今がいちばん格好いいアーティスト!HYDEの魅力は L'Arc〜en〜Ciel だけじゃない
10本以上のフェスに参戦、世界中のファンを熱狂させたHYDE
HYDEの長いキャリアにおいて、2024年はかつてないほどアクティブな1年となった。
4月の『ARABAKI ROCK FEST. 24』を皮切りに、年末の『第8回 ももいろ歌合戦〜愛の大晦日〜』まで、実に10本以上のフェスに出演。5年ぶりのオリジナルアルバム『HYDE[INSIDE]』を引っ提げた全国ツアーに加え、アジアとアメリカを巡るワールドツアーでも世界中のファンを熱狂させた。また、MY FIRST STORYとのコラボレーション曲「夢幻」がストリーミング累計1億再生回数の大台を突破し、若者世代への浸透も果たしている。
これに加えて、ローカル局を含めたテレビ番組のインタビュー出演等々、レジェンドの域に片足どころか両足を突っ込んだHYDEが、今なお現役バリバリで活躍をみせてくれるのだ。いちファンである筆者としても、とにかく昨年は初めから終わりまでHYDEに満たされ続けた1年間だった。
全国15公演のアリーナツアーを開催したL'Arc〜en〜Ciel
L'Arc〜en〜Cielとしても、全国15公演のアリーナツアーを開催。9月にはバンドとして3年ぶりの新曲「YOU GOTTA RUN」を発表し、年末の音楽番組でのSnow Manメンバーとの交流は、双方のファンの間で大きな話題となった。
そして、2025年に入ってもその勢いは留まらない。去る1月18日、19日にはL'Arc〜en〜Cielが東京ドームでL'Arc〜en〜Ciel LIVE 2025『hyde BIRTHDAY CELEBRATION -hyde誕生祭-』を開催。2日間で計10万人の観客が集まり、カウントダウンに合わせて一斉に鳴らされたクラッカーの演出は圧巻だった。
笑顔と多幸感に包まれる光景をスタンド席の上段から見渡しながら、筆者はふと思ったーーいったい人々は、HYDEという存在の何にこれほどまで魅了されるのだろう? L'Arc〜en〜Cielのフロントマン、そしてソロアーティストとしても、年を重ねるごとに輝きを増すHYDEの魅力の本質は、いったいどこにあるのだろう?
HYDEという存在の神々しさ
HYDEを語るとき、まず思い浮かぶのは “カリスマ” という言葉だ。ラルクやHYDEのライブでは、観客が一様に恍惚の表情でステージを見つめている。あるライブでバラードが演奏されていた際、まるで祈りを捧げるかのように両手を合わせる女性ファンの姿を目にし、筆者はHYDEという存在の神々しさに触れた気がした。
歌っている姿、ギターを弾く姿。ステージ上での一挙手一投足、そのすべてが絵になり、観客の心を揺さぶる。まるでロックシンガーになるために生まれてきたような存在だ。
そして、変わらないビジュアルにも驚かされる。性別を超越し、どこか異世界の住人のような神秘性を纏った美しさは昔のまま。あの年齢で薄いピンクのヘアカラーが似合う人間が実在することに驚愕を禁じ得ない。不老不死の薬でも飲んだのかと本気で疑いたくなるほどだ。
極上音域まで到達し,その歌唱力の高さを堪能することができる「瞳の住人」
だが、HYDEの魅力をビジュアル面だけに求めるのは軽薄だろう。その真価はボーカリストとしてのパフォーマンスにこそ宿る。技術面で際立つのは音域の広さだ。とりわけ低音と高音と自由奔放な往来はHYDEの真骨頂だと言えよう。
例えば、1998年にミリオンセラーを記録したL'Arc〜en〜Cielのヒット曲「snow drop」では、Aメロで “mid1C#” まで音域が下がり、サビで一気に “hiA” まで跳躍する難易度の高いボーカルを聴かせる。2005年リリースのバラード作品「瞳の住人」はラストのサビで “hihiA" という極上音域まで到達し、その歌唱力の高さを堪能することができる。
また、HYDE自身が “自分にとって基本になる人” と公言する1980年代の伝説のバンド、DEAD ENDのボーカルMORRIE。彼を参考にして作り上げた特徴的な歌いまわしは、いわば “HYDEモデル” と呼んでも差し支えないほど、その後のロックシーンに大きな影響を与えた。
初期のL'Arc〜en〜Cielを彷彿させる耽美的な演出も健在
後進のアーティストたちから敬愛を集める存在となった今も、HYDEは立ち止まることなく挑戦を続ける。最新作『HYDE[INSIDE]』では地を這うようなデスボイスを取り入れ、上半身に施したタトゥーを前面に押し出したジャケットで攻撃的なハードコアの世界観を打ち出した。一方で『hyde誕生祭』での純白の衣装に真紅のバラの花束といった、初期のL'Arc〜en〜Cielを彷彿させる耽美的な演出も健在。ソロとバンドで異なる色彩を放つ多面性も、HYDEならではの魅力と言えるだろう。
かつてのヒット曲も、今のHYDEが歌うことで新たな解釈が生まれ、ライブを観るたびに楽曲のイメージがアップデートされてゆく。こんな体験ができるアーティストはなかなか他にいないだろう。メジャーデビューからかれこれ30年以上経つが、HYDEは間違いなく “今がいちばん格好いい” アーティストだと断言できる。それだけではない。今がいちばん “愛おしい” し、今がいちばん “尊い”。ああ、考えれば考えるほど筆者はつくづくHYDEが好きで好きでたまらないことに気付かされる。
先のライブ『hyde誕生祭』のMCでは、“生まれてきて良かったんだな、自分が皆のためになってるんだなと思えました。ラルクを好きになってくれて、生まれてきてくれてありがとう”と、まるで観客ひとりひとりに語りかけるように話していたけれど、その存在にいつも救われているのは我々ファンの方であって、どれだけ感謝してもしきれないほどだ。2025年も、そしてこれからもずっとHYDEに満たされた日々が続きますように。