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【子どもの居場所】食事や学習、遊びをサポートする施設が県内に300カ所超の過去最多に。その背景は?運営側の課題とは!?

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「子どもの居場所」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年11月26日放送)

(山田)今日は「子どもの居場所」についてです。子ども食堂とか遊ぶ施設とか、そういうところですか。

(橋本)そうですね。今回取り上げる「子どもの居場所」は、無償あるいは低額で食事を提供する子ども食堂、学習支援施設、遊び場を提供する施設などを指します。

県が、県内の市町や社会福祉協議会を通じて毎年調査をしているそうですが、今年9月1日現在で、活動実績が実際にある県内の「子どもの居場所」が301カ所に上ったということです。2年前から1.5倍に増え、過去最多を更新しました。

このうち7割にあたる223カ所が子ども食堂です。ただ、こうした施設は届け出義務があるわけではないので、自治体が把握していないけれど活動しているというところもあるかもしれません。実態としてはもっと多いのかなと考えられます。

(山田)僕、娘が今3歳なので、子ども食堂は利用したことがないですけど、遊べる施設はよく行きますね。無料でNPOなどがやってる施設は、静岡でも増えてきてるなと実感します。2年で1.5倍って結構すごいですよね。

(橋本)そうですね。この調査を始めたのが2017年だそうですが、その年は29カ所に過ぎなかったそうです。約7年で10倍以上ということになるので、活動が広がっているということだと思います。

21年に100カ所を突破して、22年は201カ所で、この1年間で2倍に増えたということです。23年は258カ所ということで、順調に右肩上がりで増えているそうです。運営主体になっているのはNPO法人や社会福祉法人だけでなく、企業、個人でやっているところもあるということで、幅広いですね。

「社会の宝である子どもたちのために何かしたい」と考えている人は県内にたくさんいると思うんです。でも、実際に行動に移すのはなかなか大変ですから、これだけ多くの組織や個人が行動を起こしているのは素晴らしいなと思いますね。

背景に地域のつながりの希薄化

(山田)すごく良いニュースだなと思う一方、世の中は少子化ですよね。そこで子どもの居場所が増えてるっていうのは、背景に何があるんですか。

(橋本)言われているのが、一つは地域の繋がりが薄くなっているということだと思います。少子化で子ども同士の育ち合い・学び合いの機会が少なくなっていると感じます。自分の子どもの頃を思い出すと、しょっちゅう友達の家に遊びに行ったりしましたが、今はそういうことがなかなか難しくなっているようです。社会の結びつきが薄くなっていることが一つ背景にあると思います。

(山田)少子化だからこそ増えてるっていうのも、あるかもしれませんね。

(橋本)さらに、近年問題になっている子供の貧困も背景にあるのかなと思います。厚労省の調査だと、貧困率は2022年に16.3%でピークだったんですが、6人に1人が貧困ということです。社会問題として認識されるようになりました。

貧困率はそれからだんだん低下していると言われていて、雇用状況が改善され、最近で言うと賃金がちょっと上がったこともあると思うんですが、21年は11.5%という数字が出てました。以前よりは貧困率が低くなったけれど、まだ完全に解消されたわけではないので、このことが背景にあるとも考えられます。

そうした中で、国も「全ての子どもが安全で安心して過ごせる多くの居場所を持ちながら多様な体験活動や外遊びの機会に接し、幸せな状態で成長できるようにすることが重要だ」という理念のもとに、昨年、「子どもの居場所づくりに関する指針」というのを閣議決定して、支援する方針を打ち出しています。

(山田)そういう指針があるわけですね。

(橋本)静岡県も、本年度中に新たに策定する静岡県子ども計画に子どもの居場所づくりについて盛り込むことになっています。社会の変化、実情を踏まえて、国全体で取り組むべき課題となっていると言えます。

活動資金の確保が大変!

(山田)今後もっとこの活動の幅を広げていくために、課題はあったりするんですかね。

(橋本)冒頭で紹介した県の調査で、運営面の課題についても一緒にアンケートしています。複数回答で最も多かったのが「活動資金の確保」で全体の55%。次いで「ボランティアなどのスタッフの確保」も47%と半数近くが挙げてます。

「参加者の確保」が35%、「食材などの物資の確保」が34%と続きました。他に、最近増えている、外国にルーツのある子どもの保護者にどうアプローチしていくかが分からないとか、要支援児童とどういうふうに関わったらいいかが難しいというような課題を挙げたところもありました

(山田)静岡県は特に外国人の方も多く住んでいますから、このあたりは県としても課題かもしれないですね。

(橋本)また、全体の61%の施設が「物価高騰の影響があった」と答えたということです。最近の物価高騰が運営を圧迫しているという実情がうかがえると思います。

県全体で子どもの居場所が300カ所というと多いようにも思いますが、市町別に見ると、多い方から静岡市59カ所、浜松市32カ所、沼津市24カ所などとなって、やっぱり上に来るのは都市部なんですよね。都市部に集中している一方で、一カ所もない市町も伊豆地域に4市町あるそうです。

11月21日付の静岡新聞の記事には静岡県こども家庭課のコメントが載っていますが、「子どもたちに家庭や学校以外の第三の居場所を提供するためにも、小学校区に一つは設置されることが望ましい」ということです。そのレベルに上げるためには、もう少し時間と関係者の努力が必要だと言えると思います。

(山田)単純に公園にも遊具が少なくなってきたりとか、そうしたこともいろいろ影響がしてるかなと思います。まだまだ地域差もあるということで、いろんな課題がありますし、支援が必要ですね。

(橋本)国や自治体、民間の財団などが補助制度を様々設けてたりするのですが、アンケート結果を見ると、十分行き渡ってるわけではないなと感じます。すべての施設が対象になるわけではないので、新たな補助制度の創設や拡充が必要かもしれません。あわせて、活動に関わる人材の確保や育成、活動する団体や個人を支援する団体へのサポートも必要です。

また、活動の質の向上についても考える必要があります。全部自由にやってしまうと、質が担保されないところがある。どういうふうに整備し、子どもたちの環境を向上させていくのかが課題になるのかなと思いますね。公助と共助をうまく組み合わせて改善を図り、課題を解決していくことが必要だと思います。

(山田)昔みたいに近所づきあいとか、町内の子ども会が確立していたら、ある意味こういう施設ってそんなに多くなくてもいいのかもしれませんね。それが薄れてくるのは仕方ないことですが、そこに対してどう周りがサポートできるかってところですよね。今日の勉強はこれでおしまい!

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