【2024年最新版】介護職の離職率が過去最低に!|離職率が下がった背景や今後の展望について解説
人材不足の介護職で離職率が下がった要因はどのようなことが考えられますか?
本日のお悩み
介護労働安定センターの「令和5年度版 介護労働実態調査」によると、介護職の離職率が過去最低の13.1%となったことがわかりました。※
人材不足が問題視されている介護業界において、この結果は非常にプラスであると思うのですが、離職率がさがっている要因はどのようなことが考えられますか?
出典:介護労働安定センター令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について
執筆者/専門家
山本 武尊
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/23
人材定着を図る指標の1つとして離職率があります。ご指摘のとおり、介護労働安定センターの「令和5年度版 介護労働実態調査」によると、介護職の離職率が過去最低の13.1%となったことがわかりました。ただ皆さんの職場ではいかがでしょうか。※
みなさんの現在働いている職場、もしくは以前まで勤務されていた職場で何かしらの制度や取り組みを通じてその実感がありましたでしょうか。
今回は離職率が低下している本当の理由について筆者が考える仮説を整理し、今後の対応について意見を述べたいと思います。参考にしていただければ幸いでございます。
出典:介護労働安定センター令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について
離職率が下がっている事実から考えられること
考察1:数字が下がっている=定着をしているのか
離職率の定義を再確認しましょう。離職率とはある時点で仕事に就いていた労働者のうち、一定の期間の中で、どれくらいがその仕事を離れたかを比率として表しています。
令和5年度介護労働実態調査では1年間での在籍者数をもとに採用率、離職率を公表しています。
ここで注意しておきたいのは、離職率だけでは働きやすい職場になったとは言えないということです。
例えば、ある介護施設で長年勤めていた職員が一斉に定年を迎えた場合、離職率は上がります。一方で新卒中途も含めて大量の採用者を獲得した場合に離職率は下がります。つまり、その介護施設での離職率が低いことと、定着ができていることはイコールではないということです。
考察2:取り組む事業所は2極化してきているのではないか
出典:介護労働安定センター令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要についてをもとに作成
介護職全体で見た場合にはどうでしょうか。
経年変化をみると、採用率は2012年度(23.2%)以来減少傾向にありましたが、2021 年度を底に2年連続で対前年度比増となっています。また、離職率も2022年度は一時的に微増となったものの2023年度には再び減少しています。
これらの結果より、評価できる点としては、離職率が低下したこと以上に、離職率と採用率との差が広がってきている点です。2019年度での採用率18.2%と離職率15.4%との差が2.8ポイントに対して、2023年は採用率16.9%に対して離職率13.1%と差が3.8ポイントに広がっています。つまり離職率が低下し、採用率が改善傾向にあると言えます。
しかしこの抽出をした1年間だけでは、これまでも増減の波があるように、介護業界全体で離職率が下がり、働きやすい職場となったと言い切ることは難しいでしょう。しっかり取り組んでいる事業所と、全く取り組んでいない事業所があったとしてもおかしくはない数値です。本当に離職率が下がり、定着をしたといえるには今後の調査を継続的に見ていく必要があります。
考察3:職種間でも差があるのではないか
出典:介護労働安定センター令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要についてをもとに作成
また、訪問介護と施設などで働く介護職員の採用率・離職率を比較してみると、2023年度では訪問介護と介護職員の離職率には1.8ポイントの差がある。このように職種別に見ても差があることから、職種によっては他職種以上に人材確保や定着にむけた努力が必要であるといえます。
離職率低下の考えられる要因
上記から分かることを整理してみると、離職率の低下からその要因は積極的要因と消極的要因の2つに分かれます。
1.積極的な要因
積極的な要因とは、離職率を低下させるために組織として取り組んだ結果が出始めているというものです。具体的な例としては以下のようなものが挙げられます。
1.評価制度を改定し、「職場の人間関係」を組織の仕組みの中で公平に評価した
2.働きやすい職場を目指し雇用管理改善をした(有給休暇・仕事と育児・介護の両立支援などを導入)
3.専門職としてのやりがいを高められるような研修体制を整備した
2.消極的な要因
消極的要因とは、前述した積極的な要因とは異なり、「ただ辞めていない」というだけです。一見離職率は下がるように見えますが、これからも働き続けたい職場であるかというと疑問が残ります。
消極的な要因の具体例は以下の通りです。
1.他によい条件の職場がない
2.現状の職場環境や待遇は依然として変わらないが離職するほどでもない
3.自分が離職することで、目の前の利用者さんや他の職員に迷惑をかけられない
これらの要因で離職をしていない場合、より良い条件の事業所や、積極的に改善に取り組む事業所が出てきた際には、転職の選択をとる可能性もあります。
最後に:介護事業所や施設が求められる今後の対応とは
「ヒト」という資源をどのように活用していくかがポイント
今後は離職率の低下、つまり採用・育成・定着に力をかけた介護事業所・介護施設は(以下介護事業者)、そうでない介護事業者との取り組んだ結果がしっかり現れていきます。今までは、良い意味でも悪い意味でも経営での差がつきにくい状況ではありました。
しかし、今後厳しい介護報酬とその経営が求められる中では、喜べるものではありません。介護業界は「ヒト」に支えられていると言っても過言ではありません。しかし残念ながら、すぐに離職率の大幅改善などに成果がでるものではありません。中長期的な視点で、その「ヒト」の資源をどのように成長させ、活用するしていくかが、まさに求められるのかもしれません。
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