国立西洋美術館『スウェーデン国立美術館 素描コレクション展—ルネサンスからバロックまで』が開催。選りすぐりの名品を日本で初めて本格的に紹介!
『スウェーデン国立美術館 素描コレクション展—ルネサンスからバロックまで』が、2025年7月1日より東京・上野の国立西洋美術館にて行われます。世界有数の規模を誇るスウェーデン国立美術館の素描コレクションが約80点公開されます。
スウェーデン王家が収集した美術品が基盤。スウェーデン国立美術館とは?
ヨーロッパで最も古い美術館の一つとして1792年、スウェーデンの首都・ストックホルムに開館したスウェーデン国立美術館。そのコレクションは、スウェーデン王家が長らく収集した美術品を基盤としていて、1500年から1900年までの絵画、彫刻、素描、版画、さらに中世初期から現代へと至るさまざまな工芸やデザインを所蔵しています。
なかでも同館の素描コレクションは、世界規模でみても質、量ともに充実した最高峰のコレクションとして知られています。
本展ではスウェーデン国立美術館の素描コレクションから、ルネサンスからバロックまでの選りすぐりの名品を約80点公開。同美術館の素描コレクションがこれほどまとまって来日するのは、今回が初めての機会となります。
『スウェーデン国立美術館 素描コレクション展』の各章の見どころ
それでは制作地域ごとに素描の名品を展示する、全4章の見どころを紹介します。
【第1章:イタリア】
イタリアは、ルネサンス、マニエリスム、バロックと燦然と輝く美術の中心地でした。そして第1章の出品作の中にも、イタリアが誇る有名な巨匠たちの作品が複数含まれます。中でも目玉としてあげられるのが、躍動感のある筆致で仕上げられたバロッチの頭部習作や、素描を制作している仲間の画家を描きとめたカラッチの肖像素描です。
このほかにもパルミジャニーノの油彩の代表作《長い首の聖母》と関連づけられる構図習作や、ジョヴァンニ・ダ・ウーディネのかわいらしい雀のスケッチも必見の作品と言えるでしょう。なおジョヴァンニ・ダ・ウーディネの《空飛ぶ雀》については、よく似た空飛ぶ鳥がヴァティカンのロッジアの装飾にも招かれています。
【第2章:フランス】
第2章で最初に展示するのは、パリ南東方フォンテーヌブローの宮廷で活動した画家たちによる舞台衣装のデザインです。
ニコロ・デッラバーテに帰属する《蛙男》には、鱗のようなフリルのついた衣装をつけ、葦笛と蛙の入った網を持って歩く蛙姿の男が描かれています。とても薄気味悪い様子が特徴的ですが、この蛙男はおそらく劇の登場人物(役柄は不明)であり、本作は舞台衣装のデザインと推測されています。
それに続いてロレーヌ地方が輩出したベランジュやカロといった個性あふれる作家たち、またヴーエやル・シュウールなどパリ画壇を率いたフランス・バロックを代表する画家らの作品を紹介します。
さらに本章では、スウェーデン国立美術館の素描コレクションの基礎を築いたニコデムス・テッシンが、自邸の天井装飾のデザインとして制作させた素描もあわせて展示します。ペンや水彩、金泥などを用いて描かれた作品は極めて精緻。デザインのための作品とは思えないほど、画面全体に広がる壮麗な描写に目を奪われることでしょう。
【第3章:ドイツ】
第3章で紹介するのは、16世紀を中心としたドイツ、厳密にはスイス、オーストリアなどを含むドイツ語圏地域にて生まれた作品です。
これらは他の章に比べて数の上ではやや少ないものの、質の面では決して見劣りしないものばかり。中でもグリューネヴァルトとバルドゥング・グリーンがそれぞれ手がけた老人と青年の頭部習作、またデューラーによる若い女性の肖像は注目すべき作品です。
このうちアルブレヒト・デューラーの《三編みの若い女性の肖像》は、メトロポリタン美術館の油彩《聖アンナをともなう聖母子》との関係が指摘されるもの。モデルはデューラーの親族の娘だと推測され、三編みや豪華な髪飾りは当時流行したスタイルだと考えられています。
