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【企業理念を言語化!】ザツダン(新潟市中央区)が新サービス「タグライズ」をリリース、社外の若者とのタッグで誕生

にいがた経済新聞

「野口君との出会いは僕にとって宝物です。ザツダンではタグライズ開発を機に“越境”体質ができました。12月にタグライズをリリースして以降、毎月様々なテーマ・様々な社外メンバーと共にイベントを開催しています」(横田氏)

企業理念を体現するためのタグラインの開発サービスが誕生

近年、パーパスやビジョンなどが注目され、理念に基づいた経営が重要視されている。そんな企業やブランドのニーズに応える形で、企業姿勢や存在意義を端的に言語化し、その体現までを伴走する新サービス「タグライズ」を、新潟市の言語化カンパニー「ザツダン株式会社(新潟市中央区)」がリリースした。

理念の浸透とその先の体現を目指すうえで、ザツダンが注目したのが「タグライン」だ。「あなたと、コンビに、ファミリーマート」「お、ねだん以上。ニトリ」「まだ、ここにない、出会い。リクルート」など、企業名とセットで記憶される印象的なフレーズのことである。

タグライズは、企業理念をタグラインという形で言語化するサービスだが、単なる言葉の制作が目的ではない。クライアントとのワークショップによってキーワードを集め、タグラインの案を共に作り、完成した言葉を日常の業務を通じて体現するところまで伴走する点が特徴的だ。

サービスのリリースに合わせて、ザツダン自身もタグラインを「言葉と進め」にリニューアル。変化のスピードが速まる現代において、言葉を介してビジョンの実現を目指してクライアントと共に走り続ける姿勢を表現したものであり、このタグラインを作ったことで、ザツダンの横田孝優代表取締役は「自社の社員がタグラインを指針に自律的に判断し、成長するようになりました」と、人材開発の側面からも効果を実感している。

ザツダン代表取締役横田孝優氏。コピーライティングやセミナーの開催、コラムの執筆など活躍は多岐にわたる。主な実績は「NIIGATA越品(新潟伊勢丹)」「ヨサソーダ(キリンビバレッジ)」「純白のビアンカ(佐藤食肉)」

経営者と若者がタッグを組むビジネスプロジェクトがきっかけに

タグライズはそのサービス内容に留まらず、事業開発の現場に新潟の学生も参加しているという点においてユニークである。

本サービスは、2023年12月にInquiry合同会社(新潟市西区)が提供している3ヶ月で新規事業を作り上げるビジネスプログラム「ローカルベンチャーシップ」から誕生した。このプログラムの大きな特徴が、経営者・管理職とベンチャーバディ(以下バディ)と呼ばれる社外の若者がタッグを組むこと。自社の価値観や企業文化などを“越境”して、従来の概念にとらわれない挑戦ができる仕組みとなっている。

「昨年ザツダン創業10周年を迎えて、成長し続けるためにも新しいことをしたいと思っていました。良質なタグラインは第二の社名と言っても過言ではありません。社内外へのブランディングの効果はもちろんのこと、その言葉は意志決定の判断基準にもなるものです。私はタグラインを制作して納品して終わりではなく、その言葉をどのように使うかも伝え、体現するところまでクライアントと一緒にやっていきたいと思い、タグライズの開発を決めました」(横田氏)

“社会人0年目”の本気が、ビジネスセミナーで参加者の心を動かす

タグライズのプロジェクトには、当時新潟法律大学校の4年生だった野口悟さんがバディとして参加。週1回のミーティングに加え、様々な会社のタグラインの収集や分析、イベント運営、セミナーでの発表などが任された。

「野口君が集めたタグラインは200社分を超えていました。狂気ですよね(笑)」と回想する横田氏。

ザツダンのプロジェクトのバディを務めた野口悟さん。「興味がある広告に関することをここまで真剣に取り組んだのは初めて。すごくやりがいを感じました」

当時就職先から内定を受けつつも、入社後のキャリアが具体的にイメージできず不安を抱えていたという野口さん。元々広告やコピーライティングに興味を持っていたところにザツダンのプロジェクトを知り、ローカルベンチャーシップへの参加を決めた。

「自分の何が貢献できるかわからなかったからこそ、とにかく手を動かして120%で要望に応えることを意識していました。集めたタグラインはレポートにまとめ、ザツダンのタグラインセミナーで15分プレゼンを行いました。特に手応えを感じたのが、発表時のスライドをスマホで撮影してくれる人が何人もいたこと。全力で作った資料が参加者にとって『残しておきたい』と価値を感じてもらえるものになって嬉しかったです」(野口さん)

集めたタグラインから導いた分析結果をセミナーでプレゼンする野口さん。

結果、タグライズは3ヶ月のプロジェクト期間内にサービスとして完成。その後4社の契約がまとまり、5社目の相談の声も寄せられている(6月末現在)。

プロジェクトの円滑な進行を支える第3のメンバー

タグライズ開発の背景にはもう一人、コーディネーターと呼ばれる人物の貢献が見逃せない。ローカルベンチャーシップでは、必ず1プロジェクトにつきInquiryから一人コーディネーターがつき、企業とバディ、両方のサポートに努めてくれる。

