スポーツ支援を通じて会社に『疾走感』と『躍動感』を|創業150周年を迎える品川リフラトリーズがスポーツ支援を行う理由とは
2025年に創業150周年となる品川リフラクトリーズ株式会社。“耐火物”を中心に、日本の素材産業を長きにわたり支えてきた企業は、2023年からスポーツへの支援をスタートしました。
素材を作る、さらにその手前で必要な会社である品川リフラクトリーズが、改めてスポーツを通じて地域や、社員に還元したいのはどのようなものなのでしょうか。
主要工場のある岡山県、福島県でそれぞれJリーグ・ファジアーノ岡山、いわきFCのパートナーとなったその理由、ねらいを代表取締役社長の藤原弘之氏に伺います。
感情を揺さぶるスポーツ観戦
ーー藤原社長がスポーツに関心を持つようになったきっかけについて教えてください。
藤原)私の父は社会人野球の選手で、都市対抗野球で準優勝したこともあるピッチャーでした。その影響で、幼少期からスポーツは身近な存在でしたが、運動神経が母譲りだったためかなかなか大成せず、野球・陸上・ラグビーを経験して“する”方のスポーツは高校生まででした。ただ、“みる”ことはとても好きで、今でも自分でスポーツ観戦に足を運んでいます。
ーー藤原社長は、どんなところにスポーツ観戦の魅力を感じているのですか?
藤原)スポーツは“感情を揺さぶる力”を持っています。これまで所属した企業では、パートナーであったJリーグチームを地域の企業みんなで応援しました。J1昇格が目前で叶わず、悔しい思いをしたことを鮮明に覚えています。また、自分が所属していた企業が所有する野球チームが都市対抗野球で優勝した際は、勝ち負け以上に人の心を動かす力を感じました。決勝戦で勝った瞬間、まわりの人たち全員で泣きながら喜んだことをよく覚えています。そんな経験はスポーツ以外ではなかなかできるものではないですよね。
ーースポーツの持つ力をこれまでの経験からも感じているのですね。
藤原)2015年ラグビーワールドカップで日本代表が南アフリカに勝利した試合では、夜中まで興奮して眠れなくなりました。こうした歴史を変える瞬間に立ち会えることもスポーツの醍醐味ですよね。
その中でも、私はチームの中で“黒子”のような役割をしていたり、頭脳的なプレーをしている選手に注目して観るのがとても好きなので、特定のスポーツにこだわらず、さまざまなスポーツを観戦しています。
スポーツ支援による一体感
ーー藤原社長ご自身のスポーツに対する情熱が伝わってきました。2023年からファジアーノ岡山、2024年からいわきFCのパートナーとなりました。会社としてスポーツ支援に取り組む理由について教えてください。
藤原)スポーツ支援には、大きく2つの目的があります。1つ目は地域との関わりです。企業の規模の大小に関わらず、会社や工場があるその地域に影響を与える存在として、地域との関係を大切にすることは欠かせません。そのため、地域の人々に愛され、盛り上がるきっかけを作りたいという思いがあります。地域の方々が喜んでくれるような活動に少しでも貢献できれば、それが企業としての価値にもつながると考えています。
2つ目は、従業員のモチベーションと会社の知名度の向上です。当社はBtoBの分野で事業を展開しており、知名度が高いわけではありませんが、社員の立場から考えると、自分が働く会社の名前が広く認知されることは誇りにつながりますよね。ファジアーノ岡山やいわきFCとのパートナーシップを通じて企業の名前が地域に広まり、社員が自社に誇りを持てる環境を整えることは、組織の活性化にも貢献します。さらに、企業の知名度が向上することで、採用活動にも良い影響をもたらすと考えています。
ーー地域とのつながりという点ではどのような効果を期待されていますか?
藤原)企業が地域に根ざして事業を続けるためには、地域社会との信頼関係を築くことが不可欠だと考えています。ファジアーノ岡山やいわきFCは、地域に根付き、地域住民とともに成長しているクラブです。企業も単なるスポンサーではなく、地域とともに歩む象徴的な存在となることが理想ですし、「強いから応援する」のではなく、成長段階から支え続けることで、喜びや悔しさを共有できるようになります。その積み重ねが、より深い結びつきを生み出し、企業・社員・地域住民にとって大きな価値になると考えています。
ーースポーツ支援を通じて社内にはどのような変化が期待されていますか?
