猫の『しっぽ』に生じるケガや病気3選 原因や症状、対処法まで解説
1.しっぽのケガ
原因
人に踏まれる、ドアや家具に挟まれる、強く引っ張られるなど、生活環境での事故や外部からかかる力が主な原因です。また、外に出た猫は交通事故やケンカでケガを負うリスクもあります。
症状
激しい痛み、腫れ、しっぽがだらんと垂れ下がって動かない、不自然に曲がっているといった異常が見られます。骨折や重度の神経損傷の可能性もあります。特に注意すべきなのは、しっぽの先から血流が悪くなり皮膚が黒く変色して壊死している場合や、失禁したり排泄ができなくなったりしている場合です。これらの症状は一刻を争うため、すぐの受診が必要です。
対処法
しっぽが動かない、排泄に異常がある場合は、神経を損傷している可能性があるので、すぐに動物病院を受診しましょう。ケガが軽度であれば、抗生剤や鎮痛剤の投与や安静にして治していきます。骨折や壊死などが起こっている場合は、手術が必要になることもあります。
予防として、完全室内飼育を徹底し、家庭内ではドアの開閉時や歩行時に猫が近くにいないか確認するなど、不注意による事故を防ぐことが大切です。
2.スタッドテイル
原因
しっぽの付け根にある尾腺という皮脂腺が過剰に分泌活動を行うことによって起こる皮膚の病気です。詳しい原因はわかっていませんが、未去勢のオス猫に多く見られ、性ホルモンが関係していると考えられています。猫自身の毛づくろい不足も原因です。肥満や関節炎などで体を曲げるのが困難になり、自分でなめられない猫で悪化しやすいです。
症状
しっぽの付け根の被毛がベタつき、脂っぽいフケが出ます。皮膚が黒ずんだり、脱毛したりすることもあります。過剰に分泌した皮脂の周辺で細菌が増殖しやすくなり、炎症が起こること、猫がしっぽをなめたり噛んだりして悪化することもあります。
対処法
皮膚を清潔にして、皮脂をコントロールする治療などが行われます。患部の毛を刈り、シャンプーで余分な皮脂を落として清潔にします。炎症を起こしている場合は、外用薬や内服薬の投与を行う場合もあります。未去勢のオス猫は、去勢手術をすることで改善や予防できる可能性があります。普段からブラッシングをしたり、皮脂が多い場合はしっぽを洗浄したりして清潔を保ちましょう。
3.馬尾症候群
原因
背骨の末端にある馬尾神経が圧迫されることで起こる神経の病気です。猫では稀な病気ですが、加齢により神経の通り道が狭くなることや、落下など脊椎への衝撃、骨の奇形や腫瘍などが原因で起こることがあります。
症状
腰やしっぽの付け根を触られるのを非常に嫌がります。ふらつく、ジャンプや階段を嫌がるなど運動機能の異常が見られます。しっぽを振らない、しっぽが下がったままになる、失禁や排泄が困難になることがあります。
対処法
軽度の場合、運動制限、体重管理、痛み止めの投与などの治療が行われます。改善しない場合や、重度の症状では手術が必要になることもあります。
馬尾症候群の予防は、適正体重の維持や、高所からの落下や滑る床など脊椎への負担を減らすことです。老化だと見過ごしやすいですが、動きなどいつもと違うと感じたら早期に動物病院を受診しましょう。
まとめ
猫のしっぽのケガや病気についてご紹介しました。思わぬトラブルでのケガや、しっぽの毛をかき分けないと気づかない皮膚の変化、排泄などに影響が出るしっぽに関係する病気もあります。日頃からケアや観察をして異変が見られたら早めに動物病院で診てもらいましょう。
(獣医師監修:葛野宗)