日本式トローリング漁法『ケンケン』とは? 遊漁船船長に聞いてみたら釣りのヒントが沢山
ケンケン漁というのをご存じだろうか。曳縄ともよばれるこの漁法は、疑似餌を用いた日本式のトローリングで、漁師さんがカツオなどの回遊魚を釣り上げるのに用いている。この釣法の名前を聞いたことや、実際に行われている様子を見かけたことがある人は多いと思う。しかし、どんな釣り方でどんな疑似餌を使うのか知らない人も多いだろう。
そこで、編集部が仕事&趣味の両方でケンケンで魚を釣っている船長に、その実態を聞いてきたので紹介する。
ケンケンについて聞いてみた
さて、今回の聞き取り調査に協力してくれたのが、三重県鳥羽市の石鏡漁港の遊漁船フィッシュハンターの細木船長だ。
細木さんのケンケンとの出会いは当地で遊漁船を開業する以前、知人に声をかけられケンケン漁に出かけたのがきっかけだったという。
ちなみに、三重県熊野灘の冬の代名詞になっているトンジギだが、現在はこのゲームを行う船が増えて情報共有が密に行われるようになったり、ソナーを備えた船も増えて、かなり精度の高い釣りになってきている。しかし、ひと昔前は大海原にいるトンボ(ビンナガ)の群れを探すのに、このケンケンを用いていた。目ぼしい海域でひたすらケンケンを引き、ビンナガが掛かかることで群れを捕捉していたという。
不思議な名前の由来
ケンケンの名前の由来だが、細木さんによると疑似餌として用いるタコベイトが海面で跳躍する様子が、片足でぴょんぴょん跳ねる子供の遊び「ケンケンパ」のように見えることからこう名付けられたという。
ケンケンで釣れる魚
表層から中層で釣れる回遊魚全般。沿岸部ではブリやサワラ、サバなど。外洋ではカツオやビンナガ、キハダなどだ。魚の大きさも1-2kgのものから人間サイズまでと幅広い。
ケンケンの仕掛け
タコベイトの頭にはオモリが(狙い方により適宜着脱する)、足の間からはフラッシャー(繊維状のキラキラしたもの)が出ている。このほか弓ヅノも疑似餌に用いられれる。これをハリスを介して複数本ミチイトに装着し、疑似餌の手前にヒコーキと呼ばれる漁具を装着して表層を、潜航版を装着して中層を引いたりする。
仕掛けの付いたミチイトは、必要な長さを出してアウトリガーと呼ばれる船の両サイドから突き出した巨大な釣りザオのようなものに仮止めし、残りは船内に引き込み船長が管理する。
魚が掛かると仮止めが外れ、船長と魚がミチイトで一直線に繋がる状態になる。あとは腕一本で魚を手繰り寄せるのだが、リールもドラグもないので腕力と勘でイトを手繰ったり送ったりしてやり取りする。
なお、手っ取り早く魚を取り込む必要があるため、ハリスはカツオやビンナガ狙いで40~50号、キハダ狙いでは100号と太い。
ルアーゲームに役立つ話も
以上がケンケンの概要だが、この釣りでは様々な色のタコベイトが用いられ、魚種によって鉄板カラーがあるという。これは間違いなくルアーのカラー選択の参考に活かせそうだ。
本来、こういった情報は漁師さんの間では門外不出なのだが、遊漁船長である細木さんは釣り人のためにと自身のカラー選択術を教えてくれた。
まず、サワラ狙いでは黒やグリーンのタコベイトがよく効くという。また、カツオは白系でこの色が最強とのこと。白系はカツオの好物であるシラスやシロメ(4~5cmまでのイワシの稚魚)のイミテーションになっているのかもしれない。
また、マグロの中はカツオ同様に白系が万能的に効くほか、ビンナガの場合はグリーン系、キハダは赤系が威力を発揮することも多いという。このほか、青物はピンクが定番カラーとのこと。その魚種によって捕食本能を刺激されたり、見えやすい色があるのではないだろうか。ゆえに、プラグやジグ、エビングのワームの色を選択するときに、ひとつの基準として用いてみると良い結果に繋がるかもしれない。
<週刊つりニュース中部版 五井/TSURINEWS編>