藤山寛美の当たり役で総選挙1位の「人生双六」も上演、元OSK日本歌劇団の洋あおいがゲスト出演の『11月松竹新喜劇公演』開幕
11月16日(土)に大阪松竹座にて『11月松竹新喜劇公演』が開幕した。オフィシャルレポートが到着したので紹介する。
昨年より劇団の中心となった、藤山扇治郎、渋谷天笑、曽我廼家一蝶、曽我廼家いろは、曽我廼家桃太郎、そして松竹新喜劇公演には初のゲスト出演となる、元OSK日本歌劇団男役トップスターの洋あおいがゲスト出演している同公演。2024年は5月以来2度目の大阪松竹座での新喜劇公演で、今回はどちらも茂林寺文福・舘直志の合作による「砂糖壺」と「人生双六」の二本立てで上演する。
一本目の「砂糖壺」は、落語「芝浜」の松竹新喜劇版とも称され、昭和56(1981)年9月中座以来43年ぶりの上演です。わかぎゑふを演出に迎え、今回の配役に合わせて、初演からの放蕩息子と息子思いの母親という設定を入れ替えてご覧いただきます。
不器用で慣れない商いをする心優しい息子の庄太郎を演じるのは、藤山扇治郎。そして、仕事をせず遊びまわる傍若無人な母親・洋子役をゲストの洋あおいが演じます。ある日、洋子が拾ってきた大金をめぐり繰り広げられる親子の会話の場面では、初日から息のあった掛け合いを見せた二人。最後は庄太郎が母親のために思いついた妙案で、二人の運命が大きく変わるのでした。歌と踊りも織り交ぜてエネルギッシュな母親役を熱演した洋と、親を思う優しさをにじませた扇治郎に、幕がおりると客席からは熱い拍手が送られました。
11月16日はゲストの洋あおいの誕生日。初日の「砂糖壺」終演後、サプライズバースデーカーテンコールが行われ、「砂糖壺」の出演者と客席で、洋の誕生日を祝いました!
二本目の「人生双六」は、昭和13(1938)年に初演され、その後藤山寛美をはじめ度々上演されてきた名作です。5 月に初めての試みとして「松竹新喜劇 演目総選挙」を実施し、候補作品10本のなかから堂々の第一位となった松竹新喜劇の人気作品で、今回は藤山寛美のもとで修業を積み、宇田信吉役も演じてきた、劇団員の曽我廼家八十吉がはじめて演出を担当します。
大阪に出てきたものの、就職先は倒産、持ち金も尽きて路頭に迷う宇田信吉役を曽我廼家一蝶が、また、同じく失業で悩む浜本啓一役を渋谷天笑が勤めます。お互いの幸せを祈り、5 年後に再会を約束した二人。一蝶は、歴代の名優が演じてきた宇田の人柄の良さや役の心根を見事に表現し、時に客席からも笑いがあふれます。天笑も、劇団きっての若手二枚目らしく、後半はすっきりとした人の良い浜本を熱演、さらに、浜本の妻真砂子を曽我廼家いろはが情感豊かに演じ、劇団の大切な演目を継承していく心意気を見せつけました。
時に笑い、時に涙し、最後は温かい気持ちになる。二演目ともに松竹新喜劇らしい心温まる人情喜劇で、客席も賑やかな雰囲気のなか、初日の幕がおりました。
『11月松竹新喜劇公演』は、11月24日(日)まで大阪松竹座にて上演。