ヴェルスパ大分 愚直な守備と執念の一撃 前半戦の山場を突破 【大分県】
ヴェルスパ大分が、前半戦最大の山場を見事に乗り切った。JFL第11、12節で沖縄SV、ラインメール青森という昇格争いのライバルと対峙(たいじ)し、2戦で1勝1分と勝ち越し。特に無敗を誇っていた青森との一戦では、ホームで価値ある勝利を手にした。首位との勝ち点差は1。J3昇格を見据え、絶好のポジションに立っている。
試合は、開始から前線から執拗(しつよう)なプレッシャーをかけ、主導権を握った。昨季は「試合の要所」での失点が課題だったが、今季はその弱点を克服。選手たちは集中力を切らさず、前後半の入り際も堅守を貫いた。GK姫野昂志の的確なコーチングと好セーブも光り、守備陣が一体となってゴールを死守。無駄な失点が減ったことが、チームの進化を物語る。
攻撃では今村優介と金崎夢生の強力2トップが、相手DFとの競り合いをいとわず、自陣からのロングボールに体を張り続けた。2トップの献身が相手のクリアミスを誘発し、セカンドボールを武沢一翔や福満隆貴らが拾う展開へとつなげた。中盤でのセカンドボール回収率の高さは、まさにヴェルスパの新たな強みである。
決勝点は、そのチーム全体の愚直さと連動性を象徴する一撃だった。武沢のクロスを今村が折り返し、金崎が押し込んだ。華やかさこそないが、積み重ねた努力が実を結んだ瞬間だった。
豊富な運動量でセカンドボールを回収する武沢一翔
ピッチ内外での変化も大きい。選手同士が意見をぶつけ合い、本気で要求し合う空気が生まれている。元日本代表の金崎のような経験豊富な選手の存在が、チームに競争と規律をもたらした。姫野が語ったように、「オンとオフの切り替え」が徹底されることで、ピッチ上ではより本気の姿勢が引き出されている。
青森を破ったこの一戦が、昇格への大きな追い風になるのは間違いない。だが、武沢が言うように「30試合のうちの1試合に過ぎない」。次の一戦も勝ってこそ、この勝利の意味が大きくなる。愚直に、貪欲に、そして謙虚に―。ヴェルスパはJ3の扉をこじ開ける戦いを続けている。
首位の青森に勝利し、喜ぶ選手たち
(柚野真也)