いずれもドイツ・ルネサンスの代表的画家によって描かれた、大変に見応えのある素描と言えます。
【第4章:ネーデルラント】
現在のベルギー、オランダにあたる地域を指すネーデルラント。17世紀のものを中心として取り上げる本章では、絵画で扱われる主題の幅が広がった当時のネーデルラント美術の傾向を反映して、聖書の物語、 風俗、風景、動物を描いたものなど様々な作例を見ることができます。
レンブラント・ファン・レインの《キリスト捕縛》は、ユダの裏切りにより逮捕されるキリストを描いた作品です。神秘的な光を放つキリストは、十字架上の死という運命を受け入れているかのように穏やかな佇まいを見せています。
この章ではヤン・ブリューゲル(父)やルーベンスのほか、レンブラントの作品を2点紹介。ホルツィウスのチャーミングな自画像や、気持ち良さそうに眠る小犬を細やかに描いたフィッセルの素描も見逃せません。
公式キャラクター「すねこ(愛称:すにゃこ)」も誕生。素描の名品を国立西洋美術館で堪能しよう!
デッサン、ドローイングとも呼ばれる素描とは、木炭やチョーク、ペンなどを用いて対象の輪郭、質感、明暗などを表現した、線描中心の平面作品のこと。その制作の目的は、絵画や彫刻などの構想を練ったり、下絵を制作したり、完成作品の記録をしたりとさまざまです。
また素描はあらゆる造形の基礎となり、素描そのものが完成作品として仕上げられることもあります。作家の手の跡がよりダイレクトに感じられ、制作の試行錯誤の過程や作家独自のこだわりを垣間見られるのも素描の魅力と言えるでしょう。
デューラー、ルーベンス、レンブラントといった美術史に名を連ねる芸術家も、持ち前の技量を生かして数多くの素描を残しました。一方で素描は環境の変化や光、振動の影響を受けやすく、一般的に海外で所蔵されている素描作品を日本で公開することは簡単ではありません。
最後に本展を盛り上げる公式キャラクターをご紹介します。その名は「すねこ(愛称:すにゃこ)です」。「素描(そびょう)」という言葉に、あまり馴染みがない方も多いかもしれません。中には「描」の字を「猫」と読み違えて、「素猫(すねこ)」と読んでしまったことも…?
そこで「素描(そびょう)」に親しみを持っていただくために、公式キャラクター「すねこ(愛称:すにゃこ)」が誕生しました。イラストは読売新聞日曜版の人気漫画「猫ピッチャー」の作者・そにしけんじさんによる描き下ろし。今後はオリジナルグッズなどにも登場します。その活躍にも期待しましょう。
スウェーデンから海をこえてやって来る貴重な素描の名品を通し、まるで巨匠たちの創造の場に立ち会っているような臨場感を本展でぜひ味わってみてください。
展覧会情報
◆『スウェーデン国立美術館 素描コレクション展—ルネサンスからバロックまで』
【場所】国立西洋美術館[東京・上野公園]
【開催期間】2025年7月1日(火)~9月28日(日)
【所在地】東京都台東区上野公園7-7
【アクセス】JR上野駅下車(公園口)徒歩1分、京成電鉄京成上野駅下車徒歩7分、東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅下車徒歩8分。
【開館時間】9:30~17:30
※金・土曜日は20:00まで
※入館は閉館の30分前まで
【休館日】月曜日、7月22日(火)、9月16日(火)。
※7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、8月12日(火)、9月15日(月・祝)、9月22日(月)は開館。
【観覧料】一般2,000(1,800)円、大学生1,300(1,200)円、高校生1,000(900)円、中学生以下無料。
※( )内は前売券。販売期間:発売中〜6月30日(月)
※国立西洋美術館インフォメーションでの販売は一般券のみ6月29日(日)まで
【展覧会HP】https://drawings2025.jp