「AED」置き場所ご存知? 624カ所設置も認知不足課題
心停止の人に電気ショックを与えて救命する「AED」(自動体外式除細動器)。一般の人が使えるようになって20年余りが経過したが、台数は全国約70万台と普及が進む一方で使用率は4%台と伸び悩む。心停止時の救命率(生存率)は電気ショックが1分遅れるごとに約10%ずつ低下するといわれ、設置場所や使用方法の周知は命を守るために欠かせない。横須賀・三浦両市の現状はどうか。偶然、救命現場に居合わせた記者が調べた。
仕事の帰路、車を運転していると前方の路上に倒れている女性の姿が目に飛び込んできた。車を降り、女性へ呼び掛けるも応答はなく、どう対処すればよいのか頭が働かず一瞬立ち尽くした。緊急通報した直後、偶然通りかかった医療従事者が心肺蘇生を行い、女性は一命を取り留めたが、記者はAEDをなかなか発見できず、見つけたのは救急隊到着後だった。
そもそもAEDとは、心臓のけいれんなどで血流を流す機能を失った心臓に電気ショックを与え正常なリズムに戻す装置のことを指す。総務省消防庁が取りまとめた「令和6年版救急・救助の現況」によると、2023年に一般市民が居合わせた心原性心肺機能停止の傷病者に心肺蘇生が行われたのは1万6927人(14・8%)で、AEDが使用されたのは1407人(54・2%)だった(カッコ内は1カ月後の生存率)。AEDの使用による一時救命処置の必要性の高さが伺える結果で、横須賀市消防局救急課の伊藤哲也さんは「電気ショックの要否は機械が自動で判断してくれるため、失敗を恐れず使用をためらわないで」と呼び掛ける。
では、横須賀・三浦でAEDはどこに設置されているのか。一覧できるのが各市の「わが街ガイド」だ。同サイトでは設置場所、使用可能な時間、機器の提供のほか、迅速な応急手当が出来る職員が在籍している「よこすか・みうらAEDステーション」の検索などが可能。2月7日現在、両市では学校や行政センター、商業施設など計624の施設に設置されている。
またAEDや救急隊到着までに出来ることについて、伊藤さんは「路上などでは、まず自身の安全を確保した上で声を掛け、肩を叩くなどの刺激で反応の有無を確かめる。この時、目や指先だけの微かな動きは『反応なし』と捉えてすぐに119番通報を」と初期対応での心掛けを話す。
救命のプロが到着するまでの数分間は数十分にも感じるほど長く、いつ遭遇するとも限らない。まずはAED設置場所を漠然とでも頭に入れておくこと、救命講習への参加などから始めることが大切な人の命を救うことにもつながるかもしれない。