【11/22(金)開催】岡山版Project Based Learning研修 ~ 高校教員と地域企業が「答えのない課題」についてアイデアを出しあう交流の場
筆者が高校生だった頃、学校の授業スタイルといえば、先生の書いた板書を写したり、説明を聞くことが基本でした。
授業中についウトウトして、先生に注意されたことがある人もいるのではないでしょうか。
現代の教育現場では、文部科学省からアクティブラーニングという学習方法が推進されています。先生の話を聞く受動的な授業から、参加型の能動的な授業へと変化しているそうです。
11月22日(金)に開催される「岡山版Project Based Learning(プロジェクト ベースド ラーニング)研修」は、アクティブラーニングのひとつである「PBL」を実践するイベントです。高校教員や地域企業が地域課題について話し合い、解決策を探すという、PBLの一連の流れを体験できます。
「岡山版Project Based Learning研修」の開催への想いを取材しました。
「岡山版Project Based Learning研修」とは
「岡山版Project Based Learning研修」は、2024年11月22日(金)に開催される、地域企業と学校関係者の交流イベントです。
令和6年度倉敷市キャリア教育指導者育成事業として、倉敷市が主催しています。
タイトルにもある「ProjectBasedLearning(以下、「PBL」と記載)」は課題解決型学習と呼ばれています。発見した課題についてグループで話し合い、解決策を模索しますが、正解を見つけることが目的ではありません。解決策を考える過程で知識やアイデアを得られ、グループ協議によって協同性や自発性などを高められることがPBLの特徴です。
「岡山版Project Based Learning研修」では、高校教員と地域企業の従業員によってPBLを実践します。
実際にBeLiveプレゼンテーションイベントで最優秀賞を受賞した、倉敷古城池高等学校の例を参考に、同じ探究テーマをディスカッションしていきます。第3回の探求テーマは「フードロス問題」について話し合うそうです。
PBLの一連の流れを通して、考え方のコツや、PBLを指導する際のヒントなどが得られる研修です。
PBLをどのように教えれば良いのか悩んでいる先生や、地域企業と連携してPBLに取り組みたい学校におすすめしたくなる内容でした。
担当者インタビュー
取材に対応してくれたのは、企画・運営を担当した倉敷市労働雇用政策課の岡本華奈(おかもと かな)さんと田邊久美子(たなべ くみこ)さん。
そして、第2回PBL研修に参加した岡山大学3年生の本郷堅大(ほんごう けんた)さんからも参加者目線のお話を聞きました。
──今回のイベントの企画意図と経緯について教えてください。
岡本(敬称略)──
現在、全国の高等学校で「総合的な探究学習の時間」という授業が取り入れられています。生徒みずからが地域課題や社会問題を見つけて研究し、課題解決策を発表するという授業内容です。
そのような授業を通して、生徒が「こういうプロジェクトをやりたい」「この問題を解決したい」と思った時、サポートしてくれるような企業と連携が取れたら理想ですよね。しかし、実際は地域企業と学校のつながりが作りにくいのが現状です。
そこで、地域企業と学校の先生との交流の場を作るために、岡山版Project Based Learning研修が開催されることになりました。
岡山版Project Based Learning研修は、令和6年度倉敷市キャリア教育指導者育成事業のひとつです。事業の目的は、「高校生の主体的な学びとキャリア教育のサポート」をすること。倉敷市としても、高校生が活動しやすい体制を地域をあげてバックアップしていきたいと思っています。
──みなさんも第2回のPBL研修に参加されたそうですが、感想はいかがでしたか?
本郷(敬称略)──
第2回のPBL研修では、「クロダイを活用した地域活性・食文化復活プラン」について話し合いました。
僕の班で出てきたアイデアは、社会人ならではと思える発想が多かったです。クロダイそのものに商品価値を見いだすのではなく、クロダイを取り巻くもの……たとえば、「クロダイから生み出される廃棄物を使って発電に利用する」や「観光資源としてクロダイを活用する」という案が出てきました。
いろいろな職業・業界の参加者がいたので、さまざまな視点で出されるアイデアが聞けて面白かったです。
田邊(敬称略)──
私の班では、探究テーマについてアイデアを出し合うというよりも、「高校生にどのような指示を出せば、主体的に取り組んでもらえるのか」を話し合いました。
たとえば、先輩と同じ探求テーマを後輩が引き継ぐような学校もあります。
すでに決められている探求テーマに対して、生徒に主体的な興味を持ってもらうためには、漁業関係者の話を聞きに行ったり、クロダイが使われている現場へ足を運んだりと、先生がアドバイスして誘導することも大切だと学びました。
私たちは教育現場に直接関わる仕事ではないですが、それでも学ぶことが非常に多い研修でした。個人的には、グループワークの回し方も勉強になりましたね。
岡本──
初めてPBLを体験してみて、「今の高校生たちはこんなにレベルの高いことをやっているんだ」と衝撃を受けました。現在の教育を受けてきた人たちが、数年後に社会に出てくることを想像したら、私たち大人もさらにがんばらなければいけないなと前向きな気持ちになります。
──ハイレベルな研修のように感じられますが、どのような雰囲気でおこなわれましたか?
