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​【テア・ヴィスタンダル監督「アンデッド/愛しき者の不在」】 「生きていてほしい」当たり前の感情に揺さぶり

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は清水町のシネプラザサントムーン、静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで上映中のテア・ヴィスタンダル監督「アンデッド/愛しき者の不在」を題材に。

ノルウェー出身のヴィスタンダル監督が第74回カンヌ国際映画祭で主演女優賞(「わたしは最悪。」)に選ばれたレナーテ・レインスヴェを主演に迎えた静謐なホラー映画。

ノルウェー・オスロの集合住宅に住むアナ(レインスヴェ)は一人息子のエリアスを亡くし、近隣に住む父マーラーともども悲しみに暮れる日々。ある時、エリアスを葬った墓地に出かけたマーラーは真新しい十字架の下から「コツコツ」という音を聞く。思わず墓を掘り起こし、棺を開くマーラー。そこには命を取り戻したエリアスがいた。

映画はエリアス、アナ、マーラーの一家で起きた「蘇生」と並行し、他二つの家族で起こった「蘇生」を描く。喪失の悲嘆が喜びに変わる。「生き返ってくれた」

だが、戻ってきた人たちは以前とどこか違う。目がうつろでまばたきをしないし、口を開かない。一体、彼らは誰なんだ。そこはかとない不安が、じわじわと恐怖そのものに変化していく。「生きていてほしい」「死なないでほしい」という、当たり前と認識していた感情の是非が揺さぶられる。

ノルウェーの森林や水辺、スタイリッシュな住環境をふんだんに写し込む。35フィルムの彩度が低い映像の質感や、極端にせりふが少ない脚本が登場人物への親近感をかき立てる。シネマスコープサイズの横長の画面を採用していて、扉越しの場面がとても多く出てくる。登場人物たちの生活空間をのぞいているような感覚に陥る。

冒頭、十数階建て集合住宅の屋上に置いたカメラがゆっくりオスロ市内の全景を捉える。画面左に湾、穏やかな居住地区を取り囲むように山々が。静岡大から眺めた静岡市内にそっくりだと感じた。

(は)

<DATA>※県内の上映館。1月24日時点
静岡シネ・ギャラリー(静岡市葵区、1月17日~30日)
シネプラザサントムーン(清水町、1月17日~)
シネマイーラ(浜松市中央区、3月7日~20日) 

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