ヒトのゲノムをつくることはできる?【眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話】
ヒトのゲノムをつくることはできる?
ゲノムを「読む」から「書く」へ
「ヒトゲノム計画」によって、ヒトのDNAのすべての塩基配列は、すでに解読されています。個人間の配列のわずかな違いも明らかになりつつあり、その違いに関係する病気や体質などもわかりました。そうなると次は、いよいよ「書く」 (つくる)番です。病気に関係するものを含まない配列に書き換えれば、病気にかかりにくいゲノムをもつヒトをつくることができます。
つまり、リスクのない、希望するヒトゲノムの人工合成が可能な時代がやって来たということです。合成したヒトゲノムから人工細胞をつくって、移植専用臓器や新薬の開発につなげる。そんな研究も始まっています。
ただ、ここで考えておかなければならないことが、ヒトゲノムの合成は、どこまで許されるかという問題です。病気にかかりにくいゲノムならまだしも、超スピードでどこまで走っても疲れない運動能力抜群のゲノム、どんな天才よりもはるかにかしこいゲノム、ほかの人より何倍も長生きできるゲノム。
そんなヒトゲノムをつくってもいいのでしょうか?確かに、技術的には将来的に可能になるでしょう。でも、だからといって実行すると、いろいろな問題が出てきそうです。研究者も私たちも、ともによく考え、どうするべきかを議論していく必要があります。
望みどおりのヒトをつくることも技術的には可能に
ゲノム編集でねらいどおりのヒトをつくる合成ヒトゲノムの研究が進み、応用も始まった。きれいになりたい、かしこくなりたい、強くなりたい……。そんな欲求に応えられる時代になるかもというけれど……。
どこまでが許される?
ヒトのゲノムをつくる目的は?
合成ヒトゲノムからすぐれた子どもをつくることは、遺伝的な親をもたない「デザイナーベビー」をつくることと同じです。また、原因になる遺伝子を取り除いて、希望どおりのすぐれた体型、容貌、能力、若さをもつヒトをつくることは、「デザイナー人間」をつくることにもつながります。合成ヒトゲノムの大きな目的は、医療に役立てること。人間のエゴのためだけに利用されないよう注意が必要です。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子