田邊──
前回は少人数制だったので、参加者同士が話しやすく、意見交換もしやすい雰囲気でした。各班数人程度だったので、お互いの特性などもなんとなく把握しながら話し合いができたかなと思います。
場を回してくださる先生や講師のかたのフォローもあり、非常に話しやすかったです。
岡本──
必ずしもひとりずつアイデアを出さなければならないという雰囲気ではなかったので、私はみなさんの意見を聞いていました。自分が思いつかなくても、出てくる意見を聞くだけで「そのようなアイデアがあるのか」と勉強になりましたね。
──参加するとどのようなメリットがありますか。
田邊──
「どのようにPBLの授業を進行すれば良いのかわからない」という先生にとって、他校のPBLの進め方や考え方を学べる機会になると思います。
第2回の研修では、「先生側でアイデアや解決策を誘導するテクニックが必要だ」という話が挙がりました。実際にPBLを体験することで、新たな発見や得られるテクニックがあったら良いなと思います。
──イベントを通して、倉敷市や高梁川流域の地域にどのような影響を与えたいですか。
岡本──
学校と地域企業がつながることで、高校生が地域企業の魅力を知るきっかけになればうれしいです。
今の時代、若者がどんどん都会に流れていきますが、PBLの授業を通して、高校生のなかに「自分の生まれ育った地域で働く」という選択肢がひとつ生まれたら良いなと思います。
田邊──
PBLのような探究活動をおこなうと、地域のことを自分事として考えられるようになると思います。
地方の若者が都会の大学に進学して、そのまま就職するというパターンは多いですよね。もちろん選択肢のひとつとしてあっても良いのですが、地元のことをよく知らないまま離れていくのは少しもったいなく思うんです。
なので、せめて地元にいる間だけでも、PBLを通して地域に目を向ける機会が増えたらうれしく思います。
──どのような人におすすめしたいですか。
岡本──
ぜひ参加していただきたいのは、PBLの進め方に悩んでいる先生や、地域企業とのネットワークづくりに興味のある先生です。そして、そのような先生がたを支えたいという地域企業のかたにも来ていただきたいです。
地域企業のかたにとっても、採用などで今後なにかに生かせるご縁が生まれるのではないかと思います。
田邊──
地域の課題に興味のあるかたにもおすすめしたいです。教育に直接関わっていない一般のかたでも、新しい視点を得られる場になると思います。
また、今回会場となる古城池高校の先生がたは参加しやすいと思うので、ご都合の合う先生はぜひこの機会に参加していただけるとうれしいです。
本郷──
教育学部の学生にとっても、ためになる場だと思います。
初対面の人たちと、短時間で課題解決策の話し合いをする機会って案外少ないので、多角的な視点に触れられる貴重な機会になりました。
誰かのアイデアを吸収して、さらに良い解決策を提案する。その場ですぐに言語化することは難しいですが、勉強になる機会だと思います。
──読者へメッセージをお願いします。
岡本──
学校の現場は大変多忙な環境だと感じています。日々の授業だけではなく、PBLのような新たな教育も、マニュアルをもとに実行しなければならないので、ご苦労される場面もあると思うんです。
先生がたの負担や不安を少しでも減らせるように、地域全体で教育の現場をサポートしていきたいと思っています。
相談や交流の場にもなると思うので、気になるかたはぜひ足を運んでみてください。
田邊──
なにかの課題を解決する時、人とのつながりや地域のつながりから、解決策が生まれることがあると思います。
今後、思わぬところで役に立つ出会いがあるかもしれないので、地域のかたがたとのつながりを作りたいかたは、ぜひお越しください。
おわりに
恥ずかしながら、筆者は今回取材するまで、PBLの詳しい内容についてあまり知りませんでした。
岡山版Project Based Learning研修は、ハイレベルな話し合いを求められるイメージがありましたが、正解がないゆえに思いついた意見を自由に言えるようでした。主体的に学ぶ体験ができて面白そうです。
教育関係者以外にも、さまざまな業種・職種が参加するため、多角的な視点のアイデアを聞くだけでも勉強になると思います。
学校との交流を通して高校生の学びを支えたい地域企業のかたも、ぜひ足を運んでみてください。
学校の先生たちにとって、岡山版Project Based Learning研修が、少しでも授業のヒントにつながれば良いなと思います。