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【秘境旅】完売カプセルトイがどうしても欲しくて「マタギ」の本場・秋田県の阿仁まで行ってきた

ロケットニュース24

きっかけは一体のフィギュアだった。独創的かつ奇天烈なアイテムで知られる「TAMA-KYU(タマキュー)」のカプセルトイ『マタギ』。

詳細は忘れたけれど、去年どこかのカプセルトイ売場で買った。コンプするまでではないが気になる……という商品は「ひとつだけ」と決めて回すことにしていて、その一環だったと思う。

しかし見れば見るほど渋い……。360度どこから見てもかっこいい造形に、迫力あるサイズ感。月日が経つほどに「なんでもっと買っておかなかったんだ」という後悔が湧き上がる。

2024年1月に発売し、好評により9月に再販されたのだが、すでに半年近く経っている。もう売っているとは思えない。そんなとき、ある有力な情報を耳にした。

・カプセルトイを求めて秋田県北部へ……

マタギ文化の中心地として知られる秋田県の阿仁(あに)地域。フィギュア制作時には取材協力したそうで、近辺では「まだ在庫がある」という。

これはもう行くしかない。「メルカリで買えばいいじゃん」というのはわかっているが、それでカプセルトイと呼べるだろうか。次は何が出るのか、総額いくらになるのか、そもそも筐体にターゲットは残っているのか……ギャンブル感にドキドキしながら、自分で回してこそカプセルトイだろう!

阿仁地域は高速道路も新幹線も通っていない山間部で、県庁所在地である秋田市からも離れている。秋田内陸縦貫線というローカル鉄道はあるけれど、基本的にはひたすら車を走らせるしかない。

路面は乾いていたが、両側には雪の壁ができていた。本当に山深い地域で、道を少し外れればそこは「クマの領域」と言われてもすんなり納得できる。

高齢化と後継者不足の危機にあるマタギだが、近年では山暮らしの知恵を継承しようと、若い移住者が増えているそう。漫画『ゴールデンカムイ』の阿仁マタギ、谷垣源次郎も知名度アップに一役買ったのではないだろうか。

カーブも多いので凍結時は大変だろうが、晴天に助けられた。しばらく車を走らせると目的の場所に着いた! ここがカプセルトイ『マタギ』が買えるという……

え、いや、雪の壁で建物が見えない。どこだ。

改めて「道の駅あに・またたび館」だ! 来たぞー!!

普段から、特定のシリーズを狙ってカプセルトイを探すのは非常に難しい。「完売次第、次々に入れ替える」という販売スタイルなうえ、レジを通すわけではないからリアルタイムの在庫管理の仕組みもない。メーカーが公表する取扱店リストでも、スーパーの店先に数台だけ置いてある、なんてケースまでは網羅しない。それが「偶然の出会い」の楽しみでもあるのだが……

果たして『マタギ』はあるのか──

筐体があるだけではダメだ。中身も入っている必要がある。「売り切れ」パネルなんて見たくない──

あったぁぁぁぁ!

2台も設置してあり、中をのぞいてみると在庫も十分ある(2025年2月末現在)。これはコンプも確実だろう。

・TAMA-KYU『マタギ』(全5種/500円)

自宅に1種あるので、欲しいのは残り4種。まずは気負わず適当に回してみる。

最初に出たのは「シロビレ(猟銃)構え」で、まだ持っていないもの! やったね、これは幸先がいい!!

……と思いきや、なんと三連チャン、同じシロビレだった……

「シロビレ構え」は木ベラを支えに銃を構えているポーズで、白い雪のパーツがあるのですぐにわかる。それ以外の服装は全員同じなので、パーツをよ~~~く見ないと差がわからない。「違うの出た!」と喜んだら、家にあるヤツ……

さらにもう一度、家にある「タテ構え」(3体目)を目にしたときには膝から崩れ落ちた。1回500円だから、2000円、3000円があっという間に消えていく。

たとえ在庫切れなどでコンプは無理でも、どうしても欲しい1種がある。全5種のうち「解体」だけが「犬付き」なのだ……! 秋田犬のルーツとされ、自分より大きなクマにも勇敢に立ち向かったというマタギ犬。

欲しい。欲しすぎる……!

出費も4000円を超えようかというとき、これは……

まごうことなきイッヌの顔だぁぁぁぁぁぁぁ!

・戦い終えて

最初から家にあった1種を除き、8ガチャ4000円で4種が揃ってコンプリート。終わってみればなかなか良好な戦果だが、財布も痛い。傷を癒やしたい……

「道の駅あに」からさらに山奥に向かって車で10分、マタギの秘湯「打当(うっとう)温泉」がある。大人600円で日帰り入浴も可能。

身体がシャキッとするような熱いお湯で、しかもまったく湯冷めをしない。そんなに長湯した覚えはないのだが、入浴後の半日くらい「目を開けていられないくらい眠い」という状態に陥った。強烈な効能がありそうだ。

宿泊するとクマ鍋などのマタギ料理や、特区でごく少量だけ製造が許される「幻のどぶろく」が楽しめるのだそう。夜には囲炉裏を囲んで「マタギ語り」が聞ける日も。そしてここにもカプセルトイ『マタギ』の在庫あり(2025年2月末現在)。

併設の「マタギ資料館」は大人200円(宿泊者は無料)で見学できる。5分もあればぐるりと一周できるこぢんまりした資料館だけれど、美しく保存・展示されたマタギ道具は必見。独自の信仰や文化が興味深く、解説文も熟読してしまった。

カプセルトイで再現しているのは、今より少し古い時代のマタギ。展示から、いかに忠実にデザインされたかがわかる。

それもそのはず、企画を手がけたザリガニワークス社や原型師の福元徳宝さんが実際にこの地を訪れ、資料館を運営する「マタギの里観光開発社」が制作協力に名を連ねる。資料館とフィギュア、相乗効果で往時のマタギ猟の様子が浮かび上がってくる。

たとえば槍の先端の金属部に注目。フリーサイズの指輪のように隙間が造形されている。フクロナガサと呼ばれる刃物を、棒などに差し込んで即席の槍にできる工夫だそう。

フィギュアのダブりに落胆する必要はまったくないことがわかった。マタギを特徴づけるのは、シカリ(頭領)の統率のもと集団で行われる「巻き狩り」で、多いときには30人もの大人数で山に入ったという。もっと小規模ではあるが、現代でも巻き狩りは行われている。

「犬がセットだ!」と喜んだのはクマ解体のシーン。令和の現代でもケボカイという儀式で魂を供養して、解体&分配する。先の道の駅ではクマ肉を販売していた。

コンプできた興奮以上に、阿仁エリアの山々の荘厳な空気や、文化を守り伝えようとする気概にやられた。どこに行っても「マタギ」の文字を見ない場所はない。今度は泊まりがけで来て、囲炉裏端で夜を明かしてみたい!

参考リンク:TAMA-KYU公式サイト、道の駅あに、打当温泉マタギの湯
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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