直木賞作家・今村翔吾によるシェア型書店「ほんまる 神保町」が誕生
「塞王の楯」で直木賞を受賞した作家の今村翔吾が経営するシェア型書店「ほんまる 神保町」が、2024年4月27日にオープン。シェア型書店とは、本棚を借りた棚主が、それぞれのおすすめや自分で作った本を販売する新しい書店の形だ。1階と地下1階の2フロアで構成されており、さまざまな人が、幅広いジャンルを扱っている。全国的に書店を盛り返したいという今村の思いからスタートしたという。
印象的なロゴや空間のデザインは、クリエーティブディレクターの佐藤可士和が担当。取材は平日のオープン直後だったのだが、開放感あふれるオープンな店内に引かれるのか、来店者がひっきりなしだった。
気になる棚主たちは、本好きはもちろん、自身で本を執筆していたり、書評を書いたり、表紙を撮影したりという関わり方をしている人たちや、小さな出版社、書店にあまり流通していない本を置きたいという人がいるという。また、委託で本を販売する書店はほかにもあるが、大きな違いとして挙げられるのは、古本だけでなく新刊も取り扱えることだ。
棚数は全部で364棚。棚を借りるための月額料金は4850円(税込み)からで、商品を手に取りやすい位置だと高くなる。詳細は公式ウェブサイトから問い合わせてほしい。
本のセレクトもそれぞれの個性があり、写真集や漫画、絵本などを置いている棚や、2つの棚を借りている人も。新刊は定価だが、古本の値付けは市場価格にこだわるのではなく、思い入れなどで左右されるのが面白い。
棚主によって入れ替えるペースはまちまちで、取材中にも納品に訪れる棚主がいた。講談社や生島企画室など、法人のコーナーもあり、同店のスタッフが月に1度ほど入れ替えている。
自身で作っているフリーペーパーや、本におすすめを挟み込みしている人のものは、つい手に取ってしまった。図書館などで見かける代本板が各棚に設置され、棚主の情報が載っている。
今村や佐藤による棚もレジ横にあり、それぞれが影響を受けた本をセレクトしている。2人の人生や思考をのぞけるかもしれない。そのほか、空いている棚にはスタッフがセレクトした本が並ぶ。
トートバッグやてぬぐい、ふろしき、鉛筆、消しゴム、マスキングテープ、ステッカーなど、オリジナルグッズも充実。国内外を問わず、佐藤のファンが手に取ることも多いそうだ。
本の街・神保町にオープンした新しい形の書店は、出版の未来を照らす明かりになるだろうか。ぜひ足を運んでみてほしい。
Kosuke Hori