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アルバイトの「当たりはずれ」で、悩んでいる経営者の話。

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アルバイトの「当たりはずれ」で、悩んでいる経営者の話。

飲食店の経営者をしている知人と、久しぶりに会ったところ、「タイミー」の話になった。


知らない方のために「タイミーとは何か」を説明すると、タイミーとは「スポットワーク紹介アプリ」のこと。

スキマバイトアプリ:
タイミーは、従来の求人サイトや派遣のような、時間や勤務期間に縛られない、スキマ時間で働くためのアプリです。

マッチングサービス:
働きたい人と、働いてほしい企業をマッチングさせることで、企業の人材不足を解消し、働き手にはスキマ時間に気軽に働ける機会を提供します。

特徴:
面接・登録なしで、すぐに働くことができる。
勤務終了後、すぐに報酬を受け取ることができる。
企業や店舗のレビューを確認できるため、安心して働ける。
バッジ機能により、スキルアップや高時給の仕事を見つけやすくなる。
(スキマバイトマガジン)


イメージが湧かなければ、「日雇い」を想像すると良いかもしれない。

「スポットワークと、日雇いと何が違うの?」という質問が出そうだが、言い方が違うだけで、多分同じ。

本質的には、企業が日雇い労働者を募集できるサービスと言える。


ただ法で禁止されている「日雇い派遣」については、タイミーは派遣元ではなく、あくまで「マッチング」を提供している紹介サービス。

という立て付けらしい。

まあ、このあたりの法解釈は私の専門外なので、詳しい人同士でやってくれ。


個人的には、「助かっている」という飲食店と、「スポットで働きたい」という労働者がいる限り、別にいいのではと思っている。

嫌なら、使わなきゃいいだけだ。


もちろん労使の話だから、様々なトラブルもあるのだろう。

こんなふうに。

とはいえ、こうした評価が公にされれば、皆がその企業を避けるようになるから、悪質な企業は排除され、改善は進むだろう。


そういう意味では、評価が企業内で秘密にされている「正社員」よりも、スポットワーカーと企業側両方に、オープンな相互評価をさせているから、わりと「公平」な関係が築かれているのではないかと思う。


*


前置きが長くなった。

ただ、今日書きたいのは、タイミーのサービスについてではない。

「タイミー」で働きに来る人の「質」についてだ。


上で触れた知人は、タイミーをよく利用すると述べていたが、「すごいいい人と、ダメ人材の差が激しい」という。


もちろん、面接も経歴書の確認もなく、「いきなり」職場に来て働いてもらうわけだから、それは当たり前だろう。

ただ、どれくらいの差があるのか気になったので、聞いてみた。


「「いい人」ってのは、どれくらいい人なの?」

「社員よりもいいくらい。すごい優秀。雇いたいけど、こういう人たちは、あえてスポットワーカーを選んでいる理由がある。バンドマンとか、演劇やってるとか。」


「なるほど……じゃ、ダメな人は?」

「それがね。なかなか一言で言うのが難しいんだけど、要は「とにかく変化に弱い」。」


「???……たとえば?」

「お客さんが少なくて、皿洗いが止まった時、「じゃ、つくえ拭いて」って、頼んだ瞬間、不機嫌になる。


タイミーの募集にはたいてい、

「洗い場スタッフ募集 主な業務は、洗い場、簡単な仕込み、手が空いたら他の業務をお願いすることもあります」

など、手が空いたら別の仕事やって、と書かれている。


洗う皿が無くなったら「つくえ拭いて」くらいは、飲食店では業務の範疇だろう。

だが、そうした「変更」に対して、強い抵抗を示すのだそうだ。


「あとは「マニュアルに書いてないですよね……」とか言って、急に手が止まったり。なんか急に反抗的になったりするんだよね。あと「そのやり方じゃダメ」って指摘すると、もう心ここにあらず、っていう状態になる。」

「なるほどね……」

全く改善ができない人、ずーっと、ひたすら同じ作業しかやりたがらない人がいて、全体的に、「暗い感じ」の人に多いんだよね。」


「そういう人って、どれくらいの割合でいるの?」

「10人に一人くらいかな。本当にまずいのは。」


「ふーん。結構多いね。」

「タイミー使うなら、柔軟性とか、改善とか、そういうことを前提にしちゃいけないって、改めて思うよ。ハズレが来ても、まあ、それなりに役に立つように仕事を設計することだね。」


*


「変化に弱い」というのは、とにかく現代社会ではツラいだろうな、と思う。

つい300年前までは、ほとんどの人が、毎日畑仕事、大して変わり映えもしない生活を送っていただろうが、今は皆が便利を求めるせいで、企業は競争を余儀なくされ、そういう贅沢は許されなくなった。


タイミーに登録している人は、約1000万人いるという。

そのうちの、10人に一人が、「そういう人」なら、少なくとも100万人は、上のような人が存在しているということだ。


とはいえ、経営者の彼は、彼らに同情的だった。

「たぶん自信がないせいだと思う。ちょっと人から言われると、「自分にはできない」って、すぐに思ってしまうんだろう。」

「そうなんだ。」


「彼らに活躍できる仕事を作ってあげたいのは、やまやまなんだけど……「皿洗いの手が空いたら机拭いて」とか「そのやり方だと汚れが取れないよ」っていう程度で、仕事を投げ出してしまう人だと、もうどうしようもなくてね……」


彼はそう言うと、ため息をついた。

***


【著者プロフィール】

安達裕哉

生成AI活用支援のワークワンダースCEO(https://workwonders.jp)|元Deloitteのコンサルタント|オウンドメディア支援のティネクト代表(http://tinect.jp)|著書「頭のいい人が話す前に考えていること」82万部(https://amzn.to/49Tivyi)|

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯note:(生成AI時代の「ライターとマーケティング」の、実践的教科書)

Photo:Aurelien Thomas

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