藤原)私は『躍動感』と『疾走感』をキーワードに、社員同士が活発にコミュニケーションを取り、新しいアイデアを生み出す環境を作りたいと考えています。当社の社員には、真面目にコツコツと仕事に取り組む職人気質の文化があるのですが、そのDNAを大切にしながらも、時代の変化に適応し、柔軟に新しい挑戦を続けることが求められています。
こうしたよい方向への変化を生むための1つの手段として、スポーツの力を活用したいと考えています。同じチームを応援することで共通の話題が生まれ、社員同士のコミュニケーションが活性化します。とくに地元チームを応援することは地域貢献にもつながり、企業と地域の結びつきを強めます。スポーツを通じた一体感が、社内の結束力を高め、社員の働きがいにもつながることを期待しています。
会社に『疾走感』と『躍動感』を
ーー品川リフラクトリーズは今年で創業150周年を迎えますが、この節目を藤原社長はどのように捉えていますか?
藤原)当社は150年の歴史の中で、真面目にコツコツと積み重ねる姿勢を大切にしてきました。この姿勢こそが、私たちの強みであり、企業の基盤となっています。しかし環境が大きく、そして加速しながら変化する現代のビジネスにおいては、それだけでは立ち行かなくなる可能性があります。
従来の耐火物事業に依存するだけでなく、新たな市場や顧客層への展開を進める必要に迫られる中で、ビジネスモデルの見直しや仕事の進め方を変えるためには企業風土そのものも変えていかなければなりません。そう考えると、150周年という節目は「ここまでよく頑張った」という回顧にとどまらず、これまでの歩みを総括し、次の150年に向けて企業を進化させるための意識改革の契機にすべきだと考えています。
ーー具体的には何か取り組まれていることはありますか?
藤原)現在、新たな企業理念の策定を進めています。まだ正式に発表できる段階ではありませんが、内容はだいぶ固まりつつあります。例えば、新しいパーパス(志・こころざし)を設定し、「こういう会社になりたい」というビジョンを明確にする。そして、それを実現するためのバリュー(価値観)を定め、仕事を進める上での大切な指針として掲げる予定です。行動規範というとやや堅苦しい表現になりますが、最も重要なのは、このバリューの部分です。企業の組織風土を変え、従業員の行動や思考様式を進化させるために、できるだけ『躍動感』や『疾走感』にあふれたキーワードを組み合わせて策定し、今後、さまざまなミーティングやディスカッションを通じて社員と共有していきたいと考えています。150周年という大きな節目に、このような変革を進めることは非常に意義のあることだと思っています。
また、2025年10月1日には社名の変更も控えており、当社は品川リフラクトリーズから『品川リフラ』という社名になります。こちらは150周年という節目を、先人が築いてきた歴史をこの先100年、150年と繋いでいくためのスタート地点であると考え、未来に向かって成長を続ける企業を目指すための決断です。ステークホルダーにとって、これまでの社名の延長線上で覚えやすく、親しみのある社名を意識しました。さらに、耐火物を意味する「リフラクトリーズ」から、「リフラ」という造語に変更することで、耐火物以外の断熱材事業、先端機材事業、エンジニアリング事業等にも注力していることも表現しています。
ーー『疾走感』と『躍動感』を大切にした組織改革について詳しく教えてください。
藤原)『疾走感』とは、変化のスピードに対応し、機動力を持って行動することです。最初に決めた計画に固執するのではなく、トライアンドエラーを重ねながら、状況に応じて最適な判断を下すことが重要です。一方、『躍動感』とは、社員一人ひとりが主体的に行動し、企業全体が活気を持って挑戦し続けることを意味します。組織内に活発なコミュニケーションが生まれ、それがコラボレーションを促進することで、これまでになかったアイデアが生まれることを目指しています。会社に『疾走感』と『躍動感』を生み出すためにも、スポーツチームの後援を通じて、社員全員が同じチームを応援し、一緒に喜んだり、一緒にがっかりしたり、感情を揺さぶられる体験を共有して、コミュニ―ケーションを活性化できたらいいなと思います。
ーー会社が目指す方向とスポーツ支援の目的が一致しているのは素晴らしいことですね。最後に藤原社長が150周年を迎える品川リフラクトリーズのその先に目指すことを教えてください。
藤原)会社は利益を追求する団体であり、成長のために儲けることは不可欠ですが、長い会社生活の中でお金のことだけを考え続けるのは難しいです。自分の仕事が世の中に役立ち、より良い社会づくりに貢献したいと願うのは自然なことだと考えています。仕事を通じてそうした価値を実現することこそが、お金だけでは得られない、企業で働く喜びの一つです。
そうした喜びを社員一人ひとりが感じるためにも、150周年という節目を機に、『疾走感』と『躍動感』を持った企業改革を進めていきます。この改革には、社員の一体感や地域とのつながりが重要です。ですので今後もスポーツ支援を通して、「同じチームを応援し、喜びや悔しさを分かち合う」という何にも代えがたい価値を皆で体感しながら、企業としてもよい未来に進んでいけたらと思っています。
ーーありがとうございました!
ー