由加神社本宮「真田紐守り」と「九星おみくじ」~ 地域の伝統工芸品を受け継ぐお守りと、人柄まで占える暦を使ったおみくじ
児島にある由加神社本宮。2000年以上の歴史を持ち、厄除け総本山として県内外から多くの参拝客が訪れる神社です。倉敷市民は初詣で足を運ぶ人も多いのではないでしょうか。
神社に訪れた際に必ず目にするのは、お守りとおみくじ。
2025年、由加神社本宮では新たなお守りの「真田紐守り」が頒布されます。地域の伝統工芸品である真田紐を使用した、こだわりがぎゅっと詰まったお守りです。
2023年から頒布開始した「九星おみくじ」とあわせて紹介します。
由加神社本宮の新しいお守りとおみくじとは
由加神社本宮は、児島地区の由加山にある神社です。
厄除け総本山として知られており、初詣には35万人以上の参拝客が訪れます。
備前焼で作られた鳥居や、厄を吹き込んだ陶器製の玉を投げて割る「厄玉の儀(やくだまのぎ)」、タコの名産地ならではの「タコ神様」など、境内のいたるところに見どころがある神社です。
地域企業とコラボレーションしたお守りや御朱印帳などを頒布しているのも、由加神社本宮の大きな魅力です。
坂本織物と共同制作した「真田紐守り」
2025年から新たに頒布される真田紐守り。児島で真田紐を製造している坂本織物有限会社とコラボレーションして作られたお守りです。
綿花栽培が盛んだった児島では、昔からさまざまな繊維製品や織物が作られ、「せんいのまち」として栄えていきました。真田紐も児島を代表する織物のひとつで、戦国時代の武将・真田幸村が刀の柄に巻いたことから真田紐と名付けられました。世界でもっとも細い織物といわれることもあります。
木綿や絹から作られる真田紐は、非常に伸びにくく丈夫であり、古くは刀の下げ緒や甲冑を身につける時に使用されていたそうです。
真田紐守りの願意(がんい)は、仕事と交通安全の2つが込められています。瀬戸内海や児島のデニムをイメージさせるブルーの糸が使われており、男女ともに手に取りやすいデザインです。
初穂料は1,000円です。
馴染み深い暦を使った「九星おみくじ」
九星おみくじは九星気学に基づいたおみくじで、2023年から頒布がスタートしました。
九星気学とは、古代中国の九星術が由来となっている占いの一種です。生年月日から以下の9種類の星に振り分けられ、その人の性格や運勢、相性、方位の吉凶、家相などがわかります。
・一白水星(いっぱくすいせい)
・二黒土星(じこくどせい)
・三碧木星(さんぺきもくせい)
・四緑木星(しろくもくせい)
・五黄土星(ごおうどせい)
・六白金星(ろっぱくきんせい)
・七赤金星(しちせききんせい)
・八白土星(はっぱくどせい)
・九紫火星(きゅうしかせい)
「一白水星」「五黄土星」と独特な四字熟語に見えますが、1文字ずつ読んでみると、数字・色・星と馴染み深い漢字が組み合わさっているのがわかります。
九星気学は、民間信仰のひとつとして古くから中国で親しまれてきました。いつしか日本の陰陽道(※天文学や暦を使って吉凶を占う技術のこと)に伝わり、それがきっかけとなって民間に広がったと言われています。
九星おみくじは、それぞれの星に基づいた運勢や吉凶、そして各星が持つ性質、ラッキーアイテムやアドバイスまで解説され、内容は盛りだくさん。運勢だけでなく、自分自身の性質まで知れる珍しいおみくじです。
九星おみくじでは立春から翌年の節分までの運勢がわかります。初穂料は300円です。
お正月期間はお守り所で生まれた年月を伝えるとおみくじをゲットできます。
担当者インタビュー
真田紐守りと九星おみくじが生まれた背景について、担当者に話を聞きました。
真田紐守りについて
──制作された経緯と、坂本織物とコラボレーションしたきっかけについて教えてください
これまで由加神社でお出ししていたお守りは、かわいらしいものが多く、主に女性のかたから人気がありました。
「せっかくなら男性のかたでも持ちやすいお守りを考えたい」と思い、以前から繋がりのあった坂本織物様にお声掛けをして制作に入ったんです。
坂本織物様にお声掛けした理由は、由加神社との関わりが長く、相談しやすかったからです。色や模様のことなど、こちらからの要望に柔軟に対応してくださったので感謝しています。
実は以前にも、坂本織物様から持ち掛けていただいて、真田紐のお守りを置いたことがありました。由加山には、真田紐を伝承した真田幸村を称える石碑があるので、そのようなご縁もあったのだと思います。
真田紐は、児島が「せんいのまち」として繁栄するきっかけとなったと聞いております。江戸時代、由加の参道には真田紐が売られて街が活気づき、真田紐の技術が発展したことで繊維産業が栄えたそうです。
──こだわったポイントはありますか?
