【東大卒の勉強の達人】が教える 「家事・育児・仕事をしながら勉強」できる 知識がどんどん頭に入る「カンニング法」とは?
大人になってから勉強するにはコツがいります。家事・育児・仕事に忙しいなら、なおさら効率的に進めないと三日坊主で終わることも。東大卒であり、仕事をしながら数々の資格を取得。現在は育児と仕事をかけもちしながら東大大学院にも通っている、勉強の達人・石黒由華さんが、子育てをしながら勉強をする方法・リスキリングの方法を紹介します。
「蛙化現象」「ガチ勢」日本の若者言葉は英語でなんていう?【学校でも塾でも習わない ワザあり英語】春を迎えて新しい生活がスタート! 周囲の前向きな空気に刺激されて、資格試験への挑戦や趣味をもっと極めたいと思うなど、意欲的になっている親御さんも多いでしょう。しかし、家事・育児・仕事に忙しい方が確実に知識をものにするには、効率的に勉強する仕組みやコツをつかむことが必要です。
東大卒であり、仕事と勉強を両立して数々の資格を取得し、結婚・出産後は子育てをしながら東大大学院に合格。現在は育児と仕事をかけもちしながら大学院にも通う勉強の達人・石黒由華さんが、子育てをしながら勉強をする方法を紹介します(全3回の2回目)。
考えてもわからないことは答えを見ればいい! 知識がどんどん頭に入ってくる「カンニング勉強法」
カンニングは本来、不正に他人の答案や参考書などを見ることを指しますが、石黒さんのいうカンニングは、すぐに「正解を見る」という手法です。石黒さんは効率的に勉強をしたいなら、解けない問題を腕組みして考え続けるよりも、正解を早く見て、写してしまえばいいと話します。
「『カンニング勉強法』は、私が高校時代から取り入れている方法で、資格試験の勉強のときにも役に立ったテクニックです。
第1回でもお話ししましたが、問題集の1ページ目から完璧にやろうとすると手応えを感じるまで時間がかかり、そのうちにやる気を失ってしまいます。これが三日坊主の原因です。
ですから、すべて自力で、時間をかけて解こうとするのではなく、わからないものや思い出せないものは『すぐに答えを見て』読み進めたり書き写したりしながら、解法などを暗記学習するといいでしょう」(石黒さん)
「勉強時間の一番のムダは、公式や用語を覚えていない、あるいは活用できないのに考え込んだり、悩んだりする時間」だと石黒さんはいいます。
その点でいうと、カンニング勉強法は学習がサクサク進むうえ、解答や解説には考え方や覚えなくてはいけないポイントがまとまっているので、必要なことだけを効率的に学ぶことができます。
カンニング勉強法の初回は「やっている感」にしかなりませんが、その後は、テキストを反復学習することで自分の知識にしていきます。
問題集は定番のもの1冊で十分!
「カンニング勉強法は、暗記学習のひとつです。そして暗記をするなら、私は最初から問題集での勉強をおすすめします」(石黒さん)
勉強は参考書の読み込みから始めるのでは? と思う方もいますが、参考書だと全部が大事に思えて、不要なことまでがむしゃらに覚えようとしてしまいます。
その一方で問題集は、必要なところや大事なところだけが問われているので、必須の用語や解法だけを覚えられるので効率的です。
「問題集での勉強は、特に選択肢で答える試験に有効です。何度も問題集に向き合っていると、読むだけで合格してしまう場合もあります」(石黒さん)
また、問題集を解くことは、試験の問題形式を踏まえた「逆算の勉強法」。模擬試験を何度も受けていることにも通じるでしょう。
「問題集は最初からたくさん買ってしまうと自分へのプレッシャーになってしまうので、手元に用意するものはまずは定番のものを1冊で十分です。
むしろ、いろいろ買い揃えるよりも、とにかく1冊をやり切って、何度も解くことが合格への近道です。
もし、定番の問題集が自分にとって難易度が高いなら、少しレベルを落としたテキストをやり込んでから、定番に挑戦してみるといいでしょう」(石黒さん)
1日にどのくらいの時間をスマホに費やしているか、自分の日常を見直してみてください。 写真:アフロ
「時間がない!」という人ほど、実はスマホをダラダラ見ている
勉強したい気持ちはあるけれど、忙しくて時間がないという人は多いものです。しかし、石黒さんは1日の時間の使い方を見直してみると、意外にも多くの時間を費やしていることがあったといいます。
