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かかりつけ薬局のメリットとは?選び方や活用方法を解説!

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

かかりつけ薬局とは?基本知識と制度を解説

高齢の家族の介護をしている方にとって、薬の管理は重要な課題のひとつです。複数の病院にかかっていると、それぞれの医療機関から異なる薬が処方され、「この薬とあの薬を一緒に飲んでも大丈夫なのか」「副作用が出ていないか」など、不安を感じることもありますよね。そんな時に頼りになるのが「かかりつけ薬局」です。かかりつけ薬局は、単に薬を受け取る場所ではなく、あなたや家族の健康を支える重要なパートナーとなります。

かかりつけ薬局・薬剤師の定義と役割

「かかりつけ薬局」とは、継続的に利用する薬局のことで、健康状態や服用している薬の情報を一元的に管理してくれる場所です。同様に、「かかりつけ薬剤師」とは、お薬や健康に関する豊かな知識と経験を持ち、利用者ひとりひとりのニーズに応じたアドバイスを行うことができる薬剤師のことです。

2016年4月から開始された「かかりつけ薬剤師制度」では、利用者が薬剤師を指名することができ、同じ薬剤師が毎回案内を担当することができます。これは専属の「お薬パートナー」を持つことができる制度といえるでしょう。

かかりつけ薬局・薬剤師の主な役割には以下のようなものがあります。

薬の重複や飲み合わせのチェック
24時間対応・在宅対応
医療機関等との連携
健康相談への対応

特に介護の現場では、複雑な薬の管理をまとめて引き受けてくれるかかりつけ薬局の存在は非常に重要です。高齢者にとって、薬の管理は本人だけでは難しいことも多く、かかりつけ薬剤師が適切に関わることで、より安全で効果的な服薬が可能になります。

介護における薬の一元管理の重要性

高齢者は複数の疾患を抱えていることが多く、様々な医療機関から多くの薬が処方されることがあります。これを「ポリファーマシー」(多剤併用)と呼び、薬の数が増えるほど、副作用や相互作用のリスクも高まります。

例えば、A病院で処方された薬とB病院で処方された薬が重複していたり、一緒に飲むことで効果が弱まったり、逆に強まりすぎて副作用を起こしたりする危険性があります。また、市販薬や健康食品も含めると、その組み合わせはさらに複雑になります。

また、高齢者の「残薬」問題も深刻です。飲み忘れや薬を勝手に中止することで、手元に残った薬が溜まっていくことがあります。

かかりつけ薬局による薬の一元管理は、こうした問題を解決する鍵となります。かかりつけ薬局では、すべての処方薬の情報を把握し、飲み合わせのチェックや用法の調整を行います。例えば、同じ成分の薬が重複して処方されていないか、副作用を増強させる組み合わせがないかなどを確認し、問題があれば医師に連絡して処方の見直しを提案します。

かかりつけ薬局制度の変遷と最新動向

かかりつけ薬局の考え方は、医薬分業の進展とともに発展してきました。かつては病院で診察を受けると、その病院内で薬も受け取る「院内処方」が一般的でしたが、現在では医師が診断・処方を行い、薬は外部の薬局で受け取る「医薬分業」が主流となっています。現在の日本では、外来投薬の約70%が薬局で調剤されるまでになっています。

この医薬分業の大きなメリットは、処方する医師と調剤する薬剤師によるダブルチェックが可能になることです。薬の効果や副作用を確認したり、重複や飲み合わせをチェックしたりすることで、より安全な薬物療法が受けられるようになります。

2016年には「かかりつけ薬剤師制度」が始まり、患者が特定の薬剤師を指名できるようになりました。さらに2021年からはマイナンバーカードを健康保険証として利用する「オンライン資格確認」がスタートし、患者の同意に基づいて過去の薬の情報や特定健診の情報を閲覧できるようになりました。

厚生労働省が公表した「患者のための薬局ビジョン」では、2025年までにすべての薬局を特定の医療機関の近くだけに立地する「門前薬局」から、地域住民の健康をサポートする「かかりつけ薬局」へと進化させ、地域全体の医療・介護を支える拠点としての役割を担うことを目指しています。

かかりつけ薬局のメリット

かかりつけ薬局を持つことで、患者さんや介護する家族にはさまざまなメリットがあります。特に、複数の疾患を抱え、多くの薬を服用する高齢者にとって、かかりつけ薬局のサポートは非常に有益です。ここでは、かかりつけ薬局を利用することの具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

処方薬を一元管理できる

かかりつけ薬局のメリットのひとつは、複数の医療機関から処方される薬をひとつの薬局で一元的に管理できることです。これにより、薬の重複投与や相互作用(飲み合わせの悪さ)による危険を防ぐことができます。

例えば、Aクリニックで高血圧の薬を処方され、B病院で糖尿病の薬を処方された場合、それぞれ別の薬局で調剤すると、薬の情報が分散してしまいます。しかし、かかりつけ薬局ならば、両方の処方箋を持っていくことで、すべての薬の情報を把握した上で安全に調剤してもらえます。

