいだよ。
がしかし、それをやってはロボットのためにならん! 配送ロボットなのだから。ここは心を鬼にしてじっと待つ。それが人の道ってもんでしょうが!
おお、もうあの角まで来てるはず。そろそろ姿が見えてもいい頃だが~……。
キター! お~い、パトラッシュ~(勝手に命名)!! ここだ~、俺はここだぞ~!
…… 私には見える ……
…… パトラッシュが私を見つけて ……
……… 笑顔で駆け寄ってくる姿が ………
\\\ パトラッシューーッ!! ///
はい、こちらがパトラッシュ……、ではなく「Cartken Inc.」のロボット「Model C」です。
事前に受け取っていた暗唱番号を、天板の操作パネルに入力する。
するとパカッ! とフタが開いた。中にはスタバの紙袋。
無事に商品を受け取ることができたのであった。よくやった、パトラッシュ!
受け取りが完了すると、颯爽(さっそう)と去っていったのであった。ありがとう、パトラッシュ! さようなら、パトラッシュ!
・もしや保護者?
ちゃんと利用することができたのだが、もしや? と思うことがあった。それは保護者のように随行している人がいたことだ。
私が利用したロボットだけでなく、駅を出て最初に見たロボットにも、帰り際に見かけた2台のロボットにも、それぞれ保護者のような人が付き添っているのを目にした。実際私は随行している人に「私が注文しました」と伝えた上で、ロボットに暗唱番号を入力している。
リリースには「自動配送ロボットは人が随行せずに自動走行および遠隔操作で運行します」と書いてあったけど、実際の運用には人の手が必要なのかも。
仮に物や人に接触したりする可能性を考慮すると、ロボットだけで配送をまかなうにはまだまだ課題があるのかもしれないなあ。何かあった時に現場に人がいれば速やかに対処できるのもわかるしなあ。
人手不足の解消を目的に運用されているはずなのだが、付き添いが必要なら、いっそその人が荷物を運んだ方が良いのでは? と思ってしまった。おまけに配送料100円じゃ、どう考えても採算がとれてないだろうし……。厳しい現実を見てしまった。
とはいえ、コーヒーはちゃんと届いてますよ。
包装はしっかりしているし、コーヒーカップは2重フタになっているので、まったくこぼれていない。
冷めておらず、むしろアツアツなくらいで寒さを和らげてくれるのには十分だった。
寒さが募ると、人のぬくもりを感じたくなるもの。たとえロボットが運んだとしても、このコーヒーには人のぬくもりを感じられる。いずれは完全自動化で、コーヒーを淹れるのも届けるのも、全部ロボットでまかなわれるのだろうか? その時に私は今のようなぬくもりを感じられるのかな。
ロボットの活躍する未来が待ち遠しいような、待ち遠しくないような……。
参考リンク:楽天ニュースリリース、楽天無人配送
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
Screenshot:iOS