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歩かない、しゃべらない…早期療育に奮闘も「このまま一生話せない?」母を支えた児童発達支援【読者体験談】

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歩かない、しゃべらない…早期療育に奮闘も「このまま一生話せない?」母を支えた児童発達支援【読者体験談】

監修:藤井明子

小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長

1歳半健診で発達の遅れを指摘され……。息子の発達障害が分かるまで

現在10歳の息子は、2歳でASD(自閉スペクトラム症)、3歳で知的障害(知的発達症)、10歳でADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。こだわりが強い性格です。

息子は生後10か月で伝い歩きを始め、1歳4か月で立てるようになりました。ですが、なかなか一人で歩くことができず、言葉もでなかったのです。「発達が遅れているのでは?」と不安を感じていた中で迎えた1歳半健診。そこで「専門の先生に診てもらってください」と指摘を受けました。ショックというよりも、「そうか、一度診てもらおう」と素直に思った記憶があります。

小児神経科を受診すると、言葉の遅れがあるため、月1回の言語聴覚療法(ST)をすすめられました。さらに、発達が気になる子どもたちが集まる「地域の遊びの広場」にも月1回参加することになりました。

STは、発語につながるなら……と思いながら通いましたが、病院は車で1時間近くかかる場所。運転が苦手な私にとってはなかなか大変でした。それでも、小学1年生の秋頃まで通い続けました。

言語聴覚療法(ST)と遊びの広場での学び。初めて見た自傷・パニック

息子はSTに喜んで通いました。家にはないおもちゃがたくさんあり、楽しかったようです。「早くやりたい!」という気持ちが強すぎて待つのが苦手で、途中で席を立つことも多かったですが、毎回笑顔でした。

「地域の遊びの広場」も息子にとってお気に入りの場所でした。私自身も専門家と話せる機会が増え、その時々の悩みを相談できたのはとても助かりました。

ただ、今でも鮮明に覚えていることが2つあります。

ひとつは、STの先生に「このまま一生話せないこともあるんですか?」と聞いたときのこと。「……あるかもしれません」と言われて、現実を突きつけられました。私は「いつか話せるもの」と思っていたので、とてもショックでした。

もうひとつは、1歳10か月の時のこと。大好きなクレヨン遊びをしていた息子に「お片付けしようね」と声をかけると、大泣きしながら自分の額を床に何度もぶつけ、足をバタバタさせパニックになったのです。初めて見る姿に私は青ざめました。

先生は「お帰りしましょう」と一言。クールダウンのためとは分かっていても、「みんなと一緒にいることができない」という現実を突きつけられ、切なかったのを覚えています。

不安そうな表情が明るい笑顔に!児童発達支援事業所が成長のきっかけに

そんな日々の中、「地域の遊びの広場」の保健師さんから「児童発達支援に通ってみてはどうですか」と紹介され、児童発達支援事業所とつながることになりました。

最初に紹介されたのは、車で1時間かかる施設。見学に行き「いいところだね」と夫と話しましたが、遠さがネックに……。施設長さんに相談すると、住んでいる地域にも児童発達支援事業所があると教えてもらい、そちらも見学へ。しかし、残念ながら満員……。悩んだ末、4〜5か月空きを待って、近くの事業所のほうに通うことを決めました。

そこでは給食が提供されており、このおかげで息子は偏食が改善されました。さらに「できた!」という成功体験をたくさん積むことができ、自信につながったようです。

通い始めた頃の写真を見ると、不安そうな表情。でも、時間が経つにつれ、明るい笑顔にな変わっていきました。

「言葉が出なくても焦らない」そんな気持ちを支えてくれた支援

息子はなかなか言葉が出なくて、日々とても心配していました。そんな時、支援の方から「今、息子くんはたくさんのことを吸収しています。それが積み重なった時に言葉としてあらわれますよ」と言われ、おかげで「今は吸収の時期なんだ」と自分に言い聞かせ、焦る気持ちを抑えることができました。もし支援に繋がることができなかったら、親子ともにつらい日々を過ごしていたと思います。本当に感謝しています。

結局、発語があったのは3歳0か月のとき。現在4年生の息子はおしゃべりもできるようになり、元気に成長しています。

今感じている課題はコミュニケーションです。友だちが遊びに来ているのに学校の宿題を始めたり、会話が一方的だったり……。少しずつでも人の気持ちを察することを学んでいってほしいなと思っています。

子どもたちはみなそれぞれのペースで成長していくのだなと実感しています。これからも息子のそばでその成長を見守っていきたいです。

エピソード提供/ゆきこ
イラスト/よしだ

(監修:藤井先生より)
1歳半健診で発達の遅れを指摘され、言語聴覚士さんや児童発達支援施設に通い、息子さんに必要な支援につながってきた貴重なご経験を読ませていただきありがとうございました。お子さんの言葉が出なくて心配されている方の励みになりますね。療育先に悩まれる場合があるかと思いますが、言葉だけでなく、認知面、運動面も含め包括的にみてもらえる児童発達支援施設で療育を受けることは良い選択ですね。地域によっては施設が遠方だったり、空きがなかったりすることがあります。かかりつけの小児科の先生に受給者証用の意見書ないし診断書を書いてもらい、保健センターなどで情報収集を行なって地域での療育先を探されるのが良いです。焦ってもお子さんの成長のペースは一人ひとり違うものです。成長をこれからも見守っていきたいですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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