“福箕発祥の地”宝塚西谷から約140年間「福」をつくり、とどける『エビスシマダ』の工房を見学 宝塚市
本来は農具である「箕」にえべっさんのお面や大判小判などで華やかに装飾された縁起もの「福箕(ふくみ)」。十日えびすなどでずらりと並んでいるのを皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。
実はこの「福箕」の発祥地は、宝塚の西谷地区。江戸時代から箕の生産地として知られていた同地区ですが、農業だけでは生活が成り立たなかったための余業でもありました。明治時代に考案された「福箕」は実用品としてではなく縁起ものとして人気となり地域の経済を押し上げる原動力となったのだそう。
「福箕」考案の中心人物だった島田小太郎氏が創業して以来約140年。伝統の技を受け継ぎ、今も福箕をはじめとする縁起ものを作り続ける『株式会社エビスシマダ』(宝塚市)の面工房を見学に行ってきました。
工房に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、ずらりと並ぶえべっさんのお面。
お面は全て自社で手作りされており、滋賀県信楽の粘土を天日干ししてから約10時間かけて窯で素焼きして作られるのだそう。
焼き上がったお面は肌色の下地塗された後に本塗りされます。
熟練の技を要する本塗の作業はパートごとに分担されます。
墨で目や髭、眉を一気に描き上げ、唇に朱を挿す。1つ1つ手塗りされるので全てオンリー1です。
別の部屋では「宝船」が作られていましたがこちらも1点1点丁寧に手作業で組み立てられていました。
"福をすくう"という意味で考案された「福箕」から始まり、"福をかき寄せる"「熊手」、"ますます福が増す"「福升」、"船出を祝う"「宝船」などいろいろな種類の縁起ものが作られており、なんと年間10万個以上が製造され全国の神社や業者に出荷されるのだそう。
工房のすぐそばには展示場もあり、多くの種類の実物を見ることもできました。
また同社では"縁起ものをもっと身近に、暮らしのなかに"とのコンセプトで、家庭でも気軽に飾りやすいコンパクトなデザインの縁起ものも製造。オンラインショップでの販売も行っています。
心なごむ、和モダンなデザインは開店、開業や就任のお祝いとしての贈り物や家内安全や学業成就のお守りとしてなど、"福を願う気持ちが詰まった福を呼ぶインテリア"として人気なのだそう。
やさしい表情にほっこりとさせられるえべっさんをはじめ「福」や「富」を象徴するような華やかな飾りで人々に前向きな気持ちや向上心を与える縁起もの。
宝塚・西谷の地から140年以上にわたり「福」と「笑顔」を全国に届け続ける同社の工房を見学し、なんだかとても温かくて幸せな気持ちになった筆者でした。
場所
株式会社 エビスシマダ
(宝塚市大原野北宮本11)
問い合わせ
0797-91-0044