国推奨の「フルーツ1日200g」を1週間試してみた感想 / 値段や手間等の各種負担と、超優秀だったあのフルーツ
少し前に、産経ニュースの「フルーツを「1日200グラム」食べてますか? 国が推奨しても摂取目標に遠く及ばず」という記事がX(Twitter)で目に入った。
国が推奨しているのは知っていたし、まあ健康に良さそうなので正しい推奨な気がするし、しかし実践は難しいだろうというのも何となくわかる感じ。
また、記事に寄せられていた “フルーツは高いから無理だ” という趣旨の意見も、その通りに思える。フルーツなんて20年くらい食ってないけど、高い気が……いや待て。ここまでの納得は全て実践に基づいていない。ちょっと食って試してみるか。
・200g
さて、フルーツを200g食えというのは、しごく真っ当に思える。しかし私は理系なので、「フルーツ200g食えばオッケーっしょ? じゃあミカンの缶詰を200g分食べますね^^」みたいなムーヴには走らない。
世の中何でもそうだが、5時間勉強しろとか、2時間運動しろとか、そういうのは重要な細部を削ぎ落した果てに残る、キャッチーさに全振りした表現なのだ。「フルーツ200g」もそうに違いない。
恐らく「フルーツ200g」で国民に本当にさせたいことは、200gのコモンなフルーツを食べることによって、他の食品では不足しがちな成分を摂取させることにあるのだと思われる。
まずは国の推奨の真意を理解することから始めねばならないだろう。さっそく “フルーツ 200g” でググったところ、農水省と厚生省のHPでそれっぽいものを発見した。
農水省では「毎日くだもの200グラム運動」というものを紹介している。しかし彼らは農水省。
今回は健康に関する話だ。農水省が国民の健康を気に掛けるなんて……そういうこともあるかもしれないが、違和感がある。国民の肉体的な健康は彼らの担当ではない。彼らの仕事は農林漁業水産の健康を考える事で、しかも彼らは公務員だ。
見た感じ、農水省の「毎日くだもの200グラム運動」は、果物の生産者支援的な毛色が強く感じられる。それも重要な事だが、今回においては趣旨が異なるように思える。
本命は厚労省の「21世紀における国民健康づくり運動(通称 健康日本21)」だろう。
掲載されているPDFに目を通したところ、「果物摂取量の改善」という目標が立てられており、目標値は200gであった。これが「フルーツ200g」の出所で間違いない。
厚労省が果物の摂取量を改善させたい理由としては、有意に増加していく高血圧、肥満、2型糖尿病などに対し、果物の摂取は発症リスクの低下との関連性が認められるから……という感じなもよう。
無論、果物の摂取は方針全体の一角でしかなく、野菜の摂取量の増加や、食塩摂取量の減少などと合わせて実現されるべきものとされている。まあ当然の話だな。
さてさて、こうして漠然とした「フルーツ200g」の真意が、昨今の社会問題である生活習慣病対策の一角であるとの裏取りができた。
・お買い物
真意を理解したところで、実際にフルーツを買いに行こう。ということで、適当に埼玉~都内の西友やヤオコーなどをチェックし、特別安くも高くもない所で購入したのがこちら。
選んだ果物は、アボカド、バナナ、黄色いキウイの3種だ! ちゃんと理由はある。まずは値段だ。見回った感じ、どこでも安定して安めなのがこの3種だった。
当初の想定ではリンゴ、ミカン、バナナ辺りだと思っていたのだが、実際に見て回ると、林檎やミカンは高いではないか……! また、沢山売られていた苺も、まあまあ高い。
アボカドは1個90~110円で見かけ、キウイはゼスプリのが1個130~180円くらい。どちらもだいたい2個も食えば200gいきそうな重さ。
また、一般常識として塩分、つまりナトリウムの吸収を抑制するにはカリウムが重要だ。生活習慣病の予防を目的にフルーツを摂取させたいなら、カリウムの含有量は重視せねばならない。
