わずか数分の出演でアカデミー賞候補に!「少ないセリフには意味がある」名女優が語る衝撃作『教皇選挙』
アカデミー賞最有力候補の一角
本年度アカデミー賞賞において作品賞ほか8部門にノミネートされたレイフ・ファインズ主演、エドワード・ベルガー監督最新作『教皇選挙』が3月20日(木・祝)よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国公開となる。
カトリックの総本山バチカンで、トップに君臨するローマ教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>の内幕を描く本作。ベルガー監督が「カトリック教会は世界最古の家父長社会」と語るように、本作は主演のレイフ・ファインズをはじめキャストの大半が男性だ。
そんな中、<聖マルタの家>の運営責任者シスター・アグネスを演じたのがイザベラ・ロッセリーニ。彼女の演技は世界中で大絶賛され世界中の賞レースを席巻。本年度アカデミー賞での助演女優賞をはじめ、受賞・ノミネート総数は驚異の28に上る(※2/6時点)。
このたび、満を持してオスカー候補となったロッセリーニが修道女という存在について、そして自身の役どころについて語るコメントが到着した。
名優イザベラ・ロッセリーニの代表作といえば?
私は感謝したい。エドワード・ベルガーという素晴らしい監督に。非常によく書かれたシンプルで素晴らしいセリフに、そして全てのシーンで共演したレイフ・ファインズに。アカデミーの皆さん、このような大変な名誉をいただき、本当に感謝している。
オスカーに初ノミネートを果たし、こうコメントしたロッセリーニ。そして彼女を語るのに欠かせない作品が、1986年公開の故デヴィッド・リンチ監督作『ブルーベルベット』だ。
当時のロッセリーニは経験も浅く、映画の公開当初は評判も低かった。自信を失いかけたが、ご存知のように時を経て作品は評価される。以降、ロッセリーニは女優として地道にキャリアを積み重ね、やがてベテランの地位を確立。そして『教皇選挙』でついに、オスカー初ノミネートを果たした。
しかしロッセリーニは映画全体を通して、ほんのわずかな時間しか出演していない。では、何が彼女をノミネートに導いたのだろうか?
「私の役はセリフがあまりない。でも、それには意味がある」
『教皇選挙』への出演にあたり、脚本を読んだロッセリーニは、自身が演じるシスター・アグネスが男性だらけの場所で権限を持つ唯一の女性である点に惹かれたという。
アグネスの役目は黙っていること、枢機卿たちに異を唱えないこと。でも彼女の沈黙の中には、多くの情報と存在感がある。私はそれが素晴らしいと思った。
脚本を気に入り、原作小説もすぐに購入したというロッセリーニ。「私の役はセリフがあまりない。でもそれには意味がある」と語るとおり、本作での彼女の出演時間は、わずか7分51秒。それにもかかわらずオスカー初ノミネートを果たしたのだ。
ノミネートの決め手となったのは、レイフ・ファインズ演じるローレンス枢機卿との“目”での会話。沈黙の中で交わされた視線が、観客の心を揺さぶった。
「時には言葉を発さない力を持つこともある」
カトリック教会では女性の権限は限られている。修道女は男性の聖職者たちに服従する立場だから、彼女たちは従順なのよ。
ロッセリーニ自身がそう話すように、その設定ゆえにアグネスのセリフは少ない。しかし、だからこそ演技力が試される。彼女が役作りのヒントを見出したのは、「神は目と耳を与えてくださった」というセリフだ。
修道女たちは見聞きし、自分の考えを持っている。時には言葉を発さない力を持つこともある。ワインや水を給仕する時とかね。態度で示すこともできるし枢機卿や司祭はそれを感じ取ることができる。
“目での会話”を意識した演技は緊張感をたぎらせ、一瞬ごとに意味が込められている。わずか7分51秒。しかし、その限られた時間の中で、ロッセリーニは世界中の観客の記憶にその存在を焼きつけたのだ。
映画『教皇選挙』は3月20日(木・祝)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開