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きのこの栄養成分とうま味が増すシンプルレシピ【明日から使える プロの食材術】

NHK出版デジタルマガジン

きのこの栄養成分とうま味が増すシンプルレシピ【明日から使える プロの食材術】

おいしいだけではなく、栄養たっぷりな食事が大切とわかってはいても、実践するのはなかなか難しいもの。
ですが、食材の栄養やそれがもたらす健康効果の知識があれば、食品を選ぶ目線が変わり、ふだんの食生活がより充実します。

今回は『明日から使える プロの食材術』より、学術博士・栄養士の佐藤秀美さんに、きのこの栄養成分や、栄養を生かす工夫を教えていただきます。
さらに、きのこの個性を最大限まで引き出すプロの技を使ったレシピを、日本料理店店主の林亮平さんにも伺いました。

うま味マシマシ きのこ

うまみたっぷりで、食感も楽しめるきのこ。食物繊維が豊富なのは周知のとおり。
健康をサポートしてくれる特徴的な栄養成分を知れば、さらにきのこが好きになるはず!

教えてくれた人

佐藤秀美(さとう・ひでみ)

学術博士・栄養士。日本獣医生命科学大学客員教授。大学を卒業後、9年間電機メーカーで調理機器の研究開発に従事。その後、お茶の水女子大学大学院修士・博士課程を修了。専門は食物学。複数の大学で教鞭をとるかたわら、専門学校を卒業し、栄養士免許を取得。

しいたけ

加熱すると酵素が活性化し、うまみが格段に強まる

生しいたけは低カロリーかつ食物繊維やビタミンB2、ビタミンB6が豊富に含まれています。一方、干ししいたけは、栄養が濃縮されているうえ、干す過程でビタミンDが増えるので、ビタミンDが豊富です。ビタミンDには骨粗鬆症の予防や免疫機能の調整が期待されています。

生しいたけは冷凍すると栄養の吸収率がアップ

生しいたけは、冷凍すると細胞壁が壊れ、栄養成分が外に出やすくなるため、栄養を効率よくとることができます。冷凍する際は、軸を取ってそのまま保存袋に入れ、冷凍庫へ。使うときは、常温で5分間ほど置くとサクッと切りやすくなります。

きのこのうまみ成分であるグアニル酸は、生の状態では少量しか含まれていませんが、加熱することで酵素が活性化し、しいたけの場合はその量が4〜5倍に増加します。

干ししいたけは「冷蔵庫戻し」が最適

干ししいたけは、保存容器に入れて浸る程度の水を注ぎ、冷蔵庫で一晩じっくり時間をかけて戻しましょう。こうすることで、しいたけの香りがより引き立ち、グアニル酸のうまみも増します。また、しいたけのひだの部分にはうまみ成分を作る酵素があるため、ひだが下になるように水に浸すとよいでしょう。

しめじ

肝臓のケアに役立つオルニチンがしじみの数倍

 しめじは、きのこ類の中でもビタミンB1やカリウム、食物繊維が豊富です。また、オルニチンが多く含まれており、この量はしじみの数倍にもなります。オルニチンは、肝機能のサポートや疲労の軽減が期待できるアミノ酸の一種です。さらに、しめじには、抗がん作用や抗酸化作用、抗アレルギー作用や、血流改善作用などの健康効果が報告されています。

しめじの石づきは逆Vカット

 しめじの石づきを切るときは、まず株を縦半分に割り、それぞれを逆V字にカットしましょう。こうすることで、食べられる外側の部分を無駄に切り落とさずに済み、効率よく使うことができます。

えのきたけ

ビタミンB 群と食物繊維、GABAはきのこ類のなかでもトップクラス

 えのきたけは、ビタミンB群(ナイアシン、ビタミンB1、ビタミンB2、葉酸)や食物繊維、カリウムを豊富に含んでいるのが特徴です。特に、血行促進に役立つナイアシンや、疲労回復に効果的なビタミンB1、貧血予防に欠かせない鉄は、きのこ類の中でもトップの量を誇ります。

 また、えのきたけは、GABAの量がきのこ類の中でも最も多く、リラックス効果やストレス軽減、血圧低下作用が期待できます。

えのきたけは根元だけ切り落とせばOK

 えのきたけは、菌床とおがくずがついている茶色い部分を切り取れば、残りはすべて食べられます。円柱状にぎゅっと固まった部分は、取り分けて冷凍しておくと便利。フライパンでふたをして弱火で焼くと、ホタテのような食感が楽しめます。おすすめはバターしょうゆ焼きです。