アボカドはフルーツ界でもトップレベルのカリウム量を持っているため、好ましいチョイスだと思われる。キウイは黄色と緑で成分が異なるが、ともにカリウムが豊富。またビタミンCはフルーツ界でトップクラスだ。
なお、バナナは高くも安くもないのが4本入り192円とぶっちぎりの高コスパに思えたが、後に弱点が判明する。
・200g
それでは計量して、食べていこう。手で持った感じでだいたい2キロくらい買って来たので、毎日200g食べ続けても1週間は持つと思われる。
まずはバナナだが……思ったより軽いな。124gか。
続いてアボカド。173g。いい感じだ。
キウイは120g。バナナより軽かったか。
厚労省の推奨は200gなので、だいたいどれでも2個食べれば200g……とはならない。
果物には廃棄率というものがある。文科省によると、バナナの廃棄率は40%、アボカドは30%、黄色いキウイは20%である。
つまり上で量った重さに対し、食べられる量はバナナが60%になり、アボカドは70%になり、そしてキウイは80%になるということ。バナナの弱点とはこれだ。
何となくわかっていたことだが、やはり皮が厚くて重い。素の時点で単価が約50円と最優に思えたが、廃棄率の高さを考えると、200gを達成するには3本ほど食べねばならないことになる。
ちなみに、もっと大きくて重いバナナも売られていたが、当然価格は上がる。4本で380円くらいだった。対してアボカドは2個で余裕の200g越え。キウイも丁度200gくらいになる。
バナナはコスパ最強だが、劇的に安いわけでもなかったようだ。毎日3本はバナナ好きじゃないと厳しい気もするし。今回はバナナとアボカド、キウイとアボカドの組み合わせで1週間食べ続けよう。
・1週間後
ということで、毎日フルーツを200g食べ続けて1週間が経過した。アボカドが何個か残っているが、おおむね計算通りの仕入れだったと思う。
感想を述べると、総合的に最強だったのは、マジでキウイ。今回は黄色を買ったが、緑のはもっと安いためコスパはバナナに迫る。
そして何より、手間がかからない。最初は私も半分に切って、身をスプーンで食べるみたいな意識の高いことをやっていたのだが、まあこれが面倒。
毎日フルーツ200gを実践する最大の敵はコストだと思われたが、実際には手間も強敵だ。フルーツを食べる習慣が皆無な私は、3日目あたりで剥かねば食えないバナナの皮に苛立ちを禁じえなかった。
切らねば食えぬアボカドも同様だ。しかしキウイは洗えば皮ごと食べられる。2日目で切るのが嫌になった私は、以降のキウイを全て皮ごと食べていた。驚異の廃棄率0%である。ヘタ? あの程度、丸のみですよ。
また、これは個人的な好みもあるかもしれないが、バナナは風味が強いため飽きるのが早い。アボカドは主張が控えめな味なので飽きなかったし、キウイは風味が強いのだが、どうも酸味の強いものは飽きにくい気がした。
健康面とかそういう部分については、ぶっちゃけよくわからない。1週間では何が変わるというものでもないのだろう。
こういうのは習慣にして死ぬまで続けるものなのだと思う。ただ、朝起きて、200gのフルーツを朝食として食べる生活というのは、“俺は健康的な食生活を送っているぞ” という自己肯定感の高まりを感じさせるものではあった。
身体面での効果はより長期的にやらねばわからないのだろうが、精神面での効果は1日目から。なおコスト的には、この1週間、毎日帰宅前にスーパーを回ってフルーツの値段をチェックしていたが、都内およびその近郊でやるには、だいたい毎月1万円弱はかかりそう。
やっぱ安くは無いっすね。健康税です。でも長期的には、もしかしたら国民年金よりも老後の生活を豊かにしてくれるかもしれない。健康な体って、かなりの資産なので。
参考リンク:厚労省、農水省、文科省(PDF)
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.