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【やまとさんの湯湯自適の記】#3 鯰温泉(富山市四方地区)連載とやまのおふろ

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【やまとさんの湯湯自適の記】#3 鯰温泉(富山市四方地区)連載とやまのおふろ

この連載は、富山県公衆浴場業生活衛生同業組合が行ったスタンプラリーで全45軒を制覇し、「富山銭湯マイスター」の称号を手にした会社員「やまとさん」が、日々の銭湯めぐりや強く惹かれた入浴体験をつづる不定期連載のコラムです。

#3 鯰温泉

銭湯には、大きくわけて2つの楽しみ方がある。

適温、あるいはぬる湯でリラックスという楽しみ方。そして、熱いお湯にグッと浸かって、湯上りの爽やかさを楽しむというスタイルだ。

この日は後者、「強い風呂」に浸かりたい気分だった。

 

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仕事終わり。国道8号を跨いで、車を北に走らせる。富山湾に近い田園地帯のなかにあるのが、「鯰温泉(なまずおんせん)」だ。

近くの四方漁港から直送される新鮮な魚料理を楽しめる温泉宿だが、日帰り入浴も可能で、地元の人たちに親しまれている。特徴的な屋号は、この地に昔、5匹の白ナマズが棲む泉があったことに由来する。当時から薬の水として、人々や動物の身体を癒やしていたらしい。

 

そんな鯰温泉の特徴は、なんといっても内風呂の「鉄泉湯」だろう。唯一無二の赤褐色の湯は、やはりほのかに鉄の匂いがする。壁に掛けられた効能の表には、筋肉痛、間接痛、疲労回復などなど…。この見た目と香り、説得力がある。
ひと通り身体を洗い、早速浸かると、熱めの温度も相まって、湯に力強さを感じる。熱い湯には耐性があるほうだと思っているが、これは長湯するタイプのものではない。しっかり肩まで浸かり、おそらく1分ちょっと。これだけ浸かればもう十分だ。

 

火照る身体の水気をとり、すぐさまサウナに入る。

サウナ室は最大収容3人程度のコンパクトな造り。壁には白木が立てかけられ、丸窓からは脱衣場を窺い見ることができる。なんだか海賊船のような趣きに感じるのは、私だけだろうか。
砂時計はおそらく5分計だが、砂の落ちていく様子がいつにも増してゆっくりと感じられるほど、しっかり熱い。ましてや先の鉄泉湯で、短いながらも身体はしっかり「下茹で」されている。身体の芯から汗を絞り取られるような感覚……熱さに耐えることもまたサウナの醍醐味ではあるが、なかなかに効いた5分間であった。


砂が落ちきったのをしっかりと見届け、サウナ室の扉を開ける。

この鯰温泉には水風呂がない。いや、鯰温泉に限らず、長年営業を続ける銭湯において、実はこういうパターンはよくある。「ととのい」を求める近年のサウナブームから入った身、最初は寂しいところもあったが、“マイスター”の今となってはなんてことない。

 

頭から冷水シャワーを被り、露天風呂スペースの岩場に腰掛ける。水気を切ったはずなのに、後から後から滴り落ちてくる大量の汗…そういえば、肩で息をしている。鉄泉湯の温熱作用と熱々のサウナが生み出す心地よい疲労感。時にサウナはスポーツなのかもしれない。

しばらくすると、露天風呂に注ぐ湯の音に気付いて、はっと我に返る。ようやく身体が落ち着いたのだろう。それにしても心地よい音だ。ずっとここにいたい、とさえ思う。

 

身体も心も十分に満たされたが、せっかくなのでサウナと水シャワーをもう1セット、そして最後はやはり鉄泉湯でシメた。

 

ーーー

 

脱衣場では地元の紳士たちが会話に花を咲かせていた。


「孫が元気すぎて、風呂の世話が大変」

「ここ来てゆっくり風呂浸かるんが楽しみやちゃ」

 

和むものがあった。


湯上がり、扇風機の風にあたりながらスマートフォンを取り出してみる。シメの湯が効いたのか、まだ汗はひきそうにない。遠くのほうから風にのって漂ってきた蚊取り線香の香りでまた尻が重くなる。残暑はいつまで続くのだろうか。

【鯰温泉】
住所 富山県富山市今市3339
営業時間 日帰り温泉 10:00~21:00
定休日 第1月曜・第1火曜、第3水曜、月1回不定休あり

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