さよならパルコ~ 小説家・清水晴木「晴れ、ときどき懐う(おもう)」
千葉県習志野市出身、在住の小説家・清水晴木さん。
累計4万部突破の『さよならの向う側』シリーズなど多数の執筆した小説の数々は千葉を舞台にしています。
そんな清水晴木さんが著作と絡めて千葉の思い出をつづります。
清水晴木さん
1988年生まれ。東洋大学社会学部卒。2011年函館イルミナシオン映画祭第15回シナリオ大賞で最終選考に残る。2021年出版の『さよならの向う側』はテレビドラマ化して放送。『分岐駅まほろし』『旅立ちの日に』『17歳のビオトープ』など著作多数。
千葉駅のパルコが無くなった時の小さなショックと比べると、津田沼駅のパルコが無くなった時には大きなショックがあった。
それも建物自体は残るのかと思いきや、急速に取り壊されて更地になっていく姿には悲しさすら覚えた。
思えばこの場所によく来ていたのは、高校3年生の頃だ。
当時、予備校に通っていて、気分転換に訪れるのがこのパルコだった。
2階入口側の喫茶店で時間を過ごして、時には友達とサーティワンでアイスクリームを食べた。
そんな思い出が詰まった津田沼パルコだけれど、2021年に出版され、翌年にはドラマ化した著作の「さよならの向う側」に出てくる千葉のご当地コーヒー、マックスコーヒーを初めて飲んだのはこの場所かもしれない。
少し背伸びをしたくて、予備校での授業後に缶コーヒーデビューをして飲んだ記憶がかすかにあった。やや記憶が定かでないのは、マックスコーヒーの甘い味の記憶があまりにも鮮明だったからだ。
大人のほろ苦コーヒーデビューになるかと思いきや、いつも飲んでるジュースよりも甘いくらいの激甘コーヒーデビューとなった。
それでも今、更地になったパルコ跡を眺めながら飲むと、少しはほろ苦く感じるかもしれない。
思えば通っていた予備校もいつの間にかなくなっていた。
年月を重ねて、あの日の多くのものが姿を消していく。
それでも当時の記憶は色褪せることなく、心の中に残り続けるのだろう。
さよならパルコ。
いや、ありがとうパルコ。
これからも津田沼駅北口の隙間が増えた空を見上げるたびに、在りし日の姿を懐(おも)いたい。