介護施設の衣替え|季節の変わり目にできる体温調整の工夫
本日のお悩み:残暑や体感温度の違いに配慮した衣替えとは?
9月後半~10月にかけては、肌寒い日と暑い日があり体温調整が難しい時期です。 介護施設でも利用者さんの衣替えや、季節の変化に応じた対応が必要となるかと思います。
残暑や体感温度の個人差に配慮した衣替えを行うためにどのような工夫ができるのでしょうか。
四季が失われ始めている日本、秋の不安定な気候に合わせた衣替え
執筆者/専門家
羽吹 さゆり
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/7
日本には春夏秋冬の四季がありますが、最近はその移り変わりがはっきり感じられなくなってきました。
春のさわやかな陽気や梅雨時のジメジメした気候を感じる間もなく、いきなり猛暑の夏が来たり、爽やかな秋の心地よさを味わう間もなく冬に突入したりと、季節が急激に変化しているように思えます。ときには昨日まで冷房を使っていたのに、翌日には暖房が必要になることもあり、体が気候に追いつかないことが増えてきました。
特に9月後半から10月にかけては、暦の上では秋でも、暑い日と肌寒い日が交互にやってくるような不安定な時期です。本来であれば過ごしやすく、食欲や読書、スポーツなどを楽しめる「秋」ですが、最近では気温の予測が難しく、体調を崩しやすい時期になってきています。
高齢者ケアにおける季節の変わり目の注意点
こうした季節の変わり目に注意が必要なのが、高齢者のケアを行う現場です。高齢になると、体温を調整する機能が衰えてきて、暑さや寒さを感じにくくなったり、汗をかきにくくなったりします。
さらに、筋肉量が減少することで体の熱を生み出す力が弱まり、寒さに敏感になる一方で、暑さに対しては鈍感になってしまいます。その結果、体調の変化に自分で気づきにくくなり、熱中症や低体温症といったリスクが高まります。
高齢者の衣替えでできる4つの工夫と配慮
上記の理由から、この時期は気温や体調に応じて衣服を調整できるようにすることがとても大切です。高齢者の衣替えにおいて工夫したいことや配慮したいことは以下の通りです。
1.汗をかいたときに体が冷えないよう、吸湿性の高い綿素材の服を選ぶ
2.重ね着がしやすいカーディガンや薄手のベストなどを用意する
3.衣服の着脱がしやすいこと、締めつけがないこと、動きやすさにも配慮する
4.去年の服が今の体に合っているか確認する
体感温度だけじゃない!サイズ感の確認も重要なサポート
成長期の子どもの衣替えでは、体温調整以上に確認することもあると思いますが、高齢者となると見逃しがちなのがサイズ感の確認です。高齢者も、体重の増減や姿勢の変化、関節の動きの制限などによって、サイズ感や着心地が変わっている可能性があります。
具体的には、背中が丸くなっていれば服の丈の前後が不自然になる、膝の関節が変形していればズボンの丈が合わなくなるなどです。 このような変化に気づいたら、職員間で共有し合い、状況によってはご家族に伝えて、必要に応じて新しい衣類の準備をお願いするのも大切なサポートです。
衣替えでは、体温調節・着脱のしやすさ・安全性の視点を持って行っていきましょう。
季節の変わり目に注意したい室温管理の重要性
また、衣類だけでなく室内の温度管理も重要です。ご利用者自身が空調の操作を行えないことが多いため、スタッフがこまめに確認し、快適な室温を保つようにしましょう。室温管理のポイントは以下の通りです。
・冷房や暖房の風が直接当たらないようにする
・暑い日であれば室内を28度前後に
・寒い日であれば室内を22度前後に
・扇風機やサーキュレーターで空気を循環させる
・カーテンで日差しを調節する
衣替えは「個別ケア」の時間
室温調整では補いきれない部分を季節の変わり目に支えるのが、衣替えです。衣替えにおいては、先述したポイントをおさえながら、ご利用者一人ひとりの体調や生活環境に合わせた「個別ケア」がとても重要になります。
この時期の衣替えは、衣服のチェックを通して室温や体調の変化などに丁寧に目を向けることで、病気や体調不良を未然に防ぐことができ、ご利用者が安心して穏やかに過ごせる毎日につながっていくと私は思います。
また、衣替えの時期は、ご利用者と個別に関わることのできる特別な時間です。
衣類を通じた関係性の構築
このように季節に応じた衣替えのプロセスを「職員とご利用者の関係性を深める大切な機会」として捉えることで、双方にとってより有意義で楽しい時間になるのではないでしょうか。
衣類を通して、ご利用者の好みを知ったり、服について尋ねたりすることは自然な流れであり、ご利用者も安心して受け入れてくださるはずです。
もし気持ちよく話をしていただければ、「いつ、誰と買ったのか」「そのときの思い出は何か」といった会話に広がり、そこからご利用者の人生の一端を知るきっかけにもつながります。
QOL向上につながる気づき
また、衣替えを通して向き合うことで、ご利用者の情報を自然に収集でき、隠れたニーズに気づくこともあるでしょう。その気づきは、ご利用者の生活の質(QOL)を高める大切なヒントとなります。
例えば、食べることが大好きな方が胃瘻になり、「半年後にはお寿司を口から食べたい」という強い思いを持つことで、嚥下機能のリハビリを頑張れたという話を耳にします。
同じように衣替えも「お気に入りの服を着て外出したい」「あの色をもう一度身に着けたい」といった意欲を引き出すきっかけになるかもしれません。
最後に:衣替えを利用者さんに向き合う時間にしてください!
衣替えの時間は身体面の支援にとどまらず、心に前向きな変化をもたらす大切な機会です。そして、この時間に丁寧に関われば関わるほど、職員とご利用者の信頼関係は確実に深まります。
ご利用者への関心を持ちながら取り組むことで、職員にとっても衣替えは「単なる作業」ではなく、「心が通い合う温かな時間」となるのです。衣替えの時期を是非、有意義な時間にして欲しいと思います。
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