オズボーンのチェックリストとは?発想力のヒントになる考え方や使い方を解説
効率的にアイデアを生み出す手法のひとつである「オズボーンのチェックリスト」。発想の幅を広げ、新たなアイデアを生み出せることから、業務効率化や事業展開、労働環境整備などさまざまなビジネスシーンで役立ちます。
この記事では、オズボーンのチェックリストの概要やメリット、ビジネスにおける活用例などについて解説します。
オズボーンのチェックリストとは
オズボーンのチェックリストは、 事前に用意された項目に沿ってアイデアを出し、創造性を促す発想法で「チェックリスト法」とも呼ばれています 。アイデアを出す手法として広く知られている「ブレインストーミング」の考案者であるアレキサンダー・F・オズボーン氏によって提唱されました。
ブレインストーミングが自由な発想を重視するのに対し、チェックリストは9つの具体的な質問を通じて、体系的にアイデアを導き出す手法です。 具体的には、解決したい課題や目標を明確化し、チェックリストの各項目に対して、関連するアイデアをひとつずつ検討していきます。
どんな場面に適しているか
この手法の特徴は、革新的な発想を生み出すことを第一の目的としていない点です。むしろ、既存の製品やサービス、業務プロセスなどを改善したり、新たな用途を見出したりすることに焦点を当てています。
現状維持ではなく、 よりよい状態を目指したいという考え方に適しており、ビジネスでの業務効率化や改善活動などに有効 です。既存の課題に対して、着実な改善や改良を重ねていくための、実践的な問題解決アプローチといえるでしょう。
オズボーンのチェックリストによる事例
前述のとおり、製造現場で活発に活用されており、実際にこれまでに数々の画期的な製品が誕生しています。代表的なものは以下のとおりです。
スマートフォン:携帯電話とパソコンの技術、および機能を結合して開発された レーダー:コウモリの超音波による獲物探知を応用して開発された ミラーレスカメラ:一眼レフカメラからミラーを縮小することで小型軽量化を実現した
このように、オズボーンのチェックリストは既存技術や製品の改良、新たな製品開発に役立っています。一見すると無関係に見えるもの同士を組み合わせたり、既存の概念を逆転させたりすることで、新たなアイデアが生み出されるのです。
オズボーンのチェックリストの9項目と考え方
オズボーンのチェックリストは、次の9つの要素で構成されています。
転用:ほかの使い道はないか?
応用:似たような製品や過去の事例は何か?
変更:色・形・音・匂い・意味・動きなどを調整できるか?
拡大:大きさや時間、頻度を広げることができるか?
縮小:より小さく、軽く、短縮は可能か?
代用:材料・プロセス・場所・アプローチをほかのものに置き換えられないか?
再配置:各要素や部品、パターン、配置を再編成できるか?
逆転:逆にできるか?役割を逆転させることは可能か? 前後に移動できるか?
結合:組み合わせることができないか?
オズボーンのチェックリストのメリット・デメリット
メリット
このチェックリストを用いることで、複雑な問題に対処する際でも、前述の9項目に沿って 抜け漏れなく効率的に対処法を検討 できます。また、過去の経験や知見を体系的に整理することでより効果的な対策を導くことが可能です。さらに、チェックリストの9項目に沿って複数人で議論することで多様な視点から検討でき、新たな発想が生まれるきっかけにもなります。
デメリット
チェックリストの9項目に過度にとらわれてしまうと、それ以外の観点からの発見を見逃してしまう可能性があります。また、検討すべき課題の特性を十分に理解せずにチェックリストを適用すると、不要な項目に時間を費やしてしまい効率的ではありません。さらに、検討しやすい項目ばかりに目を向けてしまうと考えが偏り、創造性を阻害するケースも考えられます。
SCAMPER法の使い方と7つのステップ
オズボーンのチェックリストをより効果的に活用するためのフレームワークとして「SCAMPER法」があります。これは、オズボーンのチェックリストを7つの視点で簡潔化したものです。SCAMPER法を使う際の基本的な手順は以下のとおりです。
1. まず、アイデアを考えたい対象を明確にする 2. 7つの視点を順に試行し、それぞれのアイデアをメモする 3. メモしたアイデアをもとに、更に深く掘り下げて発展させていく
これにより、創造的な解決策を導き出すことが可能になります。上記2の7つの視点について詳しく解説します。
【ステップ1】Substitute(置き換える)
素材・材料・部品・プロセス・機能などを、代替品と交換できないか検討します。
例
プラスチック部品を金属部品に換えたり、既存の工程を自動化プロセスに置き換えたりするなど
【ステップ2】Combine(組み合わせる)
複数のアイデア・製品・サービス・技術などを組み合わせられないか検討します。
例
携帯電話とPCを組み合わせたスマートフォンや、スーパーマーケットと薬局を組み合わせたドラッグストアなど
【ステップ3】Adapt(適応させる)
ほかの分野・業界・製品・サービスなどの既存の技術やアイデアを応用することを検討します。
例
航空機の運行管理システムを利用して、トラックや自動車の物流ルートを最適化し、交通渋滞を避けることで配送効率を向上させるなど
【ステップ4】Modify(修正する)