「私の場合、スマホを見ている時間がけっこうありました。リラックスする時間は必要ですが、必要以上にダラダラと画面を見ていることがあったので、スマホを早めにバッグにしまって勉強時間を確保しました」(石黒さん)
スマホを手の届かない場所に置くというのはとてもアナログな方法ですが、勉強時間の確保には実は効果的だと石黒さんは話します。また、見直すべき日常はほかにもあります。
勉強時間の確保のために、見直すべき日常
1 仕事
2 家事
3 子育て
1 仕事
仕事をしている場合は、退社時間を決めて、ダラダラ仕事をしない。仕事を早く終わらせるためにスキルアップを図ったり、ツールを使うなど作業を早める工夫をするのも大事。
2 家事
時短家電や食材の宅配サービス、ミールキットなどを使って、できる限り負担を減らす。ただし、必要な部分は手間を惜しまないことも大切。たとえば、子どもと一緒に家事をすることで、子どもとのコミュニケーションタイムを確保したり、お手伝いをしてもらうことで自立・自律をうながすなど、家事と育児の一挙両得も考えてみる。
3 子育て
パートナーと協力できるなら、週末にパパタイムをつくるなど、ルーティンで子どもの世話を任せる。パパと子どもだけの時間は双方の刺激になるだけでなく、勉強時間がまとまってとれるメリットもある。育児と自分の時間のメリハリがつく分、自分が子どもの世話をするときは思い切り子どもに付き合える。
ToDoノートで目標達成が少しずつ近づいてくる
「目標を達成するには、毎日、少しずつでも勉強を続けることが大切です。そのためにおすすめしたいのが、ToDoノートをつけること。長期的な計画を立てることも大事ですが、忙しい方は1日の計画のほうが必要です。
やり方は簡単。1行にひとつ、今日のタスクを優先順位をつけて書き込み、その日の終わりに好きな記号で進み具合を追記します。勉強のことだけでなく、その日にやりたいこと、やっておきたいことを書くのもいいでしょう」(石黒さん)
その日にできなかったことは、次の日のタスクに落とし込みます。 画像提供:石黒由華氏(『夢を先送りしない勉強法』より)
例)石黒さんの進捗記録の記号
✔️ → 達成できたもの
△ → 着手したけれど、未達成なもの
空欄 → 手がつけられなかったもの
○ → タスクの中で具体的にできたもの
ToDoノートは確かに進捗管理に役立ちますが、育児中であれば、子どもの予定や体調次第で何ひとつできない日もあります。その場合、石黒さんはどうしているのでしょうか。
「私も子どものことで勉強も家事も全然、手をつけられない日がたくさんありますから、何もできなかったとしても気にせずにToDoノートをつけてみてください。あとから見返すと、できなかったのはこの3日間だけだったなどと冷静に考えることができます。
また、予定どおりにはいかなかったけど、この1問だけ取り組めた、この1行だけ読めたと、できたことが目に入ってくるので、少しでも頑張った自分を褒めることができます」(石黒さん)
「忙しい中でも頑張った自分がいた」というように、自分を認めてあげると自己肯定感が高まります。前向きな意識は、勉強を積み重ねていくエネルギーになって、いい結果へとつながっていくはずです。
第3回は、学び直したいものとして人気の高い「英語」に注目。留学経験なしでTOEIC950点超を獲得し、今も英語学習を続けているという石黒さんの独学勉強法を紹介します。
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◆石黒 由華(いしぐろ ゆか)
東京大学卒業、勉強の達人
学生時代から勉強法を研究し、「だれでも、どんなに時間がなくても結果の出る勉強法」を考案。偏差値30台から東大に逆転合格する。東大卒業後はマスコミ企業に就職し、社会人になってからも自身で築き上げた勉強法を実践して、留学経験なしでTOEIC950点超、プログラミング技術など8つの資格を独学で取得する。結婚・出産後は、さらに子どもを育てながら勉強を続け、東京大学大学院に合格。現在、同大学院に在学中。効率的な勉強法の研究は、今も勉学に励みながらアップデートしている。著書に『夢を先送りしない勉強法』(技術評論社)がある。
取材・文/梶原知恵