山形県庄内地方では田植えが終わったら「にくもち」を食べる!? 餅好きにはたまらない“さなぶり”のごちそう
かつて農業が機械化されていなかった時代、田植えは親戚、ご近所さん、友人、知人……と総出で行うものでした。そして田植えが終わった後に、その祝いと手伝ってくれた人たちへのお礼として、ごちそうを振る舞う宴・さなぶりがありました。山形県最北の町であり、鳥海山の麓にある遊佐町(ゆざまち)で、さなぶりの時に食べられていたのが「にくもち」なのです。イラストを拡大して見てみてね~。
どんな料理?
餅、コンニャク、ネギ、ささがきゴボウ、豚肉、シメジ、厚揚げが入った醬油味のお汁です。餅に豚肉の旨味がなじみまくり。めちゃくちゃのびる餅が、下にもうひとつ入っています。
【餅】
遊佐町を含む、山形県の庄内地方は、北前船により京都の文化がいろいろ伝えられている土地なので、餅も丸餅なのです(東日本は基本的に四角餅が多い文化です)。
【厚揚げ】
ここでマメ知識! 庄内地方ではなぜか……“油揚げ”というと“厚揚げ”のことを指します。全国的に“油揚げ”と呼んでいるものは“うす揚げ”と呼ばれます。
みんな大好き! にくもち
私が遊佐町に行った時は、週一でつきたて餅入りのにくもちを出す、地元のおかあさんたちがされているお店があり、地元の人がオープンと同時に続々来店されていました。
「にぐもち(*)テイクアウトで3人前!! 今日の昼ごはんです」(地元民)
「ここに来るとつきたて餅のにぐもちが食べられるから」(地元民)
「とにかく餅が食べたくて来たんです」(地元のご夫妻)
「にぐもちの日はいつもすぐに売り切れるんですよ」(店のスタッフさん)
「にぐもちはお正月にも食べるよ。でもにぐもちはお雑煮ではないの。お雑煮はまた別にあるのよ」(地元のおばあちゃん)
イマイチ違いがわからない……。
*みなさん、話す時はに「ぐ」もちとおっしゃいます。
レトルトにくもち
レトルトが販売されるほど、遊佐町のソウルフードなにくもち。丸餅が2個入っているよ。
私が初めて食べたにくもちもこのレトルトです。
遊佐の餅カレンダー
JR遊佐駅併設の観光協会で発見したチラシに載っていた「遊佐の餅カレンダー」。本当に毎月毎月、何かと餅を食べる昔からの行事があるからビックリ!!
どんだけ餅が好きなんや!?(笑)
取材・文・イラスト・写真=松鳥むう
松鳥むう
イラストエッセイスト
離島・ゲストハウス・民俗行事・郷土ごはんを巡るコトがライフワーク。著書に『トカラ列島秘境さんぽ』『粕汁の本 はじめました』(ともに西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)などがある。