写真左がコーディネーターの石橋さん。企業側・バディ側どちらにも偏らない中立の距離感でのサポートが、プロジェクトの円滑な進捗の鍵に。

参加企業にも本業があるため、プロジェクトの推進と同時にバディのフォローまで行うとなると難しい。コーディネーターはミーティングの進行からさりげない両者への気遣いまで、安心してプロジェクトに臨める環境を整える。

「ローカルベンチャーシップは、周りは歳上で初対面の社会人ばかり。でも最初にコーディネーターから『困ったことがあったら言ってくださいね』と声をかけてもらえて、本当にやりやすかったです」(野口さん)

社外人材のスキルや情熱が企業に与える効果と可能性

ローカルベンチャーシップにおけるタグライズの誕生は、一つのサービスをリリースしたこと以上のインパクトを両者にもたらしている。

就職に対して不安を抱えていた野口さんは「何よりも自信がつきました。現在新潟県内のメディア関係の企業に勤めていますが、イベント運営を担当する際の集客やプロモーション、受付の動線づくりなど、さまざまな場面でローカルベンチャーシップでの経験が生きています」とのこと。

横田氏も、サービスを一緒に開発した以上の手応えと関係性を実感しているそうで「野口君のタグライン収集への取り組みを“狂気”と表現しましたが、若い頃は確かに自分もその情熱を持っていたはずでした。それが経験値が増えて器用になって、いつの間にか遠いものに…。久しぶりにその狂気を目の当たりにして感化される部分もあり、その力もあって3ヶ月間でサービスを完成することができたのだと思います」と語る。

「野口君との出会いは僕にとって宝物です。ザツダンではタグライズ開発を機に“越境”体質ができました。12月にタグライズをリリースして以降、毎月様々なテーマ・様々な社外メンバーと共にイベントを開催しています」(横田氏)

プロジェクト終了後もLINEで近況報告をしあうなど、仕事仲間とも家族とも異なる関係性が両者の間には続いている。

この社員でも取引相手でもない、緩やかにつながるビジネスの関わりが、近年注目されているとローカルベンチャーシップを企画・運営しているInquiry合同会社の山本一輝CEOは指摘する。

人・組織の可能性をひらく事業の創出と、変化を支える伴走型コンサルティングを掲げるInquiry合同会社のCEO・山本一輝氏。

「退職者や過去のインターン生など、企業に何かしらの関わりを持っていた社外の人間で尚且つ自社のことを考えてくれる人材を、最近では関係人口になぞらえて“関係社員”と呼びます。人口減少が続く日本においては、今いる社員だけでなくこうした外部の人的ネットワークは会社にとっての無形資産であり、今後の経営においても重要であると言われます」(山本氏)

そんな関係社員になりうるローカルベンチャーシップのバディは30歳以下限定だが、なかでも野口さんが勧めたいと挙げるのが、就職内定者の参加だ。地域ではまだ副業を容認している会社は多くない。就職後は自社以外で経験を積むことは難しいが、ローカルベンチャーシップで他社を知ることで、就職後に自社と比較して改善する発想が生まれやすくなるのではないかというのがその理由だ。

「ローカルベンチャーシップはプロジェクト期間が決まっているが、いつでも挑戦できるようにインフラ化してほしい」(横田氏)というほど、事業者側・バディ側両方にとって大きな収穫があったそう。

横田氏もサービス開発に留まらない新たな外部人材との関係性の構築、さらには自社の社員も従来以上に仕事にポジティブに向き合うようになり、自身も異業種の経営や組織開発への関心が高まるなど、さまざまな変化につながっていると振り返る。外部人材との協働は、それまで使ってこなかった筋肉を使うようなイメージであり、だからこそ最初はきつくても徐々に慣れ、やがて習慣となり体質改善につながるとも表現する。

「ザツダンの取り組みは、プロジェクト終了後もお互いに影響を与え続けていて、地域企業がいかに変わり得るかを考える上でも好事例といえます。スタートアップ企業も歴史ある企業も、越境を通じて仕事のやり方を見直したり、多様なネットワークを構築していくことが成長の足掛かりになるのではないでしょうか」(山本氏)

一つの事業開発を核に、企業の体質改善にもつながる“越境”体験。ザツダンが参加したローカルベンチャーシップはSeason0を経て、現在はSeason1が控えており、バディの募集が始まっている。挑戦する姿勢を持つ新潟の企業や若者の活躍に注目だ。

■ローカルベンチャーシップSession1ベンチャーバディ向け説明会&ミニセミナー
【日 時】
2024年7月10日(水)20:00~21:00
2024年7月20日(土)10:00~11:00

【実施方法】
Zoom

【内 容】
・ローカルベンチャーシップの趣旨とプログラム概要、スケジュール
・募集プロジェクトの詳細とバディに求められる考え方や姿勢
・今の自分を振り返り、今後の自分のキャリアを考えるミニセミナー

【対 象】
ベンチャーバディへの応募を検討している方、ローカルベンチャーシップに興味がある方
バディの応募対象は30歳以下の社会人、大学生・専門学校生だが、本説明会は年齢・所属問わず参加可能

【申込フォーム】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSevylfXnCDxWneDoW-wafta6xpidQhr2Zc4O2yW1s9O6k-drQ/viewform

【取材協力】
ザツダン株式会社
https://ztdn.net/

Inquiry合同会社
https://www.inquiry-llc.com/

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