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理容室に通えない!不登校、ひきこもりが続く息子の散髪問題を解決したのは【訪問美容 体験談】

LITALICO発達ナビ

理容室に通えない!不登校、ひきこもりが続く息子の散髪問題を解決したのは【訪問美容 体験談】

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

難しくなってしまった外出と散髪

時はコロナ禍。息子が完全不登校となった頃でした。マスクをしていないと外出できないという毎日の中、息子は特性のためにマスクを着けるということができず、そのため、ただでさえ困難だった外出が一切不可能になりました。外出が不可能ということは、病院へも散髪へも全く行けないということです。

息子の髪は幼稚園の頃からずっと、商店街にある昔ながらの理容室で切ってもらっていました。予約を受け付けないスタイルで、思い立った時にサッと行ける、まさに「街の床屋さん」といった雰囲気のお店です。空いている時は問題ないのですが、時には1時間ほど待つこともあるそのお店での散髪は、人が多い場所が苦手になってしまった息子にとって待つことが難しく高いハードルとなりました。一度、予約ができないか聞いてみたこともあるのですが、こういったお店は予約制にしていないお店が多いのだそうです。

また、これは善意なのですが、店主のおじさんは息子にいつも学校の話を聞いてくれます。そして、ご自身のお子さんの話もしてくださいます。学校に現在行けていない息子はそれに「どう返答すればいいか分からないから怖い」、おじさんの子どもの話も「自分と違いすぎて聞くのがつらい」と言いました。その気持ちはすごくよく分かりました……。

ですので、息子が散髪に行きたい!行こう!というまで、待ち続けることにしてみました。

自宅へ来てくれる美容師さんを探して

その頃には入浴も難しくなっていたため、息子の髪はひどく絡まり、まるでライオンのたてがみのようでした。これまでクシを使ったことのない息子は、痛みや違和感からとかすことも許してくれません。このままではいけないと決意し、整体師さんが自宅に来て施術してくれるサービスがあるなら、美容室もないのか検索してみることにしました。そこで初めて「訪問美容」の存在を知ったのです。

当時私が調べた限りでは、訪問美容には大きな事業所がチェーン展開しているパターンと、個人でされているパターンの2種類がありました。大きな事業所だと担当者が都度変わる可能性があるので、個人で経営されている訪問美容師さんのホームページに記載されていた電話番号に連絡しました。

「精神疾患がある男の子でずっと髪を切れていなくて……」
「大丈夫ですよ!ご対応させていただきますよ!」

その明るく力強い言葉に、私はホッとしました。息子自身も髪をどうにかしたくてももうできる状態ではなくなっていたこと、お風呂に入ったとしても洗い流せないのでスッキリできないことがイライラの原因にもなっていたからです。

私は私で、息子が一人で髪を洗えないため手伝っていましたが、絡まった髪をほどくのは大変な作業でした。私が通っている美容室で、ほどき方を教わったりしてなんとかしようと努力を試みたのですが、全て徒労に終わり、そこからようやく解放されるのかもしれないという安堵の思いも大きかったです。

利用時に配慮して欲しいこと、居住地、金額案内など軽く打ち合わせ、さっそく予約をお願いしました。

訪問美容師さんは魔法使い!

当日、訪問美容師さんはトートバッグひとつで現れました。事前に用意を頼まれたのは椅子と少し広めのスペースだけ。到着するやいなや、大きなレジャーシートを広げ、その上からビニールシートを被せ、用意しておいた椅子をセット。折りたたみ式の鏡をパタパタッと勢いよく広げると、あっという間に散髪スペースの完成です。その手際の良さに、私と子どもたちはただただ驚くばかりでした。

「移動式のシャンプー台もあるので、かなり大きめのスペースが必要になりますけど、おうちでシャンプーさせていただくことも可能ですよ!」とのこと。準備段階ですでにもう訪問美容師さんは、魔法使いのようでした。