既存のアイデア・製品・サイズ・形状・色・機能などを変更、性能を向上させるなどの修正ができないか検討します。
例
自由にカラーが変えられるLEDライトや、フレームの素材を軽量化し持ち運びの負担を減少させた折り畳み自転車など
【ステップ5】Put to other uses(ほかの用途に使用する)
既存のアイデア・製品・サービスを異なる用途、目的、対象に使用できないか検討します。
例
廃棄物となるコーヒーかすを再利用して消臭剤にしたり、元々想定していたターゲット層を変えたりするなど
【ステップ6】Eliminate(取り除く)
既存のアイデア・製品・サービスから不要な要素を取り除くことができないか検討します。
例
イベント運営のコストを削減するため、不必要な装飾や印刷物を削除しデジタルでの案内を強化など
【ステップ7】Reverse/Rearrange(再編成する)
既存のアイデア・製品・サービスの順序、配置、構造などの再編成を検討します。
例
オンラインストアの商品の配置を変えたりカテゴリー分けをしたりすることで、顧客が新たな商品を発見しやすくするなど
オズボーンのチェックリストのテンプレートを使う際のポイント
オズボーンのチェックリストの効果を最大限に引き出すためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。ここでは、チェックリストを活用する際の3つのコツを紹介します。
目的を明確にする
オズボーンのチェックリストを活用する際には、まず テーマを明確に設定することが不可欠 です。具体的なテーマが決まっていなければ、目的を達成できる有用なアイデアが生まれません。事前に自分の考えを整理しておくことで、ほかの製品との比較や長所・短所の分析が容易になります。
さらに、 目的を達成することだけでなく、ユーザーの視点を忘れないようにすることが重要 です。ユーザーのニーズに沿ったアイデアを生み出すことで、より実用的で価値のある解決策が得られます。
アイデアを量産する
オズボーンのチェックリストを実践する際、各項目に過度に時間をかけると、思考が止まってしまい、アイデアが生まれにくくなります。そのため、 アイデアの質は一旦脇に置き、直感的に思いついたアイデアをどんどん出していく ことが大切です。量産したアイデアのなかから、精査や発展をさせることで、さらなるよい方法を見つけやすくなります。
アプリや無料のテンプレートを利用する
オズボーンのチェックリストを手軽に利用するためのアプリやWEBサービスを活用することも効果的です。例えば、Excel、Word、PowerPointを使って自分なりのテンプレートを作成することができます。
また、インターネット上には無料でダウンロードできるオズボーンのチェックリストのテンプレートが多数存在します。これらのリソースを活用することで、効率的にチェックリストを使用し、アイデア創出のプロセスをスムーズに進めることができます。
オズボーンのチェックリストの活用例
オズボーンのチェックリストの9つ、SCAMPER法の7つ全ての項目を網羅的に検討することが必ずしも効率的とは限りません。具体的な課題解決を目的とする際には、状況に応じて優先すべき項目を絞り込むことが重要です。ここでは、飲食店と製造現場の2つのケースを例にとり、どのようにチェックリストを活用すればいいか紹介します。
ケース① 飲食店で活用する場合
飲食店が「お客を増やしたい」という目的を持つ場合、以下のような視点とアイデアが挙げられます。
見た目を変える(変更):メニュー表のデザインや店内の内装を変え、視覚的なインパクトを高めることでお客さんの心をつかむ デリバリーサービスを始める(逆転):来店してもらうのではなくデリバリーで届けることで、外出しづらい高齢者や子育て世帯などの顧客を増やす 異業種のシステムを取り入れる(応用):ほかの業種の集客方法を取り入れることで、ほかの飲食店との差別化を図る 原材料を変える(代用):地元農家の食材を取り入れることで、地域住民からの好感や愛着が生まれやすくなり、根強いファンを獲得する サブスクリプションの導入(転用):既存の会員アプリはクーポン配信がメインだが、サブスクリプション機能も追加することで、顧客のリピート利用を促進する
ケース② 製造現場で活用する場合
製造現場では商品改良や生産性の向上において、以下のような視点とアイデアが役立ちます。
サイズの変更(縮小):製品のロットサイズを小さくしたり、材料を薄くしたりすることで、製造工程を短縮する 代替材料を検討する(代用):低コストの材料に変えることで、原価を抑える 工程の見直し(再配置):工程の順序や作業レイアウトを再編成することで、作業の無駄を省き、生産性を向上させる 既存装置を生かす(転用):既存の装置をほかの製造ラインで活用することで、新製品の製造コストを抑える
まとめ
今回は、アイデア発想法である「オズボーンのチェックリスト」について、概要やメリット、ビジネスにおける活用例などについて解説しました。
オズボーンのチェックリストを活用すれば、課題解決のためのアイデアを幅広い視点で考えられ、さまざまなビジネスシーンで役立ちます。ぜひこの記事を参考にオズボーンのチェックリストへの理解を深め、業務に活用してください。
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