坂本織物様にご相談した際、「多様な柄を織れますよ」と心強いお返事をいただいたので、由加神社オリジナルの柄を作りたいと思いました。
特に一番時間をかけたのは、色選びです。男女問わず手に取っていただけるような色にしようと、色見本を見ながらああでもないこうでもない……と試行錯誤し、数ヶ月かけてようやく美しい青色にたどり着きました。
また、柄にもこだわっており、汚れが目立ちにくいデザインにしています。
せっかくなら神社と関わりのある柄にしたかったので、神社の袴の色が階級によって白から濃い色に移っていくことから「お守りも白から始まるグラデーションにするのはどうか」と最初に考えたんです。
すると、坂本織物様から「端の色を白くすると汚れが目立つかもしれない」という助言をいただき、両端には汚れが目立ちにくい濃い色を配置しました。また、5色の糸が綺麗なグラデーションに見えるように、太さなどを相談しながら調整し、由加神社オリジナルの柄が完成しました。
ストラップ状なのでオフィスや車のカギなどにも付けやすく、持ち歩きやすいお守りです。
──これまでにも地域企業とコラボレーションをしていますが、どのような気持ちで取り組んでいますか。
一番は、古くから伝承されてきた伝統工芸品を失いたくないという想いがあります。
由加神社では、今回の真田紐守りをはじめ、備前焼で作った美禅守りや、デニム・頒布・畳縁を使った御朱印帳など、県内の特産品とコラボレーションしてきました。
神社が伝統工芸品と関わり続けることで守れる文化があると思いますし、このような取り組みから地域活性に繋げていけたらと考えております。古くから受け継いできた伝統工芸品の技術や文化を、後世に伝えてきたいです。
ちなみに、美禅守りはわざわざ茨城から求めて来てくださるかたがいらっしゃいました。「これだ!」とリアクションされるかたを見ると、「あ、このために来てくださったのだな」とうれしく思いますね。
山の上にある神社なのでお越しになるのも大変だと思うのですが、遠方から来ていただけること、本当にありがたく思っています。
──どんなかたに真田紐お守りをおすすめしたいですか
願意が仕事と交通安全のお守りなので、普段の生活で車などの乗り物を利用されるかたや、仕事の向上・発展、良いご縁につながる様ご祈念しております。
職場の人間関係に悩まれるかたも多くいらっしゃるので、人とのご縁も良い方向に向かうように祈っています。
九星おみくじ
──九星おみくじが生まれた経緯について教えてください
神社にはさまざまなご相談がきます。結婚式の日取りや、お家の家相など、年回りや方位に関するお悩みを持つかたが多くお越しになります。
ご相談の内容は幅広く、地鎮祭や婚礼のような大きな物事から、日々の生活で生まれるお悩みまであるので、誰にとっても参考になるような、身近な存在のおみくじを作りたいと思ったのが最初のきっかけです。
そこで、私たちの生活において切っても切れない関係である暦(こよみ)を使おうと考え、暦で有名な神宮館高島暦様の監修のもと、九星おみくじを作らせていただきました。
その年の運勢はもちろん、星ごとの性質やアドバイスなどが書かれているので、何かを判断する際の参考になればと思います。
──その人の性質までわかるおみくじって珍しいですよね。
そうですね。「自分はこんな性質を持っているんだ」と新たな一面を知れるので、面白みがあるかと思います。
九星おみくじは2023年に始まったばかりで、私たちも「どのような情報がためになるのだろう?」と試行錯誤している段階です。暦の本を読むだけでも、本当にいろいろなことが書かれているので、どこを抜粋してお伝えするべきか悩むこともあります。
──九星おみくじならではの特徴はありますか?
通常のおみくじは運試しの要素が強いと思うのですが、九星おみくじの場合は、アドバイスや星同士の相性など、九星だからこそ占える内容があるのが特徴です。
神社と暦には深い関係があるので、その特徴を生かして皆様のお役に立てるような内容が書かれていると思います。
──2023年から配布をされて、反響やリアクションなどはいかがでしたか
性質、良い月・悪い月、他の星との相性など、内容が充実していて読み応えがあるので喜ばれるかたが非常に多いです。
さまざまな項目が書かれていますが、難しい言葉を使っていないので「読みやすい」「わかりやすい」というお声をいただくことがありました。
生まれた年月さえわかればお出しできるので、ご家族やご友人の分まで頼まれるかたもいらっしゃいます。
読みやすくて面白いおみくじなので、一緒に読んで楽しさを共有していただけたらうれしいですね。
読者へメッセージ
──最後に、読者のかたにメッセージをお願いします。
なにか悩みがある時は、当社に足を運んでいただいて、お気持ちが少しでも楽になったり、気分転換ができるようなお力になれたらと思っております。
職員一同、皆さまのご来宮をお待ちしております。
おわりに
筆者は神奈川からの移住者ですが、地元の神社で伝統工芸品を使ったお守りや御朱印帳を見たことがありません。
今回の取材で、「神社が地域の伝統を守る」という新たな地域活性の手段を知れたので、非常に勉強になりました。コラボレーションした特産品を置くことが、その地域に観光客が来るきっかけにもなっているので、素敵な取り組みだと思います。
九星おみくじは、1年に1回引くのが良いそうです。筆者は神社に参拝する度におみくじを引いていたので、来年こそは1回きりで運勢を占おうと思いました。
由加神社でしか手に入らない真田紐守りと九星おみくじ。新年のお供に手に取ってみてはいかがでしょうか。