井上尚弥「あと2年くらい」スーパーバンタム級残留宣言、ドヘニー戦は防衛ロードの中休み?
9月3日、有明アリーナで防衛戦
プロボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)が16日、東京都内で会見し、9月3日に有明アリーナで元IBF同級王者で、現WBA6位、WBC8位、IBF7位、WBO2位のテレンス・ジョン・ドヘニー(37=アイルランド)と防衛戦を行うと発表した。
前回5月6日のルイス・ネリ戦後のリング上では、IBF・WBO同級1位サム・グッドマン(オーストラリア)が次期防衛戦の相手候補と紹介されたが、グッドマンは7月10日のチャイノイ・ウォラウト(タイ)戦を優先。今年は9月、12月と3試合行いたい井上陣営は、9月のグッドマン戦をあきらめ、急遽ドヘニーと交渉を進めていた。
アイルランド出身のドヘニーは、現在はオーストラリアを主戦場としており、昨年6月には後楽園ホールで中嶋一輝(大橋)に4回TKO勝ちでWBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座を獲得。10月にも後楽園ホールのリングに上がり、ジャフェスリー・ラミド(アメリカ)に1回TKO勝ちで初防衛した。
さらに今年5月6日には、井上尚弥vsルイス・ネリの前座でブリル・バヨゴス(フィリピン)に4回TKO勝ち。“前科”のあるネリが体重超過を犯した場合、ドヘニーが代役として井上と戦う予定だったが、ネリは無事に計量をパスしたためアンダーカードで東京ドームのリングに上がった。
2018年8月に岩佐亮佑(セレス)からIBFスーパーバンタム級王座を奪い、高橋竜平(横浜光)に11回TKO勝ちで初防衛を果たすなど日本のファンにも馴染みのあるサウスポー。26勝(20KO)4敗の戦績が示す通り、パンチ力もある。
井上尚弥は2017年以来の短い試合間隔
ただ、ドヘニーは昨年3月にグッドマンに判定負けしている上、37歳と高齢。ネリのような変則パンチがなければ、やりにくさも感じない、良くも悪くも正統派のボクサーだ。
会見でも質問が飛んでいたが、井上の対戦相手としては「力不足」を指摘する声がある。前回は東京ドームという大きな舞台で「悪童」ネリと戦った話題性と比較しても、今回は負ける心配も盛り上がる要素も少ないと言わざるを得ない。
井上自身、「この試合を終えて引退するわけでも階級を変えるわけでもないので、楽しみに待っててほしい。あと2年くらい、この階級でやろうと考えているので、今回はドヘニーだったというだけ」とドヘニー戦以降のマッチメイクに期待するよう促した。裏を返せば、今回は“消化試合”であることを認めたとも受け取れる。
世界王者が長期防衛すると、数試合に一度は指名試合があるものの、中には交渉など様々な思惑が絡んで楽な相手を選ぶこともある。特に今のように複数階級制覇が多くない時代は、1本のベルトを長く守ることこそ王者の価値だと考えられていた。ランキングの中から戦う相手を選ぶことは王者の権利であり、自由でもあるため責められることではない。
ただ、井上の場合は常に強い相手を選んで戦ってきた。特にバンタム級に上げてからは、世界王者クラスやトップランカーがほとんど。だからこそ2018年以降は試合間隔を長く取り、年に1試合か2試合しかできなかった。
今回はネリ戦から中4カ月。これはWBOスーパーフライ級王者時代、5月、9月、12月に3試合行った2017年以来の短い間隔だ。多くの防衛戦をこなそうと思えば、ダメージが残らないように楽な相手を挟むことも必要になってくる。
ましてや井上は「あと2年くらい、この階級で戦う」と言った。もし、来年末までにあと5試合くらい防衛戦をするつもりなら、毎回、ドネア初戦のようなハードワークをしていては不可能だろう。本人も「疲れの抜け具合とか感じる部分はある」と20代の頃に比べて加齢による回復力の衰えを認めている。
狙うは「一発も触れさせない」KO勝利
もはや、怖いのは油断だけ。会見では「ドヘニーは試合で実力を発揮する選手。一発は警戒しながら、一発も触れさせないつもり。自分の中では気の抜けない戦い」と自らに言い聞かせるように話した。
一瞬の隙が勝敗を分けることはボクシングの歴史が証明している。ダウン経験のなかったモンスターも、ネリの左フックを浴びて倒れたのだ。何が起こっても決して不思議ではない。
とはいえ、予想をするなら井上の圧倒的有利は不動だ。問われるのは勝ち方。実力が下の相手と戦う場合、平凡な勝ち方では逆に評価を落とすことにもなりかねない。宣言通り、「一発も触れさせない」ノックアウト勝利が期待される。
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記事:SPAIA編集部