さらに、市販薬や健康食品、サプリメントも含めた総合的な管理が可能です。「この漢方薬と処方薬を一緒に飲んでも大丈夫?」「このサプリメントは薬と飲み合わせが悪くないか?」といった疑問にも答えてもらえます。

かかりつけ薬剤師は、患者さんの体質や既往歴、アレルギー歴なども把握しているため、より安全で効果的な薬の使用をサポートできます。また、継続的に服薬状況をチェックすることで、副作用の早期発見にもつながります。

「ある薬を飲み始めてから頭痛がする」「めまいが起きるようになった」といった症状が実は薬の副作用だった、というケースは少なくありません。特に高齢者の方は、加齢に伴う肝機能や腎機能の低下により、若い人と同じ量の薬でも効き過ぎたり副作用が出やすくなったりすることがあります。かかりつけ薬剤師であれば、こうした変化にも気づきやすく、必要に応じて医師への情報提供や処方変更の提案も行います。

また、飲み忘れなどで手元に薬が溜まっている場合、それを確認した上で医師に情報提供し、次回の処方量を調整してもらうといった対応も可能です。これにより、薬の無駄をなくし、医療費の適正化にもつながります。

介護家族の負担が軽減される

高齢者の介護をしている家族にとって、薬の管理は大きな負担となります。例えば、認知症のある高齢者であれば、「薬を飲んだか忘れてしまう」「勝手に薬を飲み過ぎてしまう」といった問題も起こりがちです。かかりつけ薬局では、こうした介護家族の悩みに対しても様々なサポートを提供しています。

近年では、24時間対応可能な体制を取っている薬局も増えており、夜間や休日に「薬のことで急に不安になった」「副作用と思われる症状が出た」といった緊急事態でも対応してもらえることがあります。電話での相談だけでなく、緊急時の調剤対応も行っている薬局もあります。

また、外出が困難な高齢者のために在宅訪問を行っている薬局もあります。薬剤師が自宅を訪問し、服薬状況の確認や残薬の整理、服薬環境の調整などを行うことで、より適切な薬の使用をサポートしてもらうことが可能です。

その他、細かい悩みに対しての提案をしてもらえることもあります。例えば、錠剤が飲みにくい場合は粉砕や一包化(複数の薬を1回分ずつにまとめる)の提案、飲み忘れ防止のためのカレンダー式薬箱の提案など、個々の状況に合わせた対応が可能です。これにより日常的な服薬介助の負担を軽減することができます。

服薬支援を受けられる

かかりつけ薬局では、薬の調剤だけでなく、医療チームとの連携による様々な服薬支援サービスを提供しています。これらのサービスは、特に多くの薬を服用する方にとって非常に便利です。

介護保険の居宅療養管理指導としての薬剤師による訪問サービスも活用できます。介護支援専門員(ケアマネジャー)と連携することで、より包括的なケアの一環として服薬支援を受けることが可能です。また、かかりつけ薬剤師は医師とも連携しており、服薬情報を共有することで、治療をより安全で効果的なものにしていきます。

このように、かかりつけ薬局・薬剤師によるきめ細かい服薬支援は、高齢者の健康維持と安全な服薬に大きく貢献します。特に介護を行う家族にとっては、専門家による適切なサポートを受けられることで、大きな安心感を得ることができるでしょう。

かかりつけ薬局の選び方と活用法

次は実際にかかりつけ薬局をどのように選び、活用すれば良いのかについて解説します。

かかりつけ薬局の選定ポイント

かかりつけ薬局・薬剤師を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。特に介護の視点から考えると、以下の点に注目するとよいでしょう。

立地条件 自宅や施設から通いやすい場所にあることが理想的です。特に高齢者が自分で通う可能性がある場合は、公共交通機関からのアクセスや、バリアフリー対応の有無も確認しておくとよいでしょう。 高齢者が自力で薬局に行くことが難しい場合は、在宅訪問サービスの有無を確認しておくことも重要です。在宅訪問の場合、介護保険の居宅療養管理指導として利用できる場合もあります。 営業時間と休業日 診療後に立ち寄れる時間帯まで開いているか、休日や夜間の対応はどうなっているかを確認しておきましょう。特に、緊急時の対応が可能かどうかは重要なポイントです。 薬剤師とのコミュニケーションがスムーズか 特に認知症のある高齢者の介護を行っている場合は、薬剤師に認知症がある方の対応経験があるかどうかも確認しておくとよいでしょう。 薬局の設備やサービス内容 無菌調剤室(注射薬や点眼薬などの無菌製剤を調合する設備)の有無、プライバシーに配慮した相談スペースがあるかなども確認しておくとよいでしょう。 薬局によっては「健康サポート薬局」や「地域連携薬局」といった認定を受けている場所もあります。これらの認定薬局は、一定の基準を満たした薬局であり、より個人の状況に則したサービスが期待できます。

