「ドラッグ中毒」「妻を射殺」「文学界の鬼才」って何者? 観ればわかる『バロウズ』&『クィア/QUEER』
ウィリアム・S・バロウズ関連作続々
ウィリアム・S・バロウズ(1997年没)は映画ファンにとっても避けて通れない作家だろう。デヴィッド・クローネンバーグ監督が1991年に映画化した「裸のランチ」(1959年)がもっとも有名だろうか。そんなバロウズ関連映画が2作、同タイミングで日本公開中だ。
まずは1983年制作のドキュメンタリー『バロウズ』。軽妙とさえ言える様子で自身の過去を饒舌に語るバロウズは、およそ“天才作家”と称される人物が抱かれがちな偏屈、寡黙、無愛想といったイメージをスカッと裏切ってくれる。とはいえどこかヒリついたバイブスを常にまとっていて、完全な傍観者である観客を惹きつけてやまない。本作は日本で劇場未公開のうえソフト化もされていなかったから、まさに待望の日本上陸だ。
あの頃、バロウズは何をしていた?
そしてバロウズの自伝的作品を映画化した『クィア/QUEER』も全国公開中。バロウズを投映した主人公リーをダニエル・クレイグが、彼が恋い焦がれる青年ユージーンをドリュー・スターキーが演じる。
スターキーは姉妹バンドHAIMのミュージックビデオでちょっとどうかと思うほどのセクシーぶりを振りまいていたので、そのスラリとしたイケメンぶりに見覚えのある人も多いだろう。
またミニストリーのアル・ジュールゲンセンもバロウズを敬愛していて、その縁でミュージックビデオに出演。長年ドラッグ沼に浸かり何度も死にかけたジュールゲンセンが還暦を過ぎても存命ということには長年のファンも驚いているが、バロウズからの影響や政治~環境問題への提言をストレートに音楽として吐き出し続けている稀有なアーティストだ。
いまだニルヴァーナのTシャツが刷られ着られ続けているのと同じく、世界はずっとバロウズの魅力に取り憑かれている。現在公開中の映画2作を観れば、きっとバロウズ作品を読んでみたくなるはずだ(その結果はどうあれ)。
『バロウズ』『クィア/QUEER』ともに5月9日(金)より公開中