子どもたちの登校見守り32年 塩屋の木村音彦さん
登校中の子どもたちを事故や犯罪から守ろうと、塩屋小学校の通学路交差点で30年以上にわたって朝の立ち番を行ってきた塩屋の木村音彦さん(90)が今年度限りで活動を終了することになった。長年の善行に対し周囲から感謝とねぎらいの声が寄せられている。
木村さんが見守り活動のボランティアを始めたのは会社員だった58歳の頃。不審者に対する不安が世の中で高まる中、「子どもたちに万一のことがあってはいけない」と思い、多くの小学生や中学生が通学する磯浜橋北詰め交差点に立ち始めた。現場は信号のない交差点。2016年に歩行者用の橋梁が増設されるまでは、狭い橋を渡る子どもたちの真横を車がすり抜けるように走り、いつ事故が起きてもおかしくない状況だったという。
午前7時半までには現場に着き、「おはよう」と声を掛けて子どもたちの登校を見届けてから出勤する毎日。当時はPTAによる交通立ち番はまだ行われてなく、「周りから『変わった人』と見られていた」(木村さん)と笑う。2011年から17年まで市自治会連合会長を務めるなど公私とも多忙な日々が続いた中、「子どもの安全を守りたいという思いだけ。やめようと思ったことはまったくない」と振り返る。
「あるとき、もうすぐ卒業する子どもが『おっちゃん、長い間ありがとう』と言うてくれたことがあってね。そのときは感激して涙がポロポロっと落ちましたわ」と木村さん。見守り活動を始めて以来、現場の交差点で子どもが被害に遭う事故や事件が一度も起きなかったことも誇りだ。
「身体は元気ですけど、家族から『もう90なんやから』と言われてね」と木村さん。今学期の修了式がある3月24日が最後の活動日となる。今後は朝の時間は自身の健康維持のウオーキングに充てるつもりだ。「長年の日課がなくなるさびしさもあるけれど、これからは散歩しながら子どもたちの安全と成長を見守りたい」と引き続き子どもたちに温かいまなざしを向ける。