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【どうなる年賀状】メールやSNSの浸透で進む「年賀状離れ」。今年はさらに加速させる事情が…。伝統文化が岐路に立たされている!

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「どうする、どうなる年賀状」。先生役は静岡新聞の川内十郎論説委員です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年12月10日放送)

(山田)年賀状の準備の時期になりましたね。

(川内)来年の年賀状の受け付けが12月15日から始まります。しかし、メールやSNSの浸透で年賀状離れが進み、10月に郵便料金が値上げされたことでさらに拍車がかかりそうです。はがきは63円から85円に、封書は84円から110円に上がりました。3割以上です。

(山田)けっこう高くなったんだ。

(川内)日本郵便はお年玉付き年賀はがきの発行枚数を前年比25.7%減の約10億7000万枚と大幅に減らしました。人生の最期に備える「終活」の一環で「年賀状じまい」をするシニア層も目立ち、正月の伝統文化の一つである年賀状は大きな岐路に立たされていると言えます。

去年、郵便局に年賀状を出しに行った時、値上げも踏まえてのことだと思いますが、夫婦らしいご高齢の2人が「今年で最後だな」と語り合っているのを聞きました。

(山田)そういう方が多くなりそうですね。

歴史は平安時代までさかのぼる

(川内)年賀状の歴史をざっと振り返ってみましょう。その歴史は約千年前までさかのぼり、平安時代の貴族で学者の藤原明衡(ふじわらのあきひら)が作った手紙の文例集「雲州消息」に年始のあいさつの文例があるそうです。年始回りの簡略化や、直接会えない遠方の人への手紙のあいさつが年賀状のルーツとされ、江戸時代には飛脚も登場し、盛んになりました。寺子屋制度による日本の高い識字率も後押ししたと考えられています。

(山田)一般に広がったのはいつごろなんですか。

(川内)1871年(明治4年)に郵便制度が始まったのがきっかけです。2年後には郵便はがきの発行が始まり、元日の消印を狙って年末に投函する人も増え、郵便局員は不眠不休の作業だったそうです。日付印を押す手はマメで腫れ上がったという話も。そこで現在と同じように年末のうちに受け付けて元日に配達する年賀郵便の特別扱いが1899年(明治32年)に始まりました。

(山田)そんなに大変だったんだ。

お年玉付きはがきで国民的行事に

(川内)太平洋戦争中は逓信省(後の郵政省、現在の総務省)自らが自粛を呼びかけたこともありましたが、戦後はお年玉付き年賀はがきの販売が1949年(昭和24年)から始まり、国民的行事になっていきました。お年玉付き年賀はがきは郵便事業のドル箱的存在で、京都に住む全くの民間人の林正治さんが考案したとのことです。

(山田)受け取ることと、「当たるかな」という2重の楽しみ。画期的だ。

(川内)子どものころ、わが家で当たりはがきの確認は私の仕事。本当に楽しみで、絶対に譲りませんでした。

(山田)新聞で当せん番号をチェックした思い出がある。

(川内)大人になった今でも楽しい。

発行枚数はピーク時の4分の1以下

(川内)来年用の年賀はがきの発行枚数は10億7000万枚という話をしましたが、ピークの2004年用の44億5936万枚と比べると4分の1以下です。若者だけでなく30代以上でもラインなどほかの手段で済ませる傾向が明らかになっています。会社の部下から上司に出すのが礼儀という風潮が薄れ、形式的に出し続けることへの疑問も聞かれます。

(山田)部下から上司が礼儀か。僕は会社に勤めたことがないから、そういうことを知らない。

(川内)年賀状じまいした人の8割以上が「やめてよかった」と答えたとの調査結果もあります。理由は「年末のストレスがなくなった」など。「80歳を機に…」など「終活」の定着をうかがわせる傾向もうかがえます。個人だけでなく、会社が取引先などへの年賀状をやめた影響もあるでしょう。

(山田)年末のストレスというのは分かる気がする。

(川内)個人情報保護意識の高まりで、名簿が無くなったことも大きい。

(山田)僕は書いてないんですよ。でもほしい。もらうとすごくうれしい。

(川内)それはちょっとずるいですね。

(山田)小、中学校ぐらいまでは出していました。クラスのだれから来るか、楽しみだったな。今はもっぱらSNSですが、「明けましておめでとう」のスタンプが来ると、すぐ返さなきゃとなる。これはこれで、ちょっと面倒くさかったりするんですよ。