そして、いざ散髪タイム!心配していた息子ですが、美容師さんの朗らかな雰囲気と話術のおかげですんなりと椅子に座り、あっさりと散髪がスタート!「これは切り甲斐があるわぁ!任せといて!」という力強い言葉と共に、バシバシと切られていく髪を見つめながら、「すごい……すごい」という言葉しか出てきませんでした。あんなに悩まされていた髪の毛が、たった1時間でバッサリと。久々にフルオープンになった息子の顔は、伸ばし始めた当初よりスッキリとして大人っぽくなっていました。

「ありがとうございます!!!!」

親子で全力でお礼を言いました。

タイパとコスパを超える!訪問美容の素晴らしさ

しばらくぶりに短くなった髪に触れた息子は「……短いってええなぁ」と気に入った様子で鏡を眺めていました。鏡も写真も、自分の姿を見るのが嫌でずっと避けていた息子がです。

さて、気になるのが金額です。
息子の利用した訪問美容では
・カット代/出張費 5,000円
・駐車場代
のみでした。

街の床屋さんと比べると高額にはなりますが、「自宅に来てもらえる」「連れていくことの困難さ」を考えると、お願いして心からよかったと思っています。

また、シャワー台を使用せずとも自宅のお風呂で髪を洗ってくださったり、カラー剤を自分で用意しておけばカラーもやってくださるそうです(別途料金が必要です)。このあたりの詳細は利用したいと考えている訪問美容の方に直接問い合わせてみるのが一番確実だと思いますので、あくまで一例として聞いていただけたらと思います。

そして美容師さんは、最後にレジャーシートの上のビニールシートに集まった髪の毛を一斉にザザッと集めてゴミ袋にまとめ、携帯用クリーナーで床まで綺麗にして颯爽と帰っていきました。まさに「立つ鳥跡を濁さず」。そのプロフェッショナルな仕事ぶりは、完全に魔法使いでした。

もっと知られてほしい……訪問美容で広がる世界!

訪問美容を初めて利用させていただいて以来、今では3ヶ月に一度程度のペースでお願いしています。前髪が伸びてくると「そろそろ切りたい。美容師さんお願いしてや」と息子が自分から言ってくるほどです。

こうした訪問美容は、細かいオーダーはできないのかなと思いきや、全くそんなことはありません。美容師さんは「どうする?今日はソフトモヒカンとかいっとく?」などと、おしゃれな髪型を提案してくださります。支援を受けている立場では、わがままを言ってはいけないというような暗黙の了解を感じるなか、こうした選択肢を選ばせてくれるということが本当にうれしいです。

訪問美容師さん曰く「障害のある方の中には、美容院が苦手で、行きづらいという方もよくいらっしゃるんですよ。でもなかなか僕たちのサービスを知っていただけないというのが現状です」と仰っていました。一般的な美容室と同じように合う合わないはそれぞれにあると思いますが、新しい選択肢の一つとして、訪問美容の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆/花森はな

(監修:新美先生より)
訪問美容について、利用体験談を聞かせていただきありがとうございます。訪問美容のことは全然知らなかったのでとても勉強になりました。
美容院・理髪店に行くことは、発達障害のある方にとって大きいハードルになることが少なくありません。感覚過敏のため髪の毛を触られることが不快、じっと座っていることの苦手さ、待ち時間、人から見られることの不安、会話・コミュニケーションの大変さ、変化(髪型がかわること)が苦手などなど、嫌になってしまう要素がたくさんあります。刃物も使われるので、信頼関係がつくれないとより不安になりやすいものです。
そんな中で、外出の困難さや、コミュニケーション面などがネックになっている方にとっては、訪問美容を利用できると散髪のハードルが下がる方も多そうです。自宅なら自分のテリトリーでやってもらえるということや、美容師・理容師さん以外との接触がないという点が安心感につながりそうです。
お住まいの地域に利用できる訪問美容があるかについては、Web検索などで調べてみてください。私も個人的に住んでいる地域で検索してみたら意外と数か所あるということが分かりました。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年にようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケ公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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