井戸活用の災害トイレ 県工業技術開発大賞に 藤沢・茅ヶ崎に拠点、井戸屋が考案
藤沢市と茅ヶ崎市に拠点を置く(株)井戸屋が開発した、井戸を活用する災害トイレシステム「イドテックトイレ」が先月24日、県工業技術開発大賞奨励賞を受賞した。同社の綾久社長は「被災地をこの目で見てきたことで生まれた商品。今後も普及に尽力していきたい」と抱負を語った。
県工業技術開発大賞は、県内の中堅・中小企業が開発した商品のうち、市民生活の向上や産業発展に寄与するなどを基準に選ばれる。今回の井戸屋は、井戸を使った衛生的なトイレシステムが評価され受賞した。
災害トイレは下水道直結型や貯留式はすでに存在する。しかし、便器が不衛生になることや貯留量が限界を超える可能性があるなど課題を抱えることも少なくない。
イドテックトイレは、その課題解決を目指し開発された。下水道直結で許容量を超えてしまうことがなく、水道や電気が止まっても井戸を使って水洗が可能。手洗い場も設置でき、トイレ環境を衛生的に保てるという。平時の保管も防災倉庫に入るサイズで、組み立ては女性2人で10分という。
同商品は2011年に発生した東日本大震災で被災した石巻市に、水確保のための井戸を掘る仕事で訪れたことがきっかけで誕生した。避難所のトイレの不衛生さを目の当たりにした綾社長は「悲惨だった」と振り返る。またこの不衛生さが命を奪うととも。「トイレに行かないように水分摂取を控えてしまい、避難所の動かない生活も加わりエコノミー症候群で命を落とす方がいる」と訴える。「せっかく助かった命を避難生活の中で失うことはあってはならない。命にかかわる問題として訴えていきたい」と開発時の思いを含め、力を込めて語った。