Yahoo! JAPAN

唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』 第1回 パドックの見方を伝授

ラブすぽ

唯一無二の馬券師・弥永明郎『伝授』 第1回 パドックの見方を伝授

ラブすぽ編集部が「パドックの見方を教えてほしい」とやってきたから、自分なりのパドックの見方を書いてみる。
世間一般で常識的に言われていることとは違うかもしれないが、反論の連絡などはご容赦願いたい。

パドック解説者がよく言う“気合い”とは?

一般的に“首を使ってテンポ良く歩けている”とか、“気合いが乗っている”と表現をするが、それは俺から言わせれば人間が勝手に、それが気合いだと思っているだけ。
なぜなら、そもそも馬は走りたいのか? 馬は牧場とかで自由に走るのは好きだけど、競馬で走らされるなんて好きではないのが大半。
つるっ首でぐいぐい引っ張って歩いて行けば「気合いが良いですね」とか、歩きながらあくびをしていたら「これはダメですね」とか多くの解説者は言うけれど、それは馬の形であって、決して“気合い”ではないと思っている。
大前提として馬が競馬で走りたくないことを考えたら、気合いが乗っているとはならないはずだ。
あと基本的に俺は、今さら完成された馬体の古馬GⅠのパドックを見てどこがいいとか言っても仕方ないと思っている。4歳にも5歳にもなっている馬を見て何が違うのか? 毛ヅヤが良いとか悪いとか評価するけど、ブラシをかけた毛並みは太陽が出ていればたいがい毛ヅヤだって良く見えるよ。
これが2歳の秋時期の重賞だったら、まだ馬の輪郭がボヤけているから、馬体を見て判断するのは理解できる。
古馬に関しては、もう体ができあがっちゃっていて馬体診断はいらないよ。馬券的にも古馬の重賞は全く興味が持てないね。

固定観念で馬を見ているだけ

気合いと同じように、パドックで一般的に「外々を回っているのが良い」とか言われるが、外を回っているから何なのか? その馬が良い成績をあげる物理的な根拠は何もない。
同様に「皮膚が薄いから走る」というのも固定観念に過ぎない。皮膚が薄い厚いで競走能力は変わるのか? 影響があるとすれば皮膚の問題ではなく、それは内臓の問題で代謝が良いということ。血管が浮いて見えるのも毛色の問題。芦毛は血管なんかわからないし、逆に明るい鹿毛は血管がわかりやすいからそう思ってしまうだけ。そもそも皮膚から何センチで血管があるとか、それほど個体差はないはずだ。
“うるさい面”という表現についても別に馬は喋っていない。“集中している”だって、馬の集中とは何なのか? そんな概念は馬にはない。
それがパドックでの評価として伝統的に言われてきて、記者や専門家と言われる人間たちに刷り込まれているから覆せないだけ。仮に違うとして、なぜ違うのかという根拠も理屈もない。これまで歴代の解説者が言ってきたことを鵜呑みにして、「気合いが乗っている」とか「外を回っているから良い」とコピーした発言をしているだけに過ぎない。
ただし“気配が良い”というのはわかる。それは人間の主観で見た馬の状態に対しての感想だからな。“体調が良さそうだよな”という雰囲気はすごく大事。馬のどこを見れば体調が良いのか判断できるかという明確なポイントなんてものはない。人間だってそうだろ? だから、その感じ方は人それぞれで良いと思う。俺は俺なりの感覚を大事にしている。

感じてほしいのはインスピレーション

ではパドックでは気合いに変わるものとして何を見ればいいのか? 俺はパドックでは“インスピレーション”を感じてほしいと思っている。
たとえば、俺がこのまえインスピレーションを感じたのは京都の芝のレースだった。パドックを見ていて明らかに馬の質が他の馬と違う馬がいた。その馬が「1番人気なのかな?」と思って見ていたら4番人気。これは買おうと思った。
その後もう一度パドックを見て、その馬を負かせる馬がいるかを見た。負かせそうではないけれど、頑張れそうなのが1頭いた。その馬の単勝オッズは10数倍。「じゃあ、両方の馬の単勝を買おう」と思った。単勝の他にも、馬連とワイドも買った。そうしたら、ゴール寸前に人気馬が2着に入ってきたので、買った2頭は1着3着だったけど、ワイドでも1000円以上の配当がついたからOKとした。
俺はいつも最初はレースの情報を見ないでパドックを見る。これはダートの1200mかな?とか芝の2000mくらいかな?とか自分で想像する。その後で距離を見ると「芝の1600m?なんでこの馬がこの条件を使っているんだ?」と思ったりする。
この条件ならこれは抜けているな、勝つなというインスピレーションを感じることが、一週間にいくつかあってそういうレースを買う。
これだけ言うと、相当の相馬眼が必要と思うかもしれないがそんなことはない。
札幌とか新潟とか新馬戦はパドックまで行くのだが、札幌のパドックを見ていると若いカップルがいた。男の方が「この馬いいなぁ」と言っていた。俺は「なるほど。こういうのが良いという感覚もあるんだ」と思った。結局その馬は、全く人気がない中で2着と大穴をあけた。
その馬は別に仕上がっているわけでもなかったけど、そういう人が良いという感覚はその人の持っているモノだから、そういうインスピレーションが一番大事。
読者の皆さんにも、ぜひパドック解説者の言う“気合い”“集中”という言葉に惑わされず、自分のインスピレーションを大事にして、パドックを見てほしいと思う

弥永 明郎


(やなが・あきお)

トラックマン。デイリースポーツ「馬サブロー」の美浦取材班・看板記者。グリーンチャンネル中央競馬中継のパドック解説でもお馴染み。狙った穴馬は決して逃さない「競馬界のゴルゴ13」。業界歴は長く、騎手、厩舎関係者、馬主など人脈も幅広い。

おすすめの記事

新着記事

  1. 目黒線、東横線、田園都市線の車両デザインをリニューアル!導入約20年が経過した車両を対象に 東急電鉄

    鉄道チャンネル
  2. GACKTが語るメディア不信と対抗の覚悟 “抑止力”という言い分にNO

    おたくま経済新聞
  3. 【特集】江戸時代の〝メディア王〟蔦屋重三郎の仕事─消費者の視点で、人々が楽しむもの、面白いものを追い求めた男

    コモレバWEB
  4. 関メディ井戸伸年総監督がポニー日本代表ヘッドコーチ就任、ワールドシリーズ制覇目指す

    SPAIA
  5. 【限界スマホ?】Appleのミニミニスマホ「iPhone SE 2」をいまさら1年間使ってみた!

    ロケットニュース24
  6. ドアの開け方で心がわかる? 富山短大が開発した「心理センサー」の正体

    TBSラジオ
  7. 有田陶器市で出合う…佳子さま愛用イヤリング&路地裏カフェタイム(佐賀県・有田町)【ふるさとWish】

    福岡・九州ジモタイムズWish
  8. トヨタ東京自動車大学校 地域防災で3者から表彰 地元との長年の連携が評価

    タウンニュース
  9. 緑区 WEB写真館を開設 魅力発信へ応募呼び掛け

    タウンニュース
  10. 三ツ池フェスに向け”会談” 末吉、寺尾中生徒が意見交換

    タウンニュース