シリコンスプレーは車に使ってはいけない?用途・使い方を整備士が解説
シリコンスプレーはホームセンターなどでも購入ができ、さまざまな用途に使えることから、自宅にあるという方もいらっしゃるでしょう。
車に使ってはいけないということはなく、用途を間違わなければ有効に活用することも可能です。そこで現役の整備士が車へのシリコンスプレーの使い方や注意点を具体的にわかりやすく解説します。
シリコンスプレーは車に使ってはいけない?
シリコンスプレーは車に使ってはいけないということはありません。
シリコンスプレーは潤滑はもちろんのこと、艶出しや防水効果もあります。これらの特徴を理解していれば、問題なく使っていただける箇所やパーツがあります。
シリコンスプレーには大きく分けて「石油系溶剤タイプ」と「無溶剤タイプ」の2つがあります。
石油系溶剤タイプは金属の潤滑などに適していますが、樹脂部品やゴム製品に使うと劣化を早めてしまう可能性があります。
自動車整備の場合には石油系溶剤タイプを使うシチュエーションもありますが、一般ユーザーが車に使う場合には、幅広い素材に使っても問題のない無溶剤タイプを選択するようにしましょう。
この記事では、無溶剤タイプの使用を前提として解説を進めていきます。
シリコンスプレーを使ってはいけない車の箇所
シリコンスプレーを使ってはいけない箇所は、車の電装関連部品やブレーキ関連、窓ガラスなどがあげられます。各主要箇所について解説していきます。とても大切なことなので必ず理解しておいてください。
電装関連部品すべて
シリコンの特性として電気絶縁性に優れている点が挙げられます。
電気で動く部品や、制御しているコンピュータの基盤に万が一、シリコンスプレーがかかってしまうと流れるべきところに電気が流れずに、電装部品が正しく作動しなくなるおそれがあります。
最悪の場合、故障すれば部品の交換をしなければいけません。
ブレーキ関連
シリコンスプレーには潤滑性能があります。ブレーキはブレーキパッドとブレーキローターの摩擦の力を利用して減速する仕組みなので、その面にシリコンスプレーを塗布すると、ブレーキ性能を著しく低下させてしまうリスクがあるので注意しましょう。
ペダル・ステアリング等の操作部品
シリコンスプレーの潤滑性能で滑りやすくなって危険なので、アクセル・ブレーキペダルやステアリングといった運転操作に関わる部品にシリコンスプレーを塗布しないようにしましょう。運転操作のミスにつながるリスクがあります。
窓ガラス
シリコンスプレーには撥水性能があり、シリコン素材のワイパーもあるので、窓ガラスを撥水させるためにシリコンスプレーを使いたいという方もいらっしゃるようです。
しかし専用のケミカル品でない以上、油膜によるガラスのギラつきの原因になったり、逆に窓ガラスに拭きムラができて見映えが悪くなるといったデメリットにつながる可能性があります。
もし塗布してしまったとき、その直後は違和感がなくても、時間の経過と共にガラスが白っぽくなって外が見づらくなるようなこともあります。
キーシリンダー(鍵穴)
キーシリンダーにキーを抜き差しするときに、引っ掛かりがあるような感じを改善しようとして、潤滑のためにシリコンスプレーを塗布してしまいがちですが、これはNGです。
シリコンスプレーの油膜に埃やゴミが付着して、むしろ逆効果となってしまう可能性があります。
シリコンスプレーの車への用途
シリコンスプレーを吹き付けると、以下のような効果があります。
•艶が出る
•防水・撥水するようになる
•動きが滑らかになる
そのため、シリコンスプレーは車に使う場合、パワーウィンドウのメンテナンスや樹脂パーツの艶出し、タイヤの艶出しに有用です。
パワーウィンドウのメンテナンスに有効
パワーウィンドウの開閉時に「キュ〜ッ」というような、ガラスがゴムに擦れる音がしたり、ガラスの開閉スピードが遅くなったときに、メンテナンスとしてシリコンスプレーを活用することができます。
ドアガラスはウェザーストリップというドアの枠に嵌め込まれているゴムモールに沿って上下に動きます。この部分にシリコンスプレーを塗布することで滑りが良くなって、擦れる音(異音)の解消や開閉スピードの改善につながります。
(※ウェザーストリップの劣化が酷かったり、パワーウィンドウモーターが劣化しているなど、他の原因による不具合を除く)
樹脂パーツの艶出し
車には内装・外装などさまざまなところに樹脂パーツが使用されています。
特に外装に使われている樹脂パーツは紫外線等の影響による劣化で、顕著に白く色褪せてしまいます。
新車時は艶もあって黒かった樹脂パーツが劣化すると、一気に車も老化したように見えてしまいます。
そこでシリコンスプレーを塗布することで、そういった樹脂パーツの艶出しの効果を得ることができます。ただし、専用の艶出し剤と比較すると効果や持続性は劣ります。
タイヤの艶出し
タイヤの艶出しのためにシリコンスプレーを代用すること自体は問題ありません。
実際に、タイヤワックスとして販売されている商品の成分を読むと、シリコンの記載があるものがほとんどです。
ただし、安全を考慮してトレッド面(タイヤが路面と接するところ)には決して塗らないでください。
車へのシリコンスプレーの使い方と留意点
シリコンスプレーを車に対して安全に活用できる方法と、留意点について解説します。
樹脂パーツやタイヤの艶出しのために、シリコンスプレーを使うときは、スプレーを直接吹き付けることはおすすめしません。シリコンスプレーはノズルから霧状に散布されるので、不要なところにまで付着する可能性があるためです。
使うときはキレイなウエス(布)に適量吹き付けて、塗布したい箇所をなぞるように伸ばしながらムラのないように塗りつけます。
車にも使えるシリコンスプレーのおすすめ商品
冒頭でも触れましたが、シリコンスプレーには「無溶剤」と「石油系溶剤」の2種類があります。
車に使う場合は塗料やゴム、樹脂などの素材を傷めずに済む「無溶剤タイプ」を選びましょう。
シリコンスプレーを使ってはいけない箇所に塗布したら脱脂剤を
シリコンスプレーの主成分はシリコンオイルです。シリコンスプレーを使ってはいけない箇所に塗布した場合は、脱脂剤を使ってその油分を取り除きます。
脱脂剤は「シリコンオフ」や「シリコンリムーバー」といった商品名で、シリコンスプレーと同じくホームセンター等でも購入が可能です。
ガラスや樹脂パーツ(プラスチック)、ボディに付着したシリコンスプレーを除去するのに有効です。
また、金属パーツに付着したものであれば、「パーツクリーナー」が有効です。
ただし、シリコンスプレーを塗布したことで発生した不具合を解消できる保証はありません。
何かあれば脱脂すれば大丈夫と安心せず養生をおこなうなどして、ブレーキ廻りや電装部品にかからないように注意してください。
整備士のまとめ
用途を理解すればシリコンスプレーを車に使うことは問題ありません。
樹脂やプラスチック部品の艶出しや、パワーウィンドウのメンテナンスに使うのがおすすめです。
ただし艶出し用途はあくまで専用品の代用となるので、持続性が無かったり保護効果が劣ったり、シリコンの油性の被膜によってゴミや汚れが付着しやすくなる可能性のあることを理解しておきましょう。
万が一のときのための脱脂剤も含めて、シリコンスプレーはなにかのときに車以外の用途もあるので、ご自宅に常備しておくと便利でしょつ。
Supervised by 整備士 ヒロ
保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。