実際に選ぶ際には、まず複数の薬局を比較検討することをおすすめします。地域の医師や介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談して推薦してもらうのも良い方法です。また、薬局で開催される健康相談会や講座に参加してみるのも、薬局の雰囲気や薬剤師の人柄を知る良い機会となります。

かかりつけ薬剤師の指名方法と費用

かかりつけ薬局が見つかった後、かかりつけ薬剤師を指名することが可能です。かかりつけ薬剤師は、あなたや家族の健康状態や服薬歴を継続的に把握し、より個人に合ったサービスを提供してくれる存在です。

かかりつけ薬剤師になれるのは、一定の条件を満たした薬剤師のみです。具体的には、以下の要件を全て満たす必要があります。

薬局での勤務経験が3年以上ある
勤務先の薬局に1年以上在籍している
勤務先の薬局に週32時間以上勤務している ※育児・介護休業法の規定により労働時間が短縮された場合にあっては、週24時間以上かつ週4日以上である場合を含みます。

かかりつけ薬剤師を指名する際は、まず薬局でその旨を伝えます。薬局にて専用の用紙(同意書)に必要事項を記入することで手続きが完了します。この同意書には、かかりつけ薬剤師の役割や、あなたや家族が受けられるサービスの内容、費用などが記載されています。

費用面では、かかりつけ薬剤師から薬をもらう場合、通常の薬剤服用歴管理指導料に代わり、「かかりつけ薬剤師指導料」が加算されます。3割負担の場合、1回の処方箋受付につき60円〜100円程度の追加負担となります。この追加費用は、より細やかで個別化されたサービスを受けるための費用と考えるとよいでしょう。

なお、一度かかりつけ薬剤師を指名した後でも、いつでも変更は可能です。相性が合わないと感じたり、別の薬剤師の方がより専門性が高いと思ったりした場合は、遠慮なく変更を申し出ましょう。

お薬手帳を活用した効果的な相談の仕方

お薬手帳は、お薬の服用履歴を管理するためのものです。自身の健康管理に活用できるほか、服用歴を薬剤師が確認することで、相互作用防止や副作用回避に役立ちます。

基本的には、薬局で処方薬を受け取る際に薬剤師がお薬手帳にシールを貼ったり、情報を記入したりしますが、ご自身や家族が積極的に情報を記録することで、より有用なツールとなります。例えば、以下のような情報を記録しておくとよいでしょう。

市販薬や健康食品の使用状況
薬を使用した後の効果や副作用の有無
体調の変化や気になる症状
検査結果や血圧などの測定値

お薬手帳を持って薬局に行く際は、必ず薬剤師に見せるようにしましょう。これにより、薬剤師は服薬状況を正確に把握し、より適切なアドバイスを提供することができます。また、複数の医療機関を受診している場合は、1つのお薬手帳にそれぞれの医療機関で処方された薬の情報がすべて記録されていることが重要です。

最近では、紙のお薬手帳だけでなく、電子版お薬手帳も普及しています。

マイナポータルと連携して、過去の薬剤情報を取り込むことができるだけでなく、服用スケジュールの管理や服用アラームの設定ができるものもあり、日々の服薬に役立つ機能が多くあります。

また、処方薬を受け取るだけではなく、服用状況や体調の変化について報告し、困ったことがあればすぐに相談するようにしましょう。

薬局での相談を効果的に行うためには、事前に相談内容を整理しておくとよいでしょう。例えば、「最近服用している薬の副作用が気になる」「飲み合わせが心配な市販薬を使いたい」「認知症の親が薬を飲み忘れることが多い」など、具体的な悩みや疑問を明確にしておきます。

また、介護をしている方が相談する際は高齢者本人の状態や服薬状況を詳しく伝えることが重要です。「薬を飲むのを拒否することがある」「薬の大きさや形状が飲みにくそう」といった具体的な困りごとを伝えることで、より適切な対応策を提案してもらえるでしょう。

以上のように、お薬手帳を活用した効果的な相談を通じて、かかりつけ薬局・薬剤師とのより良い関係を築き、安全で効果的な服薬指導を受けることができます。

まとめ

かかりつけ薬局・薬剤師は、高齢者の介護において大きな力となります。複数の医療機関からの処方薬を一元管理することで薬の重複や相互作用を防ぎ、24時間対応や在宅訪問などのサービスにより介護家族の負担を軽減し、きめ細かい服薬支援で安全な服薬をサポートします。

かかりつけ薬局を選ぶ際は、立地条件や営業時間、在宅訪問の可否などをチェックし、薬剤師のコミュニケーション能力や専門性も重視しましょう。薬局にてかかりつけ薬剤師を指名することも可能です。

お薬手帳は、かかりつけ薬局との連携に欠かせないツールです。処方薬だけでなく市販薬や体調の変化も記録し、定期的に薬剤師に相談することで、より安全で効果的な服薬指導を受けることができます。

介護における薬の管理は難しい問題ですが、かかりつけ薬局・薬剤師を上手に活用することで、その負担を大きく軽減することができます。地域の薬局をただ薬をもらう場所として利用するだけではなく、お薬や健康管理のパートナーとして活用してみてください。

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