(川内)ちなみに私ははがき派で、一言書き添える年賀状を続けています。高齢者には生活の張りになっている側面もあるようで、静岡新聞の読者欄にも年賀状をテーマにした投稿が多く寄せられています。

(山田)リスナーからもSNSで声が届いています。「年賀状やめます」のはがきが増えたとのこと。「小学校のころ、クラスのみんなに住所を聞いて出したのが楽しかった」というのもあります。

郵便全体の利用が大きく減少

(川内)メールやSNSの広がりで郵便全体の利用が大きく減少しています。ピークの2001年度には263億通だった郵便物は2023年度には136億通とほぼ半減。人件費や燃料費の高騰もあり、郵便料金の大幅な値上げは赤字に陥る事業の立て直しが目的ですが、値上げでさらに郵便物が減り、経営が一段と悪化する「負のスパイラル」に陥る懸念もあります。

郵便事業は2025年度にいったん黒字に浮上するものの、2026年度には再び赤字となり、以降は赤字が拡大するとの試算が示されています。早くも再値上げが現実味を帯びている状況です。

(山田)いったいどこまで高くなるんだろう。

(川内)2023年3月時点で、全国のポストの約4分の1は1カ月の投函が30通以下で約4%はゼロか1通でした。

(山田)そんなに少ないんだ。

(川内)渓流釣りに行ってかなりの山間地まで赤い配送車が走っているのを見ると、全国一律料金を維持するには値上げはやむを得ないとも思えてきます。日本の郵便事業はレベルが高く、万国郵便連合の2016年の調査で世界3位。速さや国際郵便への対応力が評価されました。

(山田)日本の郵便はすごいと聞いたことがある。維持しなきゃというのは分かる。

郵便への愛着

(川内)私は紙媒体を主に意識して文章を書いているせいかもしれませんが、郵便に愛着があります。10月6日付の「時論」の欄で「手紙だから届く思いがある」の題で書かせてもらいましたが、記者生活の節目でなぜか郵便に縁があるんです。

(山田)詳しく聞かせてください。

(川内)記者になって初めて書いた原稿は静岡中央郵便局の「全国ふるさと小包フェア」。取材の要領の悪さの言い訳に「初めてです」と言ったからだと思いますが、後日、郵便局から「祝」の文字付き封筒に入った礼状がレタックス(電子郵便)で届きました。とてもうれしく、今でも大切に取ってあります。

(山田)記事にしてくれてありがとう、ということですね。

(川内)それから最初の赴任地である伊豆の大仁支局での“デビュー原稿”は、土肥郵便局が海辺に開いた臨時出張所の「貝がら郵便」でした。職員が地元の海岸で拾ったアワビの貝殻の中に手紙を入れてその場で差し出すことができるというものです。

35年も前の話ですが、この話を「時論」で書いたところ、何と当時の土肥郵便局長から「記事を読みました」とはがきが届きました。郵便収入をアップさせるために全職員からアイデアを募り、この「貝がら郵便」にたどり着いたとのことです。私も返事を書きましたが、記者冥利に尽きる出来事でうれしくなりました。

(山田)「貝がら郵便」はすてき。当時の局長からのはがきは、いい話だな。

選択肢としての価値は十分ある

(川内)メールやSNSは手軽ですが、紙媒体だからこそ届く思いがあると実感します。手書きの言葉ならなおさらでしょう。デジタルの時代だからこそ、その温かみや個性が意味を持つのではないでしょうか。年賀状は、選択肢としての価値は十分にあると感じます。

(山田)リスナーの皆さんもすごく反応してくれていますね。「どんな切手を貼るか選ぶのが楽しい」、「年賀状がついに一通も来なくなりました」などの声が届いています。

(川内)やめるか続けるか、悩んでいる人が多いのかもしれません。

(山田)1枚1枚を手に取って相手の顔を思い浮かべると、本当に心が温かくなりますね。年賀状の魅力も良く分かりました。今日の勉強はこれでおしまい!

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