エリンギ

美肌に役立つビタミンが豊富。まつたけに似た食感を楽しんで

 エリンギは、ビタミンB2、ナイアシン葉酸、食物繊維、カリウム、ビタミンDが豊富です。特に、「皮膚のビタミン」ともいわれるビタミンB2の量はきのこ類の中でもトップクラス。ビタミンB2とナイアシンは皮膚の健康維持に、食物繊維は肌荒れを引き起こす便秘の予防や改善に役立つため、エリンギには美肌効果が期待できそうです。

 また、シコッとした食感がまつたけに似ているので、まつたけの代わりにエリンギを使って料理も楽しむのもおすすめです。

エリンギは切り方で食感が変わる

 エリンギは縦に繊維が走っているため、切り方を工夫すると異なる食感を楽しむことができます。繊維を断つように「輪切り」にするとやわらかな食感になり、炒め煮や煮ものにぴったり。噛む力が弱い方にもおすすめです。「縦に薄切り」にすると繊維を生かした噛みごたえが出るため、炒めものなどに向いています。また、「斜め切り」は繊維をほどよく断ちつつ長さも残るため、どんな料理にも万能に使えます。

まいたけ

カルシウムの吸収を促進して骨を丈夫するビタミンDが特に豊富

 まいたけには、ビタミンDやナイアシン、葉酸や食物繊維が比較的多く含まれており、特にビタミンDはきのこ類の中では極めて豊富。まいたけ1パック(100g)に含まれるビタミンD量は、しらす干し2/3カップ強に相当します。ビタミンDはカルシウムの吸収を促すことで骨を丈夫にする働きがあります。

まいたけには肉をやわらかくする効果が!

まいたけには、たんぱく質分解酵素が豊富に含まれているため、肉と一緒に漬け込むと、肉が驚くほどやわらかくなります。ただし、長時間漬けすぎると、肉の繊維がくずれすぎて食感が損なわれてしまうので注意してください。牛肉や鶏肉など、ほかの肉でも同様にやわらかく仕上がります。

くわしい作り方は『明日から使える プロの食材術』テキストで!

炒めきのこ レシピ

きのこは炒めて水分を出すと、うまみ増し増しに! アレンジ料理の幅も広がります。

教えてくれた人

林 亮平(はやし・りょうへい)

日本料理店店主。京都の老舗料理店で17年半の修業後、2018年に独立。東京・青山に店を開く。伝統の技を生かしつつ、調理法や食材の組み合わせで新たな和食を追求。出身地である瀬戸内のいりこや柑橘などの食材普及にも取り組む。

きのこは1種類より3種類を合わせると、 いろいろな食感とうまみが味わえます。 そのまま、大根おろしと合わせて食べても!

材料(2人分)

好みのきのこ(*)……300g
●サラダ油・しょうゆ

(*)3種類を組み合わせる。今回はしいたけ、しめじ、えのきたけを使用。

作り方

1 きのこは石づきを除き、食べやすく切る(しいたけは4等分にし、しめじは細かくほぐし、えのきたけは長さを3等分にする)。

2 フライパンにサラダ油大さじ1ときのこを入れてふたをし、弱めの中火にかける。
蒸し炒めできのこの水分を出すとベチャッとせず、仕上がりがきれいです。

3 ときどき軽く混ぜながらきのこから出た水分をとばし、7〜8分間蒸し炒めにする。
炒めるときは、必要以上にきのこに触らないこと。

4 しんなりとしたらふたを外し、しょうゆ大さじ1を回し入れる。サッと炒め合わせ、水分をとばす。
しょうゆは香りを生かすため、仕上げに。
[保存]冷蔵庫で3〜4日間。

「炒めきのこ」 があれば、献立てに困らない! アレンジ料理

 “炒めきのこ”を使った、ある日の献立です。

 ご飯、野菜、豆腐との相性は抜群。ほかにもサッと炒めた豚肉や、卵と合わせてもおいしいです。スープやみそ汁に加えても。味をみて、塩で調えてください。

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■『NHK明日から使える プロの食材術』
■撮影 豊田朋子、福尾美雪
■スタイリング しのざきたかこ
■イラスト 小池ふみ

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