【牧之原・西山寺】まか不思議「ドウモコウモと仁王様」伝説の真相! 3月20日から1200年記念行事
静岡・牧之原市にある真言宗の西山寺。そこに伝わる「ドウモコウモと仁王様」の伝説は、仁王様の武勇伝かと思いきや、意外な結末の謎めくお話。寺には伝説に登場する池もあります。住職の田中慈祥さんに伝説が示す深い意味を教えてもらいました!
1200年を迎えるお寺
「西山寺(さいさんじ)」は825年に弘法大師空海によって創建されたお寺で、2025年に1200年を迎えました。
当時はお寺の名前が地名になるほど大規模で、戦国時代までは今川家に庇護を受けていました。しかし今川氏が敗れ、戦いに巻き込まれた西山寺は衰退し、僧侶の住む場所は12坊から1坊へと縮小されてしまいました。
それでも人々の厚い信仰を集めて続けた西山寺は、現在53代目・田中慈祥さんが住職を務めています。牧之原市では数少ない住職が在住する真言宗のお寺です。
田中住職は京都出身で、高野山の蓮華定院で役僧をしていました。西山寺の先代と縁があり、7年前に牧之原市へ。住職になりました。
今回聞いた、「ドウモコウモと仁王様」の話は本などにも多く残っています。仁王様が悪いドウモコウモをやっつける武勇伝かと思いきや、意外なオチが。このオチは真言宗の教えを知っていると「なるほど」と理解できる話でした。
西山寺・田中慈祥 住職:
この伝説は、いつの時代の伝説かは不明ですが、平安末期の仏教の普及とともに広がり、本によっていくつか細かい違いがありますが、今でも伝説に登場する場所が、ここのお寺にあります
伝説「ドウモコウモと仁王様」
まずはこの伝説のあらすじを紹介しましょう。
昔お寺の近くに「仁王」という大男が住んでいました。強いがゆえに、悪さばかりしていたところ、住職に「お前よりも中国にドウモコウモという強いやつがいる」と教えられます。
そこで仁王は中国に戦いを挑みに行くことにしました。
ドウモコウモの家に着くと、奥さんが火鉢を片手に持って、ここで待つようにと部屋に案内してくれます。
寒くてその火鉢を近づけようとする仁王ですが、全く動かない。
「あの奥さんが片手で運んでいたくらいなら、ドウモコウモには敵うわけがない」と逃げ出します。
気づいたドウモコウモは追いかけてきて、遂には海を越えお寺まで着いてしまいました。
仁王が薬師様に助けを求めると、「池のほとりのサルスベリに登り、しがみつきなさい」と言われます。言われた通りにした仁王。
しかしドウモコウモがやって来て、仁王を見つけます。
「捕まえてやる!」とドウモコウモが勢いよく飛びついたのは、池に映った仁王の姿。
そのままドウモコウモは池に落ちて溺れ、その上から薬師様が池にふたをしました。
「どうにもこうにもならない」とドウモコウモは堪忍し、仁王は薬師様のおかげで助かりました。
伝説には続きがあった
大体の本や資料はここまでの話で終わっていますが、大事なのはこの後。ここで終わってしまうと、なんだか腑に落ちないところがたくさんあります。
田中住職が気になる続きを教えてくれました。
西山寺・田中慈祥 住職:
仁王とドウモコウモは現在、薬師堂の仁王門にいらっしゃいます
西山寺の仁王門にある二体の金剛力士像。
悪さばかりしてケンカを売った仁王と、ケンカを買ったドウモコウモは薬師様に叱られ改心し、今では門番となって薬師様を守っています。
自分たちの心に優しい仏がいることに気づけず、怒りや欲にまかせて失敗した仁王とドウモコウモ。もう駄目だと思っても、仏教にはいつでも生まれ変われる「擬死再生」の考え方があります。
仁王もドウモコウモも心が生まれ変わり、人々を救う存在にもなりました。
参拝する人も「擬死再生」をすることができます。
西山寺・田中慈祥 住職:
人の一生はおぎゃあと「あ」で始まり、「ん」で終わります。生まれ変わるには左側に立つ「ん」の金剛力士側から仁王門を通り、仏様に自分の悪い部分を預けて、右側に立つ「あ」側から出てこればいいのです
みなさんも参拝する際には、左右どちらの金剛力士像側から門を入るのか、気にしてみてください。
江戸時代以来の「薬師如来像」御開帳
ドウモコウモ伝説のキーパーソンである薬師如来像は秘仏ですが、3月20日から4月8日まで創建1200年記念として御開帳されます。
期間中、江戸時代に建立された茅葺きの薬師堂の内陣に入ることができるほか、平安時代の作とされる秘仏にも会うことができます。
3月20日の午後1時からは、法要と記念説法が行われます。
他にも期間中の土日には、檀家によるおしるこや野菜の販売など出店もあります。
次はいつになるか分からないので、この機会をお見逃しなく!
また、1200年祭の間は毎日護摩が行われます。予約なしで午前10時から約30分間、無料で参加できます。
お経や美しい声明が聞けるのも西山寺の護摩ならでは。
300円を納め、護摩木にお願いを書けば御祈祷もしてくれます。何本でも書けますし、来られない人の分を代わりに書いてもいいのです。
期間中の土日は、護摩が終わる午前11時から、薬師堂に移動し瞑想が行われます。
こちらも予約不要で、だれでも参加できますが、途中からは入れないので時間に余裕を持って集まりましょう。
真言宗の瞑想は、心を無にする禅宗の坐禅とは違う体験になりますよ! 心を無にするのが難しくいと感じたことがある方は、逆に集中するという真言宗の瞑想も試してみてはいかがでしょうか。
目を釘で打たれた龍の伝説
西山寺には、もう一つ伝説があります。山門をくぐる時、頭上には大きな龍が睨みをきかせています。
この龍は名匠に彫られましたが、暴れて悪いことばかりしていたため、目を釘で打たれて門から動けないようにしたと言われています。
いま龍の目を見ても釘はありません。これには、さらなるエピソードが。
現在の藤枝あたりにいた盲目の老婆の夢枕に龍が出てきて、「目の釘を抜いてくれたらお前の目を治す」と言いました。
釘を抜いたら老婆は目が見えるようになり、そのまま釘が抜かれた状態になっていると言われています。
一度にお参りできる西国三十三所霊場
薬師堂から更に山の方へ進むと、西国三十三所の霊場を、巡拝せずとも一度にお参りのできる「観音堂」があります。
通常開いていませんが、住職にお願いすれば開けてお参りをさせてもらえます。
この観音堂の上を進むと、山の頂上に着き、春にはサクラが満開になるそうです。1200年記念行事の期間にちょうど見られるかもしれません。
行事期間は、記念品として記念散華などが配布されます。数量に限りがあるので早めに行ってみてくださいね! 御朱印もご朱印帳を持っていけば書いてもらえます。
ぜひ西山寺の金剛力士像となった二人が守る仁王門を通って、薬師様に会いに行ってみてください。
■スポット名 医王山 西山寺
■住所 静岡県牧之原市西山寺50
■問合せ 0548-54-0111