バレーボールのレシーブを仮想空間で体験、JTのDX戦略
7月18日放送の「HENNGE presents BIZ-TECH Lounge」は、ゲストに日本たばこ産業株式会社 執行役員(IT担当)の下林央氏を迎えて、DXの取り組みについて詳しくお話いただいた。
文化放送アナウンサー・甲斐彩加(アシスタント)「まずは企業プロフィールをご紹介いたします。日本たばこ産業株式会社は、1985年に設立されました。通称JTとしても知られ、国内で唯一たばこ製造を手掛ける企業です。“たばこ事業”、“医薬事業”、“加工食品事業”を柱として、世界130以上の国と地域でビジネスを展開する、グローバル企業です。尚、医薬事業については、先日、塩野義製薬に譲渡する発表をしています。JTグループは“心の豊かさを、もっと。”というパーパスを軸に、変化の激しい顧客ニーズを捉えながら事業成長を続けています」
HENNGE株式会社代表取締役社長・小椋一宏氏(パーソナリティ)「今取り組んでいる仕事内容を教えてください」
日本たばこ産業株式会社 執行役員(IT担当)下林央氏「2023年2月にJTは“心の豊かさを、もっと”という、新しいグループパーパスを発表しています。これは複雑な社会環境の中、JTグループの進む方向性を示しているのですが、テクノロジーの面から実現しようということで、グループ全体のテクノロジー戦略というものを作っています。作成にあたっては、パーパス実現に向けた我々の理想の将来像に加えて、事業や各ファンクションの目指す姿について、テクノロジーやデータをどう活用していくのか?最終的な顧客であるカスタマーの心の豊かさにどうつながっていくのか?といった長期的な視点の問いから始めています。これを策定して、現在はその推進をメインに行っているというのが私の業務になります」
甲斐「DX推進のポイントは何ですか?」
下林「不確実性を楽しむ。チェンジこそ絶好のチャンスです」
小椋「すごくよい言葉だなって思いました。詳しく教えてください」
下林「地震などの自然災害やテクノロジーの急速な進化が毎日ニュースになってますよね。そういう意味では、将来を予測するとのが非常に困難な時代です。しかし、こういった変化というのは、決してネガティブなものだけではなく、技術の進展など、我々にとってポジティブな変化も多く発生していると思っています。ですので、こういった機会を前向きに捉えていくべきだというふうに日々考えています。」
甲斐「以前はアナログの部分っていうのは多かったのですか?」
下林「当社の成り立ちからなんとなくJTって進んでないんじゃないかなというイメージを持たれる方も、一部いらっしゃるんじゃないかなと思っています。例えば私のような執行役員の経営層は会議が多いというふうに思われる方が多いんじゃないかと思われます。しかし、実はJTでは権限委譲とデジタル化が進んでいますので、経営陣が一堂に会して出席するという会議はあまり多くありません。例えば、昨年の10月に米国のたばこ大手のベクター・グループの案件も、会社を買収しているんですけれども、経営会議ではなく、電子決済システムで審議して取締役会で決議するといった形で意思決定をしています。私自身、JTに入って、社内での承認行為に対しては紙に押印するといったことはやったことがありません。電子決済システムを使うことで、次の会議まで承認を待たなくても良いですし、出社もしなくても良い。そういうことで、意思決定のスピードが上がっているんじゃないかな、と思っています」
甲斐「業務効率化の点では、どのような取り組みをしていますか?」
下林「現在は、我々IT部門だけではなく、業務部門もノーコード・ローコードといわれるようなツールを使って、業務改善をしています。また生成AIを用いて効率化を考えていくという仕組みを整えています。これらのツールの活用を通じて、会社全体で業務効率化を進めています。特に生成AIと最新技術をいかに取り入れていくかも、業務改善の面では重要なことです。新たな技術を躊躇することなく取り入れられるように、情報の提供や教育を含めて取り組んでいます」
甲斐「顧客体験向上のために、何かされていることはありますか?」
下林「新たな技術の導入は積極的に行っています。例えば、昨年は空間コンピューティングといわれるものを使った、新たな喫煙体験のコンテンツを作成しました。これは仮想空間の中に自らを没入させながら、喫煙を楽しむといったようなコンテンツとなっております。またJTはバレーボールチームを持っているんですけれども、そのお客様向けにバレーボールの選手の実際のアタックをレシーブするという体験コンテンツも作成したりして、さまざまなお客様に価値を届けられるように企画をしております」
甲斐「面白いですね」
小椋「あらゆる体験を提供しようとしているんですね」