75年の歴史に幕…富山で愛されたかき氷とアイスクリーム【太田屋】
大盛りでふわっとしたかき氷に、パリパリもなかの自家製アイスクリーム。
昔ながらの素朴な味で愛されてきた富山の名店「太田屋」が、惜しまれつつも75年の歴史に幕を下ろします。
最終営業日は、2024年9月23日(月・振休)です。
愛されて75年…かき氷とアイスクリームの名店
「太田屋」があるのは、富山市太郎丸本町。県立富山高校のすぐそばで、夏だけ営業してきました。
「こんなに愛されてきたのかと、ありがたいのひと言です」
こう話すのは2代目店主の太田由美子さん。夫の晏昇(やすのり)さんと2人3脚で31年間、店を切り盛りしてきました。
「妻に叱られながら…『どうもすみません』ばかり言ってきました(笑)」(晏昇さん)
「『どうもすみません』が上等で(笑)」(由美子さん)
ふたりが見せる軽快なやりとりも店の名物です。
太田屋のモットーは「安くておいしい」。
カキ氷は390円からで、ソフトクリームは300円。夏の営業時期は地元の高校生や常連客でいつもにぎわってきました。
ふわふわのかき氷に自家製アイスクリーム
客の8割以上が注文する「宇治金時」
客の8割以上が注文するというのが「ミルククリーム宇治金時」。
宇治の抹茶を使った店定番のかき氷で、器からはみ出すほどのボリューム感です。
器の底にはたっぷりの小豆と抹茶のシロップ。
抹茶は色や香りが落ちないよう、注文を受けてから点てているそう。
透明度の高い氷を、ふわふわとシャリシャリのちょうど中間になるように温度を管理して削り出していきます。
自家製のアイスクリームと抹茶のシロップを加え、さらに氷を追加。
アイスクリームのまろやかな甘さに、抹茶の豊かな香り、そして底から掘り出す金時。
夏の暑さで疲れた体に染み入るような味で、「このお店で宇治金時を食べたら、よそでは食べられなくなった…!」というファンもいるほどです。
パリパリもなかに入った自家製アイスクリーム
太田屋のもうひとつの定番がアイスクリーム。
パリパリのもなかに自家製アイスが入った素朴な姿ですが、太田屋の特徴はアイスが2個入りのビッグサイズなこと。バニラだけ、抹茶だけ、2つを組み合わせて…と好みで選べます。大きすぎるという方には、もなかを半分にカットした1個入りもありますよ。
昔から変わらない味で、10個、20個と大量に買っていく人も多いそう。
低温殺菌牛乳と生卵を使った自家製のアイスは、由美子さんの父・豊信さんが生み出しました。
「父が『どうしてこの味が認められないのかな…』とポツリとこぼしていたひと言が頭から抜けなくて…」
由美子さんは、そんな父の言葉をきっかけに店を継ぐことを決意したと言います。
「よし、じゃあ私がみんなに安くておいしいものを、体にいいものをやろうと思って、2~3年のつもりで(店を継いで)始めたんですが、そこから31年。お客さんが育ててくれたおかげで31年も続いたこと、感謝しかありません」(由美子さん)
80歳を節目に…惜しまれつつも閉店へ
地元の常連客や高校生たちに長く愛される太田屋ですが、由美子さんが80歳を迎えるのを節目に閉店を決めました。
知らせを聞きつけた客で店は連日の大盛況、かつて通い詰めた富山高校の卒業生たちも店を訪ねて太田さん夫妻を労っています。
宇治金時を頬張るマダムは「幸せな気持ちになる味。旦那とケンカしたらここに飛んできて、帰る時には忘れてるの(笑)」と笑顔を見せ、仕事合間の休憩に寄ったと思われる男性は「ストレスが溜まりそうな時も、ここに来ると気持ちが晴れやかになる」と話してくれました。
店には客から送られた手紙やイラストが所狭しと飾られ、太田屋がいかに愛されてきたのかが伺えます。
「あたたかいお客様に、太田屋をここまで育てていただいたんだとつくづく感無量です」と由美子さん。
「先代から75年間、つつがなく終えられたというのがホッとした気持ち。またちょっとさみしいような気もします」(晏昇さん)
最終営業日はいよいよ今週末、2024年9月23日(月・振休)です。
出典:KNBテレビ「いっちゃんKNB」
2024年9月19日放送
記事編集:nan-nan編集部
【太田屋】
住所 富山県富山市太郎丸本町4丁目7-5
営業時間 10:00~18:30
定休日 なし(夏季のみ営業)