イカダのサビキ釣りでアジ爆釣【三重・迫間浦】アオリイカはヤエン&エギングで不発
休日に釣り人で混雑する中、ゆったりと釣りをするのにおすすめなのがイカダだ。乗合もあるが、今はほとんど1組1台の貸切がほとんど。今回はそんなイカダで大型アオリイカから、家族でも楽しめるアジ五目に挑戦してみた。
迫間浦でイカダ釣り
今回釣行したのは、三重県・南伊勢町の迫間浦。リアス式海岸で形成される五ケ所湾の一角で、よほどの悪天候でない限りサオを出せる全天候型の釣り場だ。もちろん大きな波が立つことはなく、船に弱い人でも酔うことはほぼほぼない。
今回お世話になったのは同所の宝成渡船。クロダイのカカリ釣り師なら知らない人はいないほどの老舗渡船店だ。
迫間浦のターゲット
クロダイのカカリ釣りのメッカとして知られ、今でも熱心なファンが通い詰めるフィールドだ。クロダイと合わせて人気なのがアオリイカ。特に3~6月は親イカが産卵のために、迫間浦に大挙して接岸する。
今季は低水温でやや遅れ気味だったが、すでに2kgアップのビッグサイズが出ており、ようやくエンジンがかかってきた感じだ。
釣り方としては人気のエギングのほか、ヤエン釣法も人気だ。掛けバリを仕込んでいないアジを泳がせ、イカが抱いたらミチイトに伝ってヤエンと呼ばれるエレベーター式の掛けバリを落とす。ヤエンがイカに到達したところでアワセを入れると、うまくいけばがっちりハリ掛かりするというわけだ。
そして家族やカップルに人気なのが、アジをメインとした五目釣りだ。春のアオリイカは一発大物狙い、オールオアナッシング的なところもあるが、この五目釣りはボウズの可能性が限りなく低いイチオシの釣り。
釣れるアジも、堤防で釣れるそれよりひと回りもふた回りもいいサイズが釣れることもあり、初めて来た人はその大きさにびっくりする。他にこれからの時期はヘダイやグレ、カワハギなどもターゲットに入ってくるため、釣り方次第でさまざまな魚を狙うことができるのだ。
アオリイカとアジを狙う
さて、釣行したのは4月22日。今回同行してくれたのは、週刊つりニュースAPCの戸松慶輔さん。エリアトラウトや渓流、ヘラ、シーバス、オフショアまでさまざまな釣りをこなすマルチアングラーだ。
事前に打ち合わせた結果、午前中は一発大物を狙ってヤエンとエギングで大型アオリイカ狙い。イカが釣れても釣れなくても、昼からはサビキをメインのアジ五目に切り替えるというものだ。
使用タックル
ここでまず春のアオリイカを狙う際のタックルを説明しよう。エギングの場合は、陸っぱりのものをそのまま流用できる。8ft前後のエギングロッドに、2500番クラスのスピニングリール。ラインはPEライン0.8号に、リーダーはフロロカーボンライン2号1ヒロ。エギは3.5号をメインに3~4号を用意しておく。
ヤエンは3.6~4.5mの磯ザオ2~3号に、リアドラグ式のスピニングリール。めまぐるしくドラグ調整をする釣りなので、圧倒的にリアドラグが有利だ。
ミチイトはフロロカーボンライン1.5号を150~200m巻いておく。その先にチヌバリ2号前後を結ぶだけ。ヤエンを通すので、サルカンやオモリなどは一切付けない。
アジ五目は、これらアオリイカのタックルをそのまま使える。エギングロッドでもいいし。ヤエン用の磯ザオでもいい。ただ取り回しがいいのはエギングロッド。子供や女性に使わせるなら、こちらがお勧めだ。
ヤエン&エギングの二刀流
さて、当日は途中えさきち玉城館で生きアジ20匹を購入した後、午前4時30分に現地に到着。そそくさと荷物を下ろし、船に積み込んでいく。空は今にも泣きだしそうだが、予報では夕方までは持つはず。
ほどなく宝成渡船の羽根船長が到着し、忘れ物がないか確認した後、穏やかな湾内に船を進めていく。クロダイ狙いの1組を下ろした後、前週に1.8kgが出たというイカダに渡してもらう。
2人で手早く荷物を下ろし、「頑張って!」という羽根船長の言葉を受けて、タックルの準備をしていく。今回戸松さんはヤエンとエギングの二刀流で攻める。まずは4.5mの磯ザオにアジを付け、湾口方向に投げ込んでいく。
ヤエンのサオ2本を出した後、3.5号のエギをセットし岸に向けてフルキャスト。風もなく波もないので、着底ははっきり分かる。着底後、エギを2~3回細かくシャクり、その後のフォールをじっくり見せていく。
エギで3投ほどしたところで、戸松さんが沖向きに入れていたヤエンのサオの異変に気づいた。ドラグ音は一切鳴っていない。そっとサオを手に取って聞いてみる戸松さん。すると「抱いてます」。
二刀流は忙しい
ヤエンではイカがアジに抱き着き、そのまま走るとドラグが勢いよく鳴いてラインが出される。このときに大事なのは、ドラグを完全フリーにしておくこと。少しでも抵抗がかかると、イカは違和感をおぼえてアジを離してしまう。
そしてイカダならでは難所がロープだ。イカダには固定するために数本のロープが海底に伸びている。このロープに巻かれたりすると、一巻の終わり。
その対策としてはヤエンを入れる前に、ロープをかわしてしまうこと。イカに違和感を与えないよう、ゆっくりゆっくりロープから引き離し、ラインの角度からロープに巻かないと判断してからヤエンを入れるのだ。
またイカが抱いていなくても、アジが元気に泳ぎ回ってロープに巻いてしまうこともある。なので一定時間おきに、アジがどの位置にいるか確認する必要がある。そう、二刀流は忙しいのだ。
惜しくもヒットならず
戸松さんもその通り、イカをゆっくり誘導していくが、ここで痛恨のミス。ヤエンを用意していなかったのだ。サオをいったん置いて慌ててバッグからヤエンを出し、ミチイトに通して沈めていくが……。アワセを入れると、ガクンと止まったまま動かなくなってしまった。
後は押しても引いてもぴくりも動かず。やってしまった……。泣く泣くミチイトを切り新しいアジを泳がせるが、その後は全くアタリがなくなってしまった。エギングも同様で、時間だけが空しく過ぎていく。
朝バラしたイカが告げ口したのか、他のイカが留守だったのか分からないが、全く反応がないままリミットの正午を迎えてしまった。
五目釣りで手堅くゲット
まずは手堅く釣果を……ということで、ここで五目釣りにチェンジ。エギを外して、6号のサビキ仕掛けをセット。これにアミカゴを付け、アミエビは定番のマルキユーアミ姫だ。独特のにおいがなく手も汚れないのが最大の特徴。また通常のアミエビより粘度が高く途中でバラけることが少ないので、水深のあるイカダにはぴったりだ。
早速仕掛けを下ろしていくと、着底と同時にブルブルッと穂先が震えた。上がってきたのは南蛮漬けサイズの豆アジ。予想より小さいな……と思ったが、ここからイカダ五目の本領発揮だ。
次にヒットした魚は、ギュンギュンサオを絞り込んで走り回る。上がってきたのは、20cmを超えるアジフライサイズ。しかも体高があり、でっぷり肥えている。そうそう、コレが見たかったのだ。
アタリ連発のお祭り騒ぎ
この後も1投1殺でアジが次々上がってくる。サイズは豆~良型までさまざまだが、午前中の修行に比べてなんと楽しいことか。そして途中で乱入してきたのが、イワシの群れ。中層~上層にかけて仕掛けを落とす途中で、じゃんじゃん掛かってくる。
ウルメイワシにカタクチイワシが多いが、これに小サバやマルアジも交じってきた。バケツはあっという間にいっぱいになり、その都度クーラーに移し替えていく。
アオリイカの二刀流も忙しいが、アジ五目はもっと忙しい。これが家族連れなら、お父さんはもう大変。でもきっと子供たちは大喜びするはずだ。戸松さんも「今度娘を連れてこようかなぁ」とつぶやいていた。
午後3時を回ると、イワシや小サバは減って掛かれば20cm級の良型アジばかりという状態に。そして3時間ほどの釣りで、十分すぎる釣果を手にして五目釣りは終了となった。
最後は再びアオリイカ狙い
そして午後4時、ここから終了までは、夕マヅメに期待してアオリイカ再チャレンジだ。生かしておいた数匹のアジを投げ入れ、同時にエギングも再開。
だが……この日はイカの日ではなかったようで、迎えの船が来るまで粘り倒したが、戸松さんのロッドが曲がることはなかった。後で聞くと沖へティップランで出ていた船も軒並み撃沈だったようで、何が原因か分からないがイカにはダメな要素がそろった日だったかもしれない。
今後の迫間裏の展望
今回は不発だったが、迫間浦の春アオリイカはこれからピークを迎える。すでに17日には2.1kg、1.5kg、1kgという釣果が出ているし、20日には1.8kg、1.5kg、1kgが上がっている。決して数は出る時期ではないのでムラはあるが、アオリイカファンにとっては記憶に残る1匹を手にする絶好機だ。
五目釣りは安定して冬まで楽しめるはず。アジを中心にこれからはヘダイも楽しみ。何より場所取りの必要もなく、のんびり家族で気の合う仲間同士で楽しめるプラベート釣り場といってもいいだろう。
足場は良く水面まで近いので、子供連れでも安心して釣行できる。GWはもちろん、酷暑の夏になる前にぜひ一度釣行してほしい。
ただしいくら足場が良くてもライフジャケットの着用は必須。また日中は汗をかくほどの気温になる日もあるので、クーラーの氷と飲料は多めに持参してほしい。
<週刊つりニュース中部版 編集部/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース中部版』2025年5月9日号に掲載された記事